第四十七話 違和感
初めは会えて嬉しかったのだが話していると違和感がどんどん膨らんできてしまったので、そのような表情を見せないように昔のままの後輩の様に接した。
(滅茶苦茶おかしいじゃないか、そもそもこの人とは三年だけの付き合いだがこんな風な話し方をする人じゃなかったし、そもそも暗すぎて会話さえした記憶は少ししかない)
平井は俺の過去に興味が余りないのか幸いにも詳しくは聞いて来なかったのが、自分達の事は思いつくまま話始めた。
(分かりづらいな、もっと整理しながら話してくれよな、まぁあんな腕輪をしているから仕方がないのかな)
……やはり召喚したのはこの国の奴らなのか。
……腕輪のせいでそんな扱いになっているのか。
……それにしても、死に過ぎじゃないか。
……あぁ勇者として認められたのは今村主任とあんただけなのね。
……よくあの討伐を自慢できるよな、2匹だけじゃないか。
……俺達のは子供だと、大きさは同じようにしか見えなかったのにな。
……あんたは何で小川さんを春奈と呼び捨てにしたんだ。
……六宝星の筆頭があんただと、今村主任も勇者なんだろ。
平井の話を聞いて行くと様々な考えが頭の中をよぎって来る。
「……おいっどうした津崎、ちゃんと聞いているのか。しっかりしてくれよ。いいかこの腕輪の秘密が分かる迄はなるべく俺達に接触するなよ、お前迄捕まったら終わりなんだからな」
(ったくよ、こいつはこの世界に来て馬鹿になっちまったのか、それでも外野から使えるのはこいつしかいねぇんだ。仕方がねぇな)
「あの、そこは気を付けますけど、何かあった時にはどうやって連絡をすればいいのですか」
「そうだな……俺達は王宮で暮らしていて、そんなに自由は無いんだ。ただなこれからはこうやって外に出る機会が増えるだろうからその時に接触してくれ」
「はぁ……分かりました」
(計画も何もあったもんじゃ無いが、こればかりは仕方が無いか)
「津崎よ、上手くいったときはお礼をするからよ」
「そんな事は良いですよ、皆で一緒に元の世界に帰りましょう」
◇◇◇
平井は帰って行ったが、俺はまだこの場から動けないでいた。
(何だかおかしなことになってるな、出来れば今村主任に会いたかったな、それにこの腕輪か)
綺麗な装飾の入ったこの腕輪は俺の持っている腕輪とは違って命を奪う機能があるらしい。
(俺は運が良かったんだな、もっと素質があったのなら同じような目に合ったのか)
暫くその場所にいたが、頭の中が落ち着くとゆっくりとギルドに向かって歩き出す。すると向こうからジールが馬に乗ってやって来た。
「ちょっとどこ行ってたのよ、いきなり消える事ないじゃない」
「悪かったよ、ちょっと六宝星を見たくなってね」
「それでどうだったの」
「勿論、見える訳ないさ」
悪いとは思ったが本当の事は言える訳がない。
◇◇◇
翌朝になると完全に身体が回復し、ジールと共に大通りに向かうとそこにはまばらに人が集まっていた。
暫くして王子が乗っていると思われる馬車とそれを囲むように覆面姿の者達が並走しているが、一人だけ素顔を晒していたのは平井だった。
(どうして平井だけが素顔を見せているんだ? 本当にあれは今村さん達なのか?)
王子の馬車が目の前を通り過ぎようとしていた時に、隣にいた一人の冒険者が小さな声で吐き捨てるように言い出す。
「ったくよ、たかが二匹で随分と偉そうに帰還するんだな…………悪かったよ」
目も止まらぬ速さで一人の覆面を被った者がその男に剣を突きつけた。その後ろから飛んできた者もかなり殺気を放っている。
「この馬鹿には私から強く言っておくから剣を下げてくれないか」
偶然にも近くにいたギルド長が駆けつけて頭を下げながら懇願するが黒装束の者はそのまま剣を下げようとしない。
(平井と同じ格好しているって事は会社の人なんだよな、何でこんな真似をするんだ)
「戻って来い」
平井がこっちに向かって声を掛けると黒装束の者達は直ぐに馬に飛び乗ったのだが、その時にフードが外れ、剣を突きつけていたのは今村主任で遅れてやって来たのは小川さんだった。
(何て冷たい目をしてるんだ、二人とも一体どうしちゃったんだよ)
声を掛ける訳にはいかずただその後を追いかけていくと、俺は見てはいけない物を見てしまったような気がする。
それは子供が遊びに夢中で道に飛び出して小川さんの乗っている馬にぶつかってしまったのだが小川さんは一切視線を下げることなくそのまま行ってしまった。
(どうしたんだよ、子供が泣いているんだぞ)
どうしてこういう事になったのか俺には全く想像もつかないままだ。




