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第五十八話 コボルト退治の始まり

 コボルトの群れは此方に近づいて来ているのは分かるが、近づくにつれてその速度が遅くなってきたように思える。


「あの、もしかして此処で待ち伏せしている事がバレているんじゃないですか」


「奴らは風上にいるんだから匂いでは気が付かんさ、なぁ嫌な予感はしているかも知れんな……そうだな、だったら君の魔法で教えてやってくれ」


「ちょっと距離がありますが良いんですか」


「構わんさ、この距離で逃がしたりするほどの部下達じゃないんだよ」


 それだったら俺の魔法何て必要は無いとは思うが、何となくライルには逆らわない方が良いと判断し、身を隠したまま杖を両手に持って適当な日本語を唱え始める。


「あぁ本当に面倒だな…………もうこの魔法は使う事が無いと思ったんだけどな、まぁ改良版だしいいだろう。さぁ雷撃だ」


 ちょっとだけ嫌だが日本語で詠唱の真似事をして無音の雷の球を空に浮かべてコボルトの群れの上に向かって行かせた。


 昼間なのでその明るさが目立たないと期待したが、直ぐに発見され何頭かのコボルトが上を見上げている。


「あれがワイバーンを落とした魔法なのか、あれからどうなるんだい」


「数が多いので別の魔法にしました。死ぬかかなり動きが鈍くなりますのでその後の事はお任せします」


「そうか、それなら魔法が発動したら直ぐに攻撃させよう」


 ライルは部下に向かって合図を出すと、コボルトから見えない場所まで下がった騎士達は一斉に乗馬し始める。


(ほとんどはこの魔法で死んでしまうんだろうな、手加減が出来ないから仕方が無いか)


 目視で一頭ずつ狙いを定め頭の中で印をつけるようにイメージしていく。ちゃんと印がイメージ出来ればそこに分裂した雷が落ちていく。


「ねぇちょっと話せるかな?」


 もう少しで全てのコボルトに目標を定める事が出来る時にジールが話し掛けて来た。


「今はちょっと無理かな、ちょっと待っててくれる…………行くぞっスパーク」


 音もなく雷の球が分裂し、小型の雷がコボルトに向かって落ちていく。


「あぁやっぱりそうなるね」


「えっ嘘だろ」


 あの距離で【雷撃】を躱す個体などいる訳が無いと思っていたし、もしかしたらイメージ不足で数体が狙いを外れるだろうと思っていたが、実際は半分以上のコボルトが【雷撃】を避け、まともに当たっても殆ど生き残っている。


(コボルトって強いじゃないか、えっだったら余裕など持たないで【雷爆】にすればよかった)


 俺は完全に魔法が失敗したと思っているのだが、そんな俺とは対照的にライルは勢いよく立ち上がり声を張り上げた。


「お前ら出番だぞ、全て倒してこい」


「「「うぉぉぉぉぉぉぉ」」」


 騎馬が茫然と立っている俺の横を駆け抜けて坂を下って行き、怒りの表情のコボルト達を切り裂いていく。


 俺の魔法で倒れている数少ないコボルトはその身体を騎馬が踏み、口から血を流して死んで逝った。


「何やっているんだ、隊列を乱すんじゃない。コボルト如きに反撃の隙を与えるな」


「シマノ~お前ぇは遅いんだよ、ちゃんと馬と息を合わせろ」


 ライルも副長であるレオニーも普段の様子とは違って大きな声で怒鳴りながら指示を出している。


 そして俺の見た目では全く危なげないままコボルトを蹂躙していった。


(やはり俺の魔法何て要らないじゃないか……それより、どうして俺はコボルトを弱いと思ったんだ。それにあの精度は一体何なんだよ、ワイバーンを討伐した事で浮かれていたのか、こんなんじゃいつか俺は死んでしまうぞ……それにみんなを助けるなんて思い上がりじゃないか)


 隣でライルとレオニーは相変わらず立って声を張り上げているが、それとは対照的に俺は両膝を地面についてもう戦いすら見たく無くて顔を下に向けている。


「ねぇ落ち込み過ぎじゃない」


「だってさ、いくら何でもあれは無いだろ、一頭も殺せないどころか半分も当たっていないんだぜ……詠唱の振りをしたのが良くなかったのかな」


「それは関係ないとおもうよ、だって別にあの言葉は意味無いんでしょ」


「そうだけどさ……」


 俺がこの世界でやっていけると本当に自信がついたのは魔法を覚えてからだ。


 それなのに変に慢心してしまったせいでこんなに使い物にならない魔法になってしまうなんて、これから先に進んでいいのか分からなくなってきた。


(一度おばば様に相談してから出直した方がいいのかな、じゃないと死ぬかも)


「あのさぁ、今使った魔法はいつもの魔法と全然違うじゃない、私が思うにそのせいでこうなっているのにどうしてそこまで落ち込むのかな」


「えっ、ジールは理由が分かるのかい」

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