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その四 誤算

「法王よ、一体どうなっとるんじゃ、一人を除いて他の奴らは訓練に身が入っていないとアズールから報告があったぞ」


「申し訳ございません国王様、文献にあった異世界人とはどうも考え方が違うようでして……」


「何だと、あ奴らは駒として使えんのか」


「そうではありません。あの中で素質が低い者でもアズールに匹敵する力を持つ事は可能でしょう」


「騎士団長であるアズールと同じになるか……ええい、だとしてももう我慢出来ん。とっとと傀儡にしてしまえ」


「お言葉ですが傀儡に変えてしまいますと本来の力の全ては引き出せなくなります。出来れば腕輪の意味を教えて従わせた方がよろしいかと」


「あのなぁ、そもそもあの腕輪を考案したのはかりそめの勇者だろ、何があるか分からんから止めておけ、いいから早く傀儡にしろ」



 ◇◇◇



 今村達はこの世界の兵士が自分の身体より何倍も大きい魔獣を簡単に倒したのを見てこの世界の現実を知ってしまった。



「皆さんどうしたのです。基礎訓練をしなければその次の行程に進めないのですが」


 訓練の責任者である騎士団長のアズールは優しく声を掛けるが、それに対する反応は薄い。


 すると、イライラした様子の今村がアズールの元に走っていく。


「あのさ、先日あんなものを見せられたばかりなんだぜ、俺達の世界ではあんな化け物はいないんだよ、それにさ、本当に俺達が魔王とやらを倒したら元の世界に戻れる保証はあるのかよ」


(あ~あ、珍しく主任が吠えてるな、あんたは勇者の素質があると言われたのにそんなんでどうするんだよ、それによ、だらだらやっている割には力が付いてきた事に気が付かないのかね)


 平井は自分に力が向上している事を感じながら一人だけ真剣に訓練をしている。この世界で自由に生きるために誰よりも強くなりたいからだ。


「明確な保証はありませんが信じて訓練をして下さい、そうすれば……」


「こらこらアズールよ、勇者様達は困惑しているだけなんじゃ、もう一度ちゃんと説明をしようじゃないか、ほれっ休憩の準備をなさい」


 この場に侍女と共に現れた法王はアズールを諫めながら侍女に指示を出し、この場でお茶とお菓子を配り始めた。


(何だこのお茶は、やけに甘い香りがするな)


「どうかしましたか平井様、あぁそのお茶には回復薬を入れてありますのでちょっと甘いのですよ」


「そうですか、頂きます」



 ◇◇◇



(えっ何で俺は剣を握ってるんだ)


「おい、もっと腰を入れろってんだよ、こんな事も出来ねぇ奴があっという間に俺達より強くなるなんてやってられねぇよな」


 アズールの態度が変わり、他の兵士達も蹴ったり叩いたりしながら指導しているが誰もが無表情のまま言われた通りに動いている。


「おめぇは勇者なんだろ、もっとやるんだよ」


 若い兵士が今村の背中を蹴飛ばし、そのまま倒れると無表情だった今村に表情が浮かんできた。


「……何でこんな事をするんだ。お前らの声は薄っすらと聞こえていたぞ、俺達に……がっ」


 立ち上がりうとした今村に対しアズールの容赦ない蹴りが後頭部に入り、今村は意識を失った。


「こいつはやはり只者じゃねぇな、おいっもっと濃くしてもう一度飲ませるんだ」


「団長、それだと死んでしまいますよ」


「知らねぇよ、こいつらは普通じゃねぇんだから平気だろうよ、それにな死んだら死んだで良いじゃねぇか理由なんぞどうとでもならぁな」


「そうですね、どうせこいつらはかりそめですからね」


(おいおいおい、これがこいつらの本性かよ、ちょっと待ってくれよ、俺の身体よ、俺の思い通りに頼むから動いてくれ)


 兵士達は小瓶の液体を意識の無い今村に無理やり飲ませ、他の連中は渡されたら何の抵抗もすることなく自ら飲み始めた。


 そしてその小瓶は平井の手に渡され、もう少しで口に付けると言う時になってようやく身体の呪縛を退ける事が出来た。


「ちょっと待っくれ、俺はこいつらと違って素直に訓練していたじゃないか、これからも指示に従うからそれは止めてくれよ」


「そうか、お前も勇者の素質があるんだよな……かりそめとは言え恐ろしい男だな、ちゃんと俺の指示に従うんだぞ」


「はいっ」


(くっそ~強硬手段に出やがったか、それにもしかしたらこの腕輪は只の翻訳の為の魔道具じゃ無い可能性があるな、じゃないと俺にあれを飲ませない理由が無い)



 ◇◇◇



 平井は法王と交渉し、その秘薬を飲まなくてもいい事になったが、それで余計に腕輪には何か秘密があると確信してしまったので決して反抗的な態度はとらないように心掛けた。


 秘薬のせいで飲まされた者は自分の意思で身体を動かす事は出来なくなり、心の中ではたまに泣き叫んでいるがその感情も暫くすると消え、完全な傀儡へと変わっていく。


 その連中は魔力を込めた指示を出さないと上手く操れないが、一年を過ぎるとこの世界の中で平井が一番上手に操る事が出来た。


 そしてこの頃になると此処には平井を含めたったの9人しか残っていない。


(クソっようやく分かったが、この腕輪は俺を殺す為じゃねぇか……少し秘密があるようだが下手な行動はできねぇな、いつかこの腕輪をどうにかしてこの国を俺の物にしてやる) 



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