第四十話 討伐隊結成?
俺の前にいるジールの背中からは不満を持っているオーラが伝わってくるが、何で討伐をしたくなったのか理解が出来ない。
暫くして陽が落ち始めるとイレイガの街が見えて来たが、街と言う割には城壁は簡単に乗り越えられそうな低い壁なので街と村の間のような感じに思える。
「街には入らないんだよね」
「そのつもりだったけど、街道に人が多すぎて余計に時間が掛かるな」
「そりゃそうでしょ夜になればワイバーンは来ないからね、今がチャンスなんじゃない」
「移動は諦めた方がいいかもな、仕方が無いから中で休むか」
「宿屋がやってるとは思わないけどね」
「広場で良いんじゃないか、それにしても何だかな」
まさかこんなに混乱状態になっているとは想像外で、まるで今日になって住民が一斉に逃げ出したように思える。
中に入ると最初は普通の街並にしか見えなかったが、奥に進むにつれ建物は倒壊しているし、怪我人もあちこちに倒れていた。
「酷いな」
「お~い、誰か手伝ってくれ、この中から声が聞こえるんだ」
倒壊した建物の前で一人の衛兵が倒れた柱を持ち上げようとしながら叫んでした。
「ジール」
「うん」
◇◇◇
救助活動を手伝っているうちにいつの間にか空が明るくなっていた。俺もジールもただひたすら救助活動をしていて衛兵からパンを手渡されるまで腹が減っている事にも気が付かなかった。
「あの人たちも逃げないで手伝ってくれたらもっと助けられたかもしれないのに」
「仕方がないさ、そもそも今日になって襲ってくるまでほとんどの住民は普通に暮らしていたそうだぜ、来ないと思っていたのにこの状態になったからな、余程怖かったんだろ」
「あの騎馬隊は役に立っていないじゃない、何やってんのよ」
「ワイバーンが襲撃したのは朝だそうだからな、間に合わなかったんだろ」
俺とジールが木陰で休んでいると一人の男が何かを叫びながら歩いている。耳を澄まして聞くとワイバーンの討伐に参加を求めている声だった。
その声を聞いた近くに座っていた男は疲れた体を持ち上げてゆっくりと歩きだしていく。
「俺もちょっと行ってくるよ」
「えっ討伐はしないって言っていたのにどうしたの」
「こんなのを見ちゃったからな」
この世界には優れた回復薬があっても全ての人に使える訳では無いし、倒壊した建物の中には大人の死体も子供の死体もあった。
何人かはおばば様の回復薬で助ける事が出来た人はいたが、それの何倍以上も助けられなかった人達がいた。
「疲れている様だけど魔力は大丈夫なの」
「問題ないよ」
魔法を覚えたての頃は何度か魔力切れを経験したが、慣れてくるそれが起こった事は一度の無い。確かに自分の限界は知らないが今は気にしていられない。
◇◇◇
集められた場所はやはりギルドで、この周りの建物は何かしらが壊れているのだが、ギルドだけは何故か無傷だった。
救助活動に参加していた人はかなりの数がいたので、ここに来る人も結構いるのだろうと思っていたが案内された部屋の中には三十人に満たない数しかいない。
「あれっこれだけか、他の冒険者はどうしたんだろ」
「別に良いんじゃない、これだけいれば何とかなるでしょ」
ジールのその声は決して大きくは無かったのに、その言葉が聞こえてしまった顔がすす汚れている男がいきなり怒鳴って来た。
「楽に考えてんじゃねぇよ、お前は街の惨状をみて分かんねぇのか、いいか奴らは一匹じゃねぇんだそ、簡単に終わる話じゃねぇんだよ」
「落ち着けベルン、この娘はずっと救助活動をしていたじゃねぇか、身体の汚れを見れば分かるだろどうしてああななったのか分からないまま手伝ってくれたんだろ、それぐらい分かってやれ」
「あぁそうだな、すまんなお嬢ちゃん、ちょっと色々見ちまったんで気が立っていたようだ、許してくれ」
「いえ、適当な事をいってごめんなさい。私達は暗くなりかけた時にこの街に着いたので状況をあまり把握してないんだ」
「そうかい、実はな……」
B級冒険者であり盾師のヘンリクはワイバーンが襲撃してきた事とそれによって巻き起こった人災による被害も含めて知っている限り話してくれた。
「そんな、五匹もいるなんて」
(それよりも火を吐くだと、それだとドラゴンじゃないのか? 俺のイメージしてるワイバーンとはちょっと違うな)
ジールとは別の意味でヘンリクの話を聞いて驚いていると、扉がよく扉を抜けて来られたなと思ってしまう程に肥えた中年の男が入って来た。
「良く此処に集まってくれたな、これから班分けをしたいから階級ごとに分かれてくれ」
俺達以外にはC級が3分の2でその他がB級だった。
残念な事にE級はおろかD級の冒険者も此処には一人もいなかった。
(もしかして俺達は場違いなのかな)




