第四十八話 早すぎる再会
優しい人だと思っていた小川さんのその態度に驚かされたし、見送りの為に立っていた兵士がその子供を怒鳴りつけたのも俺にとってはショックだった。
「子供が可哀そうじゃないか」
「大きな声を出さないでよ、王子が近くにいるんだから仕方が無いでしょ」
助ける事も出来ず、ただその子の親と思われる男女がひたすら頭を下げているのを見ていると、いきなり肩を叩かれながら声を掛けられた。
「何でお前らはこんな所にいるんだよ、ちょっと遅くねぇか」
「何でドロフェイが此処にいるんだよ、王都に行ったんじゃないのか」
「ここじゃなんだな、ちょっと来い」
ジールも一緒に路地裏に連れて行かれるとドロフェイは此処にいる理由を話し始めた。
護衛として向かっている時に王子達とすれ違ったが、てっきり王子が黒幕だと睨んでいたのに第三王女を見ても何ら怪しい雰囲気はなかった。
それよりも王子のお供をしていた六宝星の存在が気になったそうだ。
「そこまで気にする程なの?」
「まぁちょっとな」
ドロフェイは言い難そうにしているので異世界人の可能性があると感じたのだろうが、ジールにはその事を言えないので言葉選びが難しそうだ。
「なぁ護衛を抜けて平気なのかよ、本当に王子が黒幕じゃないんだな」
「あぁ王女が言ってたんだけどな、あいつが黒幕だったら顔に出ていたはずなんだってよ、それになワイバーンのおかげか街道に兵士が見回りを強化しているから王都迄はもう安全だと判断したんだ。それで俺はこっちに来たって訳よ」
「それで六宝星の討伐の様子は見たのか?」
俺は王女よりも会社の人達が気になるし、ドロフェイもそうだと睨んだから話の流れはそっちに行くが、ジールはそれが不満のようだ。
「そんな事はどうでもいでしょ、それよりも他に黒幕がいるならそっちを突き止めないと駄目でしょ」
「あのなぁ俺は騎士でも何でもないし、お前だって今はそうだろ、依頼主が護衛は必要が無くなったと判断したんだからそれでいいんだ」
それに側近の一人が王都に向かって伝令を出したのでちゃんとした護衛が王女の為に向かうそうなので、冒険者であるドロフェイは依頼料さえもらえればそれでいい。
「それは分かるけどさ……」
「そんなに気になるなら家名を名乗って冒険者ではなく領主の娘として行動すればいいだろ。悪いがその考えなら話の邪魔になるから向こうに行け」
ドロフェイはうんざりした口調で強く言ったのでジールは少し可哀そうだが、俺がこの世界に来たのはこの国のせいなのだから王族がどうなろうともそんなには興味がない。
それにかなり事情が複雑そうなので、冒険者が出張ったところで意味など無いだろう。
ショックを受けているジールには申し訳ないが、軽く肩を叩いてからこの場にジールを残し更に奥に進んで行く。
「あのさ、六宝星は俺の仲間だったよ、ただこんな物を付けられてしまったようだね」
マジックバック中から預かったあの腕輪を手渡した。
「嫌なものを感じる腕輪だな、何でこんな物を付けちゃうのかね、不用心にもほどがあるぞ」
その嫌なものは今の俺ならよく見れば感じる事が出来るが、此処に来たばかりのだったら何も感じていないだろう。
「それはもう言っても仕方がないからさ、それよりもおばば様だったらこの秘密が分かるかな」
「そうだな、おばば様かクラウジーなら分かるかも知れないな……これを預かってもいいのなら里に持っていくが、どうする」
「預けるのもいいし俺が行っても良いよな、戻るには早いけどそれが理由にもなるしね」
「わざわざ理由なんて要らねぇんだぞ」
「そうだね……それで討伐はどうだった」
ドロフェイは気配を消しながら見学をしていたので詳しく話してくれたが、そもそも名前を知らないので頭の中で想像しながら当てはめていった。
戦い方は平井を中心に円を描き、詠唱による魔法の先制攻撃をしたがわざとなのか一匹だけを仕留めるに過ぎなかった。
もう一匹は光を身体に纏わせた男(多分今村主任)がワイバーンの高さまでジャンプしていとも簡単に細切れにしてしまった。
「まぁ確かに強いんだけどよ、何だかなって感じだな」
「どれぐらい強いと思う?」
「二人しか攻撃してぇから分からねぇが俺よりは攻撃力はあるだろうな、ただなあれが本気だとしたら負ける事はねぇな、お前なら余裕で勝てるんじゃないか」
勇者の素質を持つ彼等に勝てるかどうかなんて考える意味も無いが、それだけ力があるのなら召喚者の指示に従っていれば直ぐに殺される事は無いだろう。
それならばやはり一人でこの世界にいる【サムライ】を優先させようと思う。
「あのさ、里に持って行ってもらっていいかな」
「それはいいが、答えは自分で聞きに来いよ」
「あぁ、頼んだよ」
俺の考えは決まった。




