第四十三話 討伐開始
誰もが黙ったまま立ち上がり自分の持っている武器をしっかりと握りしめた。目線の先の山からは群れを成した鳥たちが一斉に飛んで行くのが見える。
「そろそろ来そうだな、準備は良いか」
弓使いであるリーナとミリアムはバリスタを何時でも撃てるように引き金にその手を掛けているし、俺も何時でも撃てるようにその場所から少し離れて杖を握っている。
「おいっお前は魔法陣は使わないのか、それだったら姿が見えたら直ぐに詠唱を始めて置けよ」
「魔法陣って何? どうやって書くの?」
「何を言ってるんだ? さっきの魔法は魔法陣を使ったんじゃないのか?」
「もうあんたは話さなくていいから、ほらっ行くよ」
出来ればもう少しヘンリクと話がしたかったが、ジールに腕を引っ張られてどんどん離れた方に連れて行かれた。
「もしかして不味かったかな」
「当たり前でしょ、説明するのが嫌なら馬鹿な質問はしないでよ」
引きずられた場所はヘンリク達よりも10mほど右側に居て、ちょうどバリスタと反対側にいる。
バリスタと俺の目標は当たらなくても良いから高度を下げ地上に近づけるのが役目となっている。
すると山から生暖かい風が吹き、空にワイバーンの黒い影が浮かび上がった。
「何なのよ話が違うじゃない、8匹もいるよ」
「そうだけどさ、二匹でも倒せればダダ働きしなくてもいいんじゃないか」
「お~い、射程に入ったら撃っていいからな、兎に角奴らを怒らせろ、分かったな」
「「はいっ」」
リーナ達の揃った声が聞こえて来たが、俺は返事をしないで詠唱をしている振りをしている。
(竜種に対してどこまで通するかな……さぁどうなるか楽しみだ)
ワイバーンはかなり高い高度のままゆっくりとその姿を見せ始めた。
「あの高さだと無理だよ」
リーナの甲高い声が聞こえてくるが、もしオルガだったら魔法の効果を付属して矢を当てられるのに彼女達にはそれが出来ないようだ。
「弓使いなら魔法を覚えればいいのにな」
「あのねぇエルフを基準にして考えちゃ駄目だよ、魔法なんて使えなくて当たり前なんだから」
「はいはい、それじゃいきますか雷銃」
杖の先に出現させた雷の弾を群れの中央に向けて発射させていく。破裂音とともに光を放ちながらジグザグに飛んでいった。
ただ群れの中央に迫った瞬間にワイバーンは左右に二つの群れへと分かれ、放物線を描く様に【雷銃】を躱していく。
「駄目っおっ」
避けられてしまったかと思ったが、最後尾を飛んでいたワイバーンは回避行動が少し遅れ羽の中央を突き破る事が出来た。
その一匹はバランスを崩しきりもみ回転しながら落ちてくる。何とか体制を戻そうと藻掻いている時に、バリスタの矢がその身体に突き刺さった。
「おっやるっじゃないか」
「あれはもういいから、また来るよ」
ジールが指を差した方向には二つに分かれたワイバーン達が再び集結し、今度は俺の方に向かって急角度降下し迫って来ている。
「もしかして狙われている?」
「怒らせたんでしょうね、どうするのあれだと躱されるでしょ」
「そうでもないんだよな……これでどうだっ」
距離にしてまだ200mは離れているが群れの中央に向けて雷の弾を放つ、先程と同じと判断したワイバーンは大袈裟な回避行動をするのではなく、身体をひねってやり過ごそうとしている。
「甘いんだよな……爆っ」
群れの間を抜けようとしていた弾がその場で破裂する。
「どれぐらい……雷銃、雷銃」
もしかしたらかなりの数を落とせるかもと思ったがそんな上手くはいかず、二匹のワイバーンは高度を上げそのまま街に向かい、中心部にいた3匹だけが地上に落ちてくる。
そしてをまだ空を飛んでいる残りの二匹の内の一匹は無傷では無かったせいか次の【雷銃】を躱す事は出来ずにその身体を貫かれた。
地上に落ちて来たワイバーンは、ヘンリク達が次々とその身体にアックスやら剣やらを刺しまくりあっという間に殺していった。
「何だよあの動きは、やはりB級だけあるんだな」
「そうね、ただあんたの隣にいるこの私は何もしていないけどね」
「まぁ完全に出遅れているよな」
この討伐に参加しているのはB級冒険者だけなので傷付いているワイバーンを殺す事など造作もない事らしい。
ワイバーンは苦し紛れに火球を何度も撃っているが、それで怪我をする者は一人もいなかった。
「あのさぁこの上にA級やS級がいるんだろ」
「その遥か上には勇者もいるけど、どうしたの」
(俺はこの魔法で無双状態になるかもと思ったけど、まだまだかもな)
今週はこれが最後になります。
もうストックが無いので来週は二回ではなく、一日一回投稿が出来るようにしたいです。




