第四十五話 頑張れギルド長
報酬の事はあまり期待していなかったが、予想以上に討伐が出来たことに加え、俺の功績も認められたので一匹がギルドの修理代としてそしてもう一匹を俺だけにくれ、後の残りは冒険者達で山分けする事になった。
「これだとやけに俺が多いんだけどいいのかな」
「良いんじゃない、あんたの魔法が無ければ頭上を通過して行ったんだからね」
「そうか……そういえば残りの二匹はどうなったんだ」
「王子の部隊が討伐したみたいだよ、そう言えば何だか知らないけどギルド長は焦った顔で出て行ったね」
◇◇◇
王子が作戦本部として借りている宿の一室に緊張した面持ちの兵士が入って来た。この部屋の中には王子とかりそめの勇者である平井の二人しかいない。
「失礼します。この街のギルド長であるキンポウがやって参りました。お通しして宜しいでしょうか」
「はぁたかがギルド長が何の用で来たんだ」
「それがワイバーンの事の事だそうです」
「はぁワイバーンだと、そういやまだいるんだよな」
城壁の近くにいた見張りの兵士は冒険者達が討伐した事を知っているがあ、王子達の場所からは逆行でもあった為にただワイバーンが逃げて行ったようにしか見えていなかった。
「いえ、他のワイバーンはギルドが全て討伐致しましたのでその報告だと思います」
「何だと~あれは逃げただけじゃないのか」
「いえ、街に入る前に討伐されました」
(ちゃんと見てろよなこの馬鹿王子が、魔法による攻撃があったに決まっているじゃねぇか、あ~こんな馬鹿でも王になるのだから羨ましいよな)
「冒険者共が余計な真似をしやがって、おいっ早く連れて来い」
「王子、冷静に対処して下さい。ギルドと揉めるのは得策ではありません」
「分かっとるわ、黙れっ」
折角気分が良かったのだがこんな簡単にそれを崩され怒りで顔が歪んで仕舞ったので、自ら顔を両手で何度も叩き、いつものような作り笑いを浮かべてギルド長を待ち構えた。
(おいおい馬鹿王子よ、そんな張り付いた笑顔じゃ余計怖いだろうが、あ~あ、何で俺はこんな奴に使われなくちゃいけねぇんだ。いっその事殺してやりてぇな、まぁこの腕輪をどうにかしない限り無理なんだけどよ)
平井は煩わしい腕輪を摩りながら一切表情を変えずにただ立っている。
秘薬のせいで自我を失った会社の連中をわざわざ声に出さなくても操れるようになった頃、自我が戻った振りをさせて騎士団長であるアズールを襲わせたところ、簡単にアズールを殺す事には成功したが数分後そいつの命は消えてしまった。
(どうやったら腕輪の影響を受けずに殺す事が出来るのかもっと実験したいが、駒の数が限られているからこれ以上減らす訳にはいかないな、どうやってこの腕輪の秘密を掴んだらいいのか)
◇◇◇
流れ落ちる汗を必死にハンカチで抑えながらギルド長がおずおずと部屋の中に入って来た。
「どうしたんだギルド長よ、そんなに緊張しなくていいではないか、それになワイバーンを討伐したんだろ、ご苦労だったな」
王子は嫌見に聞こえないように言葉を選びながらゆっくりと話したのだが、そのせいで言葉に抑揚がないのでそれがギルド長を余計に緊張させている。
「お言葉ですが私達が討伐したワイバーンは子供のようでして、王子様達が倒したのはその親では無いかと推測されます」
「そうなのか、ただな、そんな事をいうと討伐した冒険者達が可哀そうでは無いのか」
「いえ、それが事実ですので過分な名誉は要りません。それにお借りしたバリスタのおかげでもありますので本当に有難うございました。それにしてもバリスタを使わず、私達が討伐したワイバーンより遥かに強いのにそれを討伐されるとは六宝星とは素晴らしい部隊でありますな」
「そうか、そうか、此処にいるこいつが筆頭ではあるが良くやってくれたよ」
「あぁこの方がそうでございますか、私どもの冒険者とはまるで風格が違いますな、私達で言うところのS級を遥かに超えるお方に見えます」
あからさまなおべんちゃらに平井は心の中では呆れていたが、王子は本気で気分が良くなっている。
そのせいで討伐数の事などどうでも良くなっていた。
「そうだっ我々が討伐したワイバーンの死体をこの街に寄付するから高く買い取ってくれ、その資金はこの街の復興に当ててくれよ」
「有難うございます。領主様は避難されて今はいないのですがその心使いに感謝されるでしょう。流石に次期国王様は発想が違いますな」
「まだ父上は存命なのだからそんな事は言うな、それよりも領主が避難するとは処分を考えなくてはいかんな」
「私には政治の事は分かりかねます」
「そうだな、まぁよい。下がっていいぞ」
高笑いをする王子を見ながら心の底から呆れる平井であった。




