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第四話 目を覚ますとそこには

「お前ら何でこんな面倒な人間を拾って来たんだい。目を覚ます前に森の奥か外にでも捨ててくるんじゃ」


 おばば様は人間に対して余り良い感情を持っていないので、手助けをしようなどとは少しも思っていない。


「くるるるるる~」


「あのぉ宜しいでしょうかおばば様、聖獣様がそんな事をしたら二度とこの里には戻らないし、他の聖獣にも伝えると言っていますが」


 オルガの言葉とリンクするかのように聖獣は腕の中から飛び降りて、おばば様を威嚇している。


 聖獣にとっては怒り故の行動であったが、誰が見ても怖さは無いのでおばば様は目を細めながらそっと聖獣の頭をなで始めた。


「分かりましたよ、この儂が責任を持ってこの人間を直しますからそんな事は言わないで下さいな」


「くるるるるる」


 聖獣はおばば様の言葉に納得したのかちょこんと津崎の上に乗っかった。


「さて、そうとなったらお前達にも手伝ってもらうからね」


「え~俺達はずっと走り続けてここまで来たんだぜ、少しだけ休みたいんだけどな」


 ドロフェイは文句を言うが、おばば様が睨みを効かせるとオルガとクラウジーがドロフェイの頭を後ろから叩いた。


「いいから奥の部屋に運ぶんじゃ」


 ドロフェイが津崎を指定された部屋に運び、その汚れた身体をオルガが拭いている。クラウジーはおばば様と一緒に倉庫の中に何かを取りに向かった。


 全ての準備が整うと、おばば様は津崎の上に手を翳して目をしっかりと瞑った。


 光の幕が現れ、淡い光が広がると共に濃くなって津崎の全身を包んでった。


「これでこやつの魔力が垂れ流しになるのは防げたわい。ここで暫く寝かせて置けば目を覚めた頃にはこの世界に順応出来るじゃろうな」


「あの、どういう意味なんですか? 怪我は大丈夫なんですか?」


「十日もしない内にこやつは怪我も癒えて目が覚めるじゃろう。いいかい、儂はなクラウジーと一緒にこやつの為にこれから魔道具を作らなくちゃいかんのだ。質問の答えはその時にまとめてするからの」


 おばば様とクラウジーは部屋を出て行ってしまったが、誰かが見ていないと危険らしくオルガとドロフェイが不本意ながらここで見張りをする事が強制的に決定された。


 二人とも逃げ出してしまいたかったが、聖獣様が寄り添っているのでそんな素振りを少しも見せる訳にはいかなかった。



 ◇◇◇



(何だか眩しいぞ、それに何だよこの匂いは)


 まだ頭の中に靄が掛かっているようだが、段々と意識が戻って来る。


「#$’&%$#&」

「#$!#’&%$」


(何だ、何だか変な言葉が聞こえるな、あっそうだ、俺は変な奴に……)


 勢いよく目を開け、その勢いで上半身を起こすと身体の周りは優しい光で包まれている。


 視線を感じたので横を向くと、そこにはあの化け物ではなくもの凄く綺麗な女性と、精悍な顔つきをした男が無表情で見ていた。


「あの、どういう状況なんですかね」


「%$#’%$#”」


 二人は一斉に話してきたので言葉が全く理解できないが、よく聞いても今迄聞いた事の無い言語が聞こえる。

 

 思わず頭を抱えたくなるが、そこに狐もどきが胸の中に飛び込んできた。


「お~君は大丈夫だったんだね、よしよし…………えっ何で指があるんだ」


 頭をなでるまですっかりと忘れていたが、肩の痛みは全く無いし食べられたはずの指もちゃんとついている。


(あんなに痛かったのに夢だったのか)


「あ~あ~、どうじゃ儂の言葉を理解出来るか」


 いきなり聞き馴染みのある日本語が聞こえてくる。その言葉を話しながらこの部屋に入って来たのは背の低い老婆だった。


「あっはい、ちゃんと理解出来ます。ここは日本ですよね」


「その言葉は分からんの、あ奴の腕もまだまだという事かの」


「あの、どういう事でしょうか、あっ僕の会社の……」


「落ち着くんじゃ、それより腕輪は重く無いかの」


「腕輪? あっいつの間に」


 全く気が付かなかったがいつの間にかあまり俺の趣味ではない腕輪が付けられているし、背が高くて細身の男が俺の腕を握っていた。


(この人は最初からいたっけ? あっ手錠じゃないよな……)


「儂とそ奴で苦労して作ったんじゃ、必要なくなるまで粗末にするでないぞ」


 重厚な見た目の腕輪なのに全く重さも付けている感覚すらもしない。それはいいのだがデザインがやはり俺の趣味とは違っている。


「これは何ですか」


「言語変換の腕輪じゃよ、言葉の違う他種族と会話をするときに使うんじゃ、まぁ信用できんじゃろうなら外してみな」


 言われた通りに外すとその老婆だけでなく隣の男も変な言葉を話してくるが、わざとやっている様にしか見えない。


(どうするかな、もう少し様子を見た方が良いだろう)


 わざとらしく目の前で腕輪を付けると、老婆は満足そうな顔をしてきたので、この行動は正解だったようだ。


「どうじゃ、驚いたじゃろ異世界の者よ、いや、かりそめの勇者と呼んだ方が良いかの」


(何を言うんだこの老婆は)


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