第五十七話 コボルトを討伐しよう
馬を操作していない俺は選択肢など無く連れて行かれるのだが、そのまま進んで行くとライルが情報を整理して話してくれた。
その内容はコボルトの群れが此方に向かってやって来ているのを他の街の商人が偶然発見したそうだ。
本来だったら冒険者がその討伐をすればいいだけの話だが、商人がギルドよりも先に衛兵に知らせたのでその連絡がこっちに来たらしい。
(別に冒険者に任せれば良いじゃないか……もしかしてこの騎馬隊はワイバーンの討伐で出番が無かったからか)
「あの、わざわざ騎馬隊が行くほどの事なんですか」
「部下達はイレイガでは随分と我慢させたからな、まぁコボルトになってしまったが何もしないよりかはマシだろう」
「コボルトですよね、何だか可哀そうだな」
「可哀そうだと、何を言っているんだ」
この世界で実物のコボルトは見たことが無いけど、元の世界の記憶だと可愛い犬の様な魔物だと認識している。
◇◇◇
街道から外れて最短距離で平原を進んで行き、コボルトの群れが進んでくるだろうと思われる丘の上で偵察部隊が帰って来るのを待っている。
暫くすると偵察部隊が戻って来て、そこで見た事をライルに報告をし始めた。
コボルトの群れは思った以上に多く50匹ほどいて、今は川の向こうで休んでいるそうだが高確率でこの下を通過するのではないかという報告だった。
その報告を聞いたライルと副長は何故か楽しそうに会話をしている。
「50か、思ったよりも大きな群れじゃないか、いい訓練になるな」
「そうですね、これで怪我人が一人も出なければ合格と言ったところでしょう」
「君はどう思うんだい」
いきなりライルが俺に向けて話し掛けてきた。
「どうって言われても、実物を見たことが無いので何とも言えないですね」
「ワイバーンを相手するより楽だと思うぞ、遠慮なくやってくれて構わないからな」
待機しているこの場所に俺とジールがライルの側に置かれたので薄々は感ずいてはいたが、やはり俺の魔法が見たいのだろう。
話は聞いているはずなので下手に隠す事は出来ないし、かといって全力を出す訳にも行かない。
(あ~もう、面倒な事になりそうだな、この騎馬隊は六宝星の戦いを近くで見たんだよな、みんながどういった魔法を使ったのか知らないけど似ているとは思われたくないな)
引き攣ったような笑顔を浮かべていると、変わった鳥の様な鳴き声が何処からか聞こえて来た。
「おっ良い合図が来たな、どうやら相当運が良いぞ、奴らはこの下を通過しそうだってさ」
「そうなんですか、偶然にしては出来過ぎですね」
「そうだろ、俺は運は良いんだよ」
ライルは楽しそうに笑っているが、副長の方を見ると何やら言いたげな表情を浮かべているので多分ここで待機しているのは偶然では無いと思う。
いくら何でも騎馬兵団の隊長があてずっぽでこの場所を選んだのでは無いと信じたい。
「良いか、お前ら、ワイバーン程の強さはないがそれでも数がいるからな、一匹足りともこの先に進めるんじゃないぞ、あの悔しさをコボルトにぶつけるんだ」
「「「はいっ」」」
本来ならば率先してワイバーンを討伐するつもりでイレイガに来たのに、後からやって来た六宝星に活躍の場を奪われて良い気がしなかったのだろう。騎士達の士気がもの凄く高いのを感じる。
「あの、皆さんがこんなにやる気があるのなら俺の魔法は邪魔だと思うんですけど」
「まぁそうだな、始まってしまったら見ているだけでいいけど、きっかけを作ってくれないか。不意打ちをかましてやってくれ」
「密かに魔法を撃つのは苦手なんですよ」
「んっ、どういう事だ」
いきなり使ってしまって驚かれたりするのも嫌なので、かなり大きな音がする事と光を放ってしまう事を知らせた。
「珍しい魔法なんだな、まぁずっと隠れている訳じゃないからこの場所が見つかっても構わんよ、それに音に驚いて逃げるような魔物じゃないからな」
「そうですか、それでよければ」
(50か、何を使ったらいかな、あまり派手にしたくないんだよな)
「おっやって来たぞ、全員姿勢を低くするんだ」
徐々に姿が見えて来たコボルトは、俺のイメージだと小さな子犬のような魔物だと思っていたが、実際のコボルトは大型犬以上に大きく、目つきが鋭い凶悪な顔をしていた。
他の人に聞くとまたジールが怒るに違いないのでそっと尋ねてみた。
「あれがコボルトなのか」
「そうよ、どう見ても可愛げ何か無いでしょ」
「そうだよな」
あの姿なら心が痛む事はなさそうだ。




