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第三十五話 それぞれの道

 ジールはかなり不満気ではあったが、彼女を離れさせて三人だけで今後の事を話し合った。


 その結果。


 ドロフェイは護衛団の中に入り王都でかりそめの勇者の事を調べ、その内容をギルドに手紙を託した後で里の戻る事に決まった。


 オルガはセレニテが急激に成長してしまったのでおばば様に見てもらうためにこのまま里に帰ってしまう。


 セレニテはその決定をかなり嫌がったが、このまま旅を続けるとセレニテの体調が不安定になる事を恐れセレニテの我儘は許さなかった。


(セレニテが此方の言葉を理解しているのは薄々知ってたけど、オルガとセレニテがここまで意思疎通が出来るとはな)


 俺はこのままゴルゴダに向かい、そこで【サムライ】の情報を集め探し出したいと思う。それで情報が集まればいいがもし何も無いようだったら王都に行こうと思っている。


「まさかここでバラバラになるとはな」


「まぁいいんじゃない、どうせ別れる予定だったしね、生きていればまた会えるでしょ」


「そうだぞ、それに俺達は人間の街にいなけりゃ里にいるんだ。お前が尋ねてこればいいんだ」


「あっそうだ。あんたのこれを上げるわよ」


 オルガは自分の手に嵌めている指輪の中から緑色の魔石が付いた指輪を渡してきた。


「これは……」


「これはエルフしか作れない物なの、人間が持つ事なんてありえないからあんたが里で暮らしていた証明になるかも知れないし、少なくとエルフとの繋がりを証明してくれるわ」


「それにな、それにはちょっとした秘密があるんだ」


 ドロフェイは同じ色の魔石が入った首輪を見せながら言ってきた。


「秘密って何だよ」


「今はまだ意味はないけど……そうね、いつか里に来た時におばば様に聞くといいわ、これで里に戻ってくる理由が出来たじゃない」


 何て答えたら良いのか分からず、ただ苦笑いを浮かべるしか無かった。


 この先どうなるのかは予想がつかないし、もしかしたら簡単に戻れる方法を見つけてしまうかも知れない。



 ◇◇◇



 オルガから貰った指輪は左手の人差し指に上手い具合にはまっている。その魔石を触りながら俺達はジールにどうしたいのかを決めさせていた。


「私には王都かゴルゴダにしか選択肢は無いんだよね、そうなるとユウかドロフェイか……」


 ジールは選択肢の一つに入っていないようだが、オルガと行けば故郷にちゃんと送ってくれることになっている。


「戻れば良いんじゃないか、うん、そうしなよ」


「決~めた。私はゴルゴダに行くよ」


 真っすぐな目で俺を見ながら言ってくるが、そのジールを見ると嬉しい反面、面倒だなと思っている俺がいる。


「王都の方が良いんじゃないか、ドロフェイもいるから安全だしな、それに俺に付いて来ると何時戻るか分からないんだぞ」


「こいつ、お荷物を俺に預けようとしてやがる」


 ドロフェイが何も考えずに嫌そうな顔をして文句を言っていると、ジールがドロフェイを睨んでいる。


「悪かったわね、お荷物で」


「あっいや、ついな、まぁ気にするな」


(少しは考えて話せよな)


「私は帰りたくなったら勝手に帰るわよ、それに王都には行きたくないからそうなると道は一つしか無いでしょ」


 オルガに送ってもらう道があるのだが、その事を言うと機嫌が悪くなりそうなので言うのを止めた。


「それでいいじゃないの、その方が私達も余計な心配をしなくて済むかもね」


「そうだな、ユウの事はお嬢ちゃんに任せるか」


「あのね、それだと俺がジールについて行くみたいじゃないか」


「仕方が無いでしょ、あんた一人だと揉め事を起こしそうだからね」


 俺がこの世界の常識をまだ理解していない事を言っているのだろうが、オルガ達より常識的に行動できると思っている。


(子供扱いするなよな……そうか、エルフにとってはまだまだ子供なんだろうな)


「これで決まりだな、ちょっと待ってろ」


 ドロフェイはそのまま中央の馬車の方に行ってしまった。



 ◇◇◇



「あんたねぇ何を枕にして寝てるのよ、おばば様に言うよ」


 翌朝、機嫌の悪いオルガに起こされたが、俺の頭の下にはセレニテが丸まっていた。


(どうりで良い夢を見たと思ったよ、ふわふわで気持ち良かったからな)


「朝から止めとけよ、それよりこれはお前の取り分だ」


 いつの間にか戻って来たドロフェイがたんまりと金貨を入った袋を投げて寄こしたが、どう考えても盗賊の討伐料にしては多すぎる。


「多すぎないか、まさか俺だけ……」


「そんな訳なぇだろ、いくら何でも甘やかさねぇからな、いいかこれを受け取ったらお前は昨日見たことを全て忘れろって事だよ」


(どのことの口止め料だ? お忍び? それともあの男との……)


「じゃ俺は行くからな、いいかギルドに行く度に手紙がないか確認するんだぞ」


「助かるよ、ただあまり無茶はしないでくれよな」


 ドロフェイは散歩にでも行くような感じで行ってしまった。


「それじゃ私達もいくかな、いい、いつか成長したセレニテ様を見に来なさいよ」


「分かったよ、セレニテも元気でな」


 セレニテは行きたくない様だったがオルガはセレニテを頭に乗せて行ってしまった。


 里でも思ったのだが、エルフとの別れは何時もあっさりしている。 


 

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