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第五十六話 ようやくゴルゴダへ

(いやいや、凄ことになったよな)


 イレイガの街はただでさえまだ完全には元に戻っていないのに、ノア男爵による告発で国が動いたことにより更なる混乱が起こっている。


 騎馬兵団の隊長であるライルは不正を働いた貴族が戻って来た途端に牢屋に入れ、戻って来ない者は強制的に連行させた。


 ジールはノア男爵の側でこの状況を見る事になっているので必然的に俺もこの街に留まっている。


 やる事が無いのでこの五日間はギルドの中にある訓練施設を借りて魔法の練習で時間を潰していた。


「あ~見られてるな、そうやって脅かしたいんだろうな、雷槍」


「ふ~ん、それが君の魔法か、それにしてもその詠唱は古代語なのかな」


 ライルは驚かす為にそっと後ろに来て声を掛けて来たのだが、その事にはとっくに気がついていたので、わざと日本語で詠唱の振りをして魔法を出してみた。 


「えぇそうです古代語ですよ、まぁただ覚えているだけなので意味は全く分かりませんけど、それよりこんな場所に何か用があるんですか」


「君を探していたんだよ、我々はこれからゴルゴダに行かなくてはいけなくてな、確か君もそうじゃないかと思って声を掛けに来たんだ」


「そうしたいのはやまやま何ですけど、ジールとノア男爵の間で約束がありましてね、それが終わらないと動けないんです」


 別にライルの事が嫌いと言う訳では無いし、国王軍の中に味方がいた方が今後の為にいい方向に働くかもしれないのは分かっているが、それでもあまり関わりたくない。


「その事は男爵から聞いてるさ、だから私の手紙も添える事にしたから余程の事がない限りノア男爵は派閥替えが出来るだろうな」


「えっそうなんですか」


「それ位の力は持っているさ、私だって貴族なんだぜ」


(王家直属の騎馬兵団だって言うから貴族かもって疑っていたけど、それだから嫌なんだよな)



 ◇◇◇



「よ~し出発だ。さぁゴルゴダに向かうぞ」


「「「はいっ」」」


 王都から憲兵隊が到着し騎馬兵団は別の任務の為にゴルゴダに向かう事になったのだが、やはりそこに俺達が入っている。


 更には今までは移動の時はジールの後ろに乗っていたが、どういう訳かライルの後ろに乗らされてしまった。


(う~ん、なんだろこの状況は)


 ワイバーンの討伐状況はギルド長の指示で曖昧にしたはずだったが、あのギルド長はライルの追及にまけてしまい。全てを把握したのでこの俺に興味を持ったそうだ。


 ただし、この事を知っているのは騎馬兵団の中でも一部の者達しかいないらしく、殆どの騎士は俺に対して好奇の目を向けてくるのでどうしてもここは居心地が悪い。


「あの、気まずいんですけど」


「そんな事を気にするな、それよりファウンダーエルフの里の事を聞かせてくれよ、申し訳ないが調べさせて貰ったよ」


「えっあぁはい」


(個人情報もあったもんじゃないよな。この世界の倫理観は一体どうなってるんだよ)


 どうやって調べたのか見当もつかないしどこまで俺の事を知っているのか、出来ればジールと相談したかったが残念ながらそれもかなわず、本当だったらもう言わないはずの里の事を話してしまった。


 ただ記憶喪失の設定は曲げないし、魔法は無詠唱で簡略化した詠唱でしかもこの杖に秘密があると言う事にした。そうでもないとそう長くない時期に本当の正体が召喚者にバレる恐れがある。


 核心に触れないように話をしながら移動しているが、2日も過ぎるとまるで尋問を受けている様な錯覚すら覚えて来た。


(優しく話し掛けて来てるけど、似たような質問があるんだよな、まるで俺がボロを出すのを待っている様な……あ~逃げ出したい)


 かなり魔法に関しての質問が多かったが、今までならエルフから教わったとだけで誤魔化したが今回からはそれに杖のおかげだと言う事も付け加えてある。


 平井と話した中で魔石が魔法の力を引き出すと言っていたのでその事を参考にさせて貰った。なぜなら人間は無詠唱で魔法を発動する事が出来ず、それはかりそめである平井も同じだったからだ。


 翌日はこの国の話を聞かされて安心していた時に、国王軍だけが所持する通信魔道具によって指示を受けた若い騎士がライルの元に来て伝言を伝え始めた。


 話の内容は丸聞こえで俺の意見なども求められる訳もなく、直ぐに街道を離れコボルト討伐に向かう事になってしまった。


(ちゃんとジールもついて来てるな)


「あっすまんがいいよな」


 いかにも忘れていたという感じでライルが言ってきたが、その演技は下手すぎる。


「強制ですよね」


「そんな事言うなよ」


 討伐に参加するにしてもちゃんとライルの視線を気にしなくてはいけない。

 


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