第三十七話 無益な戦い
少し回り道をした村に逃げ込み宿の窓から一晩中見張っていたが全く問題が無いようなのでもうあの連中は見失っているのだろう。
翌日の街道はそれなりに通行している人達がいるのでこんな場所で待ち伏せする盗賊はいないのでもう安心だ。
「どれぐらいでゴルゴダに着くかなぁ」
「そうね、五日もあれば行けるけど……ねぇそんな事も知らないのにどうしてゴルゴダに行きたいのよ、鉱石ダンジョンが目的なの?」
「ダンジョン? 違うんだよただの人探しさ、嫌なら此処で別れても良いんだぜ」
「嫌に決まってるでしょ、あの連中に狙われたらどうするのよ、だから殺せって言ったのに」
「悪かったよ、けどさ王女を狙ったんだぜ、あいつらもそう長くは無いと思うけどな」
「そうだと良いけど」
◇◇◇
昨日の夜は徹夜で外を見張っていたせいか昼前には急激に眠気が襲って来て馬に乗るのも辛くなってしまった。
人通りもある事なので街道脇にある雨避けの場所に移動し、一時間だけ眠らせて貰う。
「ちょっと、あんた達何の用なの、私達の馬に触らないでくれる」
「ちょっとぐらいいじゃねぇか、それより静かにしねぇと殺すぞ」
物騒な声が聞こえてきたので目を開けると、そこにいたのは盗賊のような姿ではなく行商人のような恰好をした男達がジールに恫喝をしていた場面だった。
「えっ何があったの」
「ちょっとしっかりしてよね、分かるでしょ」
その男達の向こうには街道を通行している人達が見えるので助けを呼んでもいいなと思ったが、何となく気配を察してなのか距離を開けながら足早に通り過ぎていく。
(ここも世知辛い世の中だよ)
「おいっ杖に触ろうとするなよ、どうなるか分かるだろうな」
「しつこい連中だよな……」
「そうみたいね、まさかわざわざ恰好まで変えてまで近づこうとするなんて最悪よ」
「盗賊って奴は随分としつこいんだな、そこまでするなら俺達を狙うんじゃなくて王女の方に行けばいいのに」
「人数が減ったから怖くて行けないんでしょ、それよりこれはあんたのせいだからね」
商人の振りをしているのか剣を腰に差したままだったので、気にすることなくジールと会話をしていると馬鹿にしていると思ったのかいきなり俺の右頬を殴って来た。
「いい加減にしろ、いいか詠唱なんか唱える暇与えねぇからな、殺されたくなかったらささっと王女が何処に逃げているのか言うんだよ」
「そんなのも知らないのかよ、馬鹿な連中だな、雷槍」
肩口から伸びた【雷槍】がそいつの口から入り後頭部へと突き抜けていく。刺さった部分は高温になっているので血は吹き出さないが、簡単に命を奪って行く。
「お前~」
剣を抜こうとしていた男には胸から出した【雷槍】で額に穴をあけると周りの男達は一斉に逃げ出して行った。
「うわぁぁぁぁぁ~」
「何が起こったんだ」
このまま見過ごそうかもと考えたが、もうそんな事を言っている場合じゃ無いだろう。
「お~い、逃げると殺すぞ、雷銃」
一番遠い所まで逃げている奴から順番に撃ち抜いて行く。耳元では激しい音が鳴り、前を逃げる仲間の頭が吹き飛んで行く姿を見てようやく観念したようだ。
(それでも五人も殺してしまったか、元の世界だったら殺人狂認定されるんじゃないか)
「ねぇその棒はしまったらどうなの」
「棒じゃなくて槍なんだけどな」
「どこが槍よ、棒にしか見えないわよ」
(はいはいどうせ俺のイメージが貧困なせいだよ)
「お前ら此処に戻って来いよ、少しでも逃げようとしたらどうなるか分かってるよな」
完全に戦意を喪失した盗賊達は両手を上げながら俺達の前にきて地面に跪いた。
「どうか命だけはお助け下さい。金に目がくらんで王女を攫おうとしただけで殺そうなんて少しも考えていないんです」
「王女は殺さないのに私達には殺そうとするんだね」
ジールのその指摘にその男達は何も言わずに下を向いてしまっている。
「それにお前らそんな服を持っているって事は普段は街で生活してるのか?」
「多分違うと思う、こいつらはその服を奪ったんだよ、そうでしょ」
ジールがそう言うと分かりやすい位に反応したので俺達を追跡しやすいようにどこかの商人を襲ったのだろう。
「ひっでぇ~……」
「すみません、すみません、命だけはお助け下さい。すべてお話ししますので」
遮るように命乞いをしてくるが、既に王女を誘拐する目的だとは聞いている。果してもっと有意義な情報はあるのだろうか。
「どうする?」
「話を聞いてからでいいんじゃない」
ジールがそう言ったおかげで盗賊達はゆっくりと話始めた。




