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第三十九話 ある街の中で

 嵐のように去って行ってしまった騎馬隊の影を見ながら俺とジールは呆気にとられてしまった。


「即断で殺したな、もしこいつらが情報を知っていたらとか考えないのかな」


「もしかしたら何かをもう知っているんじゃない」


「そうだと良いけど、それにしてもちょっとな」


 こいつら以外の盗賊は俺が殺したというのに何故か目の前で転がっている盗賊達に対して少しだけ哀れに思ってしまう。


「盗賊はゴブリンと同じ扱いを受ける事は常識でしょ、それなのにその道を選んだこいつらが悪いのよ、それに王女を攫うにしては強引すぎるしね、こんな連中にまとまりがあるとは思えないからあぁなったのかも知れないけど」


「まぁもう俺達には関係ないな、只の冒険者らしくゴルゴダに向かうか」


「えっこの先にワイバーンがいるって言っていたじゃない。それなのに先に進むつもり?」


「当たり前だろ、それにこの先の村や街の人達の全てが逃げ出したのなら行かないけどそうじゃないみたいだしな、注意しながら進めばいいんだよ」


「注意したところでどうなるのよ」


 気乗りしないジールを説得して先に進んで行くと、街道ではすれ違うように何台もの馬車とすれ違っている。


「ほらっ、ワイバーンは昼間行動するって言うのに逃げ出している人ばかりじゃない。全て商人や冒険者なんて思ってないでしょうね」


「別にさ、行きたくないなら俺は歩いて行くからいいよ、ジールはさぁ冒険者なんだろ、それに全員が逃げ出しているとは思わない方が良いんじゃないか」


「全員に決まっているでしょ、ワイバーンが襲ってくるんだよ、あいつらは一度エサ場と認定したら中々離れないんだからね」


 俺はそのワイバーンがどの程度の強さなのか知らないが、イレイガの街の全ての人が逃げたした訳では無いと言う事を確信している。


 この世界の全てを知っている訳では無いが、少なくともこの国の人達は貧富の差がかなり激しい。


 そもそも命を懸けた冒険者ですらその日を生きていくのがやっとな連中が辞めることなく冒険者をしている。


「それでも逃げれない人はいるんだよ、ジールはさ、貴族でもあるし領主の娘として恵まれているから分からないんだと思うな」


「何それ、私を馬鹿にしてるの?」


「そうじゃないけど、今は冒険者をしているんだからその事は知っていた方が良いんだよ」


 不貞腐れてしまったのかジールは無言のまま馬を操作し、少し進むと門番のいない村を見つけた。


「ほらっこの村には誰もいないじゃない」


「そう思うなら中に入りなよ」


 村の入ると直ぐにこの村から逃げ出す人達とすれ違ったが、奥の方に行くと普通に農作業をしている人達を発見した。


「えっ何してんのよ、イレイガに近いんだからこの村も安全じゃないんだよ、注意した方が良いかしら」


 ジールは興奮しているせいで声がいつもより大きかったのでその声は働いている男に聞こえてしまったようだ。


「姉ちゃんよ、余計なこと言う前に逃げれば良いじゃねぇか。俺達みてぇな奴が畑を放棄したらどうやって暮らせって言うんだよ」


「すみません、彼女は悪気は無いんですが世間知らずなんです。それよりワイバーンの姿は見かけましたか」


「いや、見てねぇな、イレイガの家畜を食い尽くしたらまた何処かに飛んで行くんじゃねぇか、その前に討伐されるかこっちに来ない事を祈るだけさ」


「少し前に騎馬隊がイレイガに向かって行ったので早く討伐されたら良いですね」


「そうだといいがな」


 ジールの肩をそっと叩くと村人に頭を下げたジールは無言のままゆっくりと出口に向かって行く。


 ジールにとっては思いもよらなかった事だったのだろう。


「命よりも生活が大事だななんて、死んだら終わりじゃない」


「死にたい訳ないだろ、生きていくためには作物を育てなきゃいけないんだ。ナンスルの街で聞いたけど不作でも豊作でも税は一緒だそうじゃないか、収穫できる上限は決まっているんだからズルい言い方だよ、それに納められないと奴隷として働かされるんだろ、随分と貴族って奴は優しいよな」


 嫌味を言ってしまったがそれを差し引いてもジールは知らないといけないと思う。


「お父様もこんな悪政をしてるのかな」


「悪かどうかは知らないし、そもそも国が定めた事じゃないか、じゃないと栄える街と貧しくなる街の差が出るからね」


「……あんたって不思議だね、当たり前の事を知らない時もあるけど詳しい事もあるんだね」


「当たり前の事を知らないのは記憶が無いからで、それ以外は人の話に耳を傾ければ分かるだろ」


 全てが本当の事では無いがそう言うしかない。この先にジールに俺の秘密を打ち明けたら怒るかもしれないがその日は多分来ない。


「……よしっ私は冒険者だし領主の娘でもあるから覚悟を決めたよ、ワイバーンの討伐に参加するね」


「そうか、ジールがそうならイレイガでお別れだね」


「えっ何を言ってるの? 討伐するためにイレイガに行くんでしょ」


 目を丸くして振り返って来るが、何を勘違いしているのか知らないが俺は勇者でもかりそめの勇者でもない。


「あのさ、俺の目的地はゴルゴダだぜ、それに何でワイバーンの討伐に参加しなきゃいけないんだよ。いいかい、そんな討伐は税を搾取している国がやればいいし、それか討伐料を稼ぎたい冒険者がやればいいんだ。何を勘違いしているのか知らないけど俺はD級だしジールはE級だろ、立場をわきまえろよ」


 そこに暮らす人達には同情するが、俺は全ての出来事に首を突っ込むほど人間が出来ちゃいない。

  

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