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第五十九話 コボルトで終わりじゃないのかよ

 ジールは原因が分かっているようだが俺にはどうしたのか全く意味が分からない。


「ねぇ本当に分からないの? あんたの魔法なんだよ」


「それはそうなんだけどさ、頼むよ」


「しょうがないな、いい、あんたは魔法の音を無くすようにしたみたいだけどそれが原因じゃないの、いつもと違うのはそれなんだから多分と言うか絶対にそうだよ」


「まさか……そうなのかな」


 ジールのその読みがあっているかどうかを確かめるには丘の下にいるコボルトに実験材料になってもらおう。


 早速試そうと下を見るが、まともに動いているのは騎士しかいなく、すでにコボルトを討伐してしまったようだ。


「よ~しお前ら上出来じゃないか、落ちている魔石を拾ったら直ぐにゴルゴダに向かうぞ」


「「「はいっ、有難うございます」」」


 ライルに向かって綺麗に敬礼した騎士達は馬上から槍を使って器用に魔石を拾い集め始めた。


(あれだと魔石に傷がつくんじゃないかな……俺にそんな事を言う資格はないよな)


「隊長~、川の向こうから何かがやってきます」


 下にいる兵士の一人が川向こうの空を指し、そっちに目を凝らすと大型の鳥のような物に何かが垂れ下がっているシルエットが見える。


「あれは何だ?……全員直ちに拾うのは止めて戻って来い」


 ライルが叫ぶと騎士達は一斉に丘を駆け上がって来る。全員が登り終えるとその物体はまだ距離はあるのだがそれが何なのか分かって来た。


 それは翼の生えた人型に赤い身体をした人型がぶら下がっている。速度がそれほど早くないのは下にいる者が重いからなのかも知れない。


「鳥の獣人族なのか」


「多分違うと思うよ……もしかして魔族かな、まさかね」


 ジールは確信は持てないようだが自分の出した答えで怖くなったのか声も身体も震えている。


 騎士達その物体に嫌な物を感じ取ったのか前を向きながら戦闘態勢を取り始めた。


「上の奴はハーピーだな、悪いが今度は本気で魔法を撃ってくれないか。あのままだとどうにもならん」


「隊長、下の奴はもしかしてオーガでしょうか、それだとこの人数ではどうすれば……」


「そんな事を口にするな、お前は副長だろ、いいかこのまま見送ったらどんなことが起こるか分からないのか」


 俺にとってはハーピーもオーガも本当の強さは知らないが、副長や騎士達の動揺した顔を見ると只事では無いのだと感じ取った。


「おいっ一番早い奴にこの事を王子に知らせるんだ。相手が10体ものオーガでは衛兵や冒険者では歯が立たん。あの六宝星に期待するしかない」


「直ぐに向かわせますが、我々はいかがいたしましょう」


「少しでも先に行かせないように食い止めるしかあるまい」


「了解しました。聞いたかオスロ、お前はこの事を衛兵に伝えるんだ。国の一大事だぞ」


「はっ」


 指名されたオスロは直ぐに走り去っていった。誰もオスロを見送ろうとはしないでまだ川向うの空の上にいる魔人を見つめている。


(援軍を呼ぶのか……今村さん達がいれば良かったのに)


「あのライルさん、ハーピーとオーガとは戦った事はあるんですか」


「部下の中で一部だけだな、レストル帝国に表敬訪問に行った時に巻き込まれた……いや違うなあれは皇帝の罠だな、その事は今はいいし、ハーピーはともかくオーガはかなり危険だ」


 帝国は魔国との緩衝国となっているのでもう二度と戦う事が無いと思っていたようだが、こんなに早く戦う日が来るとはライルにとっても予想外の事態になっている。


(いざとなったら【雷瞬】でジールだけを連れて逃げるしかないよな、騎馬隊が押され始めたら直ぐに逃げよう)


 頭の中でライルを含めた騎士達に謝りながら魔人を見ていると。段々とその姿がはっきりと見える距離まで近づいて来た。


 まずハーピーは人間の様にも見えるが、頭や背中に鳥のような羽が生えていてその手足にはしっかりとした鉤爪を持っている。衣服は着ていないが下半身は羽毛で包まれ上半身は女性の裸体姿となっていた。


(ちょっと顔は怖いけど、その恰好は……照れている場合じゃないよな)


 赤い身体のオーガは下は何かを履いているが上半身は剥き出しで筋肉の鎧に包まれている。そしてその頭には1本から3本の角が生えており、その手には鉄の様な棍棒を持っている。


(あれで角がなければドロフェイは混じっていても違和感はないな、もしかしてドロフェイはオーガとエルフのハーフなのか……そんな事を聞いたら殺されそうだな)


 魔人の強さを知らないせいもあるし、俺とジールだけなら何とか逃げる事が出来ると思っているので心にゆとりが生まれている。


「今度はいつも通りに魔法を撃ってやる」



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