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第五十一話 相互利益?

 ジールは考え込んでしまっているようなので今日はまともな宿の泊まる事にして、明日の出発まで別々に行動する事にした。


(顔にはあまりだしてなかったけど結構な話をしたからな、まぁ一人になって頭を整理して貰わないと……考えたくはないけどこの間に裏切られたら嫌だな)


 信用して思わず打ち明けてしまったが、やはり時期尚早だったかも知れない。もしジールが王家と深く繋がりを持ちたいと思うなら俺の事を密告する可能性がある。


(いや、そうでも無いかもな、なにせかりそめにもなれなかったはぐれ者だからな……そうなると隠す必要も無いのか……それは無理か、かりそめの勇者は普通の勇者に仕立てるつもりだろうからな……んっそうなると俺は厄介者か……)


 食事に行く気にもなれなくなり部屋で天井を眺めていると、珍しくドアをノックする音がした。


「ねぇちょっと入っていいかな」


「あぁどうぞ」


 鍵も無いこの部屋なのだしジールなのだから勝手に入って来ても問題はないが、神妙な顔をしたジールがこの部屋に入ってくる。


「あのさ、そう言えば言い忘れていたからさ……短い間のパーティでしかないのに秘密を教えてくれてありがとね」


「いや、いいんだ」


 そのまま部屋の中に入ってきたが、この狭い部屋の中には椅子などがある訳もないのでベッドにそのまま腰を下ろした。


 馬に乗っている時はもっと距離が近いが、それなのに今の方がちょっとドギマギしてしまう。


「あのさ、私は女だし跡継ぎになる弟がいるから本当は跡継ぎの資格は無いんだけどさ、弟の出来が悪くてね」


「うん」


「それでね、私は二年後には有力な貴族家に嫁に行って協力関係を築かないといけない事が決まっているから、せめて政治に巻き込まれる前のその短い時間を好きな事をしようと思って冒険者になったんだよ、嫁いでしまったら自由に行動する事が出来なくなるからね」


(ふ~ん)


 だから?という言葉が思わず口から出そうになるが、そんな事を言ってしまったら大変な事になるのは分かる。


(考えろ俺よ、ジールの求めている答えを言うんだ。これまでの事を考えて口にするんだぞ、多少の間違いは良いけど大外しはするんじゃない)


 あまり間が空くとそれはそれで失敗なので、先ずは答えまでの道筋を探るしかない。


「それでも良く冒険者にならせて貰えたな」


「そうね、だから盾役がいたしここまで自由に出来るのはオルガさん達のパーティにいると思っているからでしょうね」


 領主もまさかパーティが分裂してこの俺と二人だけになっているとは思っていないだろう。


「そうなるとこの状況を知られたら不味いかな」


「そうね、連れ戻されるかもしれないわね、だって領主の娘だとよからぬ人間にバレてしまったら誘拐されるかそれに近い事をされるでしょうね」


「そうだよな……」


 ようやく答えが見えて来たが、出来ればもっと素直に言って欲しかった。要するにジールも人に知られたくない秘密があるのだから相互保険と言いたいのだろう。


(その考えは少し間違っているな。もし……まぁいい、秘密は決して話さないと信用して欲しいんだろうな)


「これでお互いが秘密を握っているんだからね」


「あぁそうだね」


 これでジールが納得したのだからおかしな点にはつっこみを入れずに受け流した方が無難だ。


「それでさ【サムライ】もあんたと同じなの?」


「ほぼそうだろうな、【サムライ】は元の世界の言葉だからね」


「えっ違うよ、だって……」


 その言葉はこの世界では貴族だけが使う言葉で意味は【女好きの貴族】なのだそうだ。


 平民にはその隠語は知らないし、そもそもギルドには貴族がほぼほぼいないので誰もおかしな名だと思わなかった可能性が高い。


(そうなると話が違ってくるぞ……いや平気だな、短い期間でB級に上がれるような奴が貴族ならちゃんと家名を名乗るだろう)


 ◇◇◇



 翌朝になるとスッキリとした表情と共にゴルゴダを目指していく。ジールは色々と思う事があったともうが彼女なりに解決したのだと信じたい。


(ジールならもっと軽く受け流すと思ったんだけどな、これから元の世界に戻る迄どれぐらいの人間と出会うか分からないけど、秘密を打ち明けるのは止めた方が良さそうだ)


 今日は雲一つない空で身体に当たって来る風も青い香を運んで来るので気持ちがいい。


「なぁ、あそこはちょっとおかしくないか」


 山道の中を通過しているのだが、左側には崖となっていてその一部分が少しえぐれたようになっていた。

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