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第三十三話 現実の殺し合い

「死ねぇ~」


 気持ち悪くて吐いている俺に向かって盗賊らしき男が襲いかかって来たが、そいつの胸にはジールによるランスの一撃が突き刺さった。


「吐くには後にしなさいよ、ほらっあんたもやるんでしょ」


「あぁそうだな」


 領主の娘などお遊び程度に冒険者をやっているのかと思ったが、何のためらいもなく突き刺したのを見てしまうと俺よりもジールの方が覚悟が出来ている。


 下を見るとドロフェイは間違いを起こさないように慎重に戦い始めたので、俺もこの世界で生きるならこのまま見ていて終わりという訳にはいかない。


「中央の馬車はドロフェイが守っているか、だったらそっちだな……雷銃」


 雷が近くに墜ちたような音と共に盗賊の上半身を消失させてから消えていく。


 後ろに被害を出さない為に狙いを付けた奴だけを倒すようにしたが、どう考えても過剰攻撃になっている。


「同じ魔法よね? 何で音がこうも違うのよ」


「どうでもいいだろ、俺の気分によって音が変わるんじゃないのか、知らないけど」


 同じ魔法でも音の大きさや効果音が変わるのは勿論知っているが、何となく面白いのでそのままにしていたが、落ち着いたら安定するように変えてもいいかも知れない。


「ねぇあっちの馬車から女性が……」


「中に居ろよな……雷銃」


 直ぐに襲おうとしていた奴をまたしても足だけ残して消失させると、馬車から飛び出して来た女性は耳を押さえて蹲てしまっていた。


(飛び出したのってもしかして俺の魔法が原因なのかな)


「お前ら油断しすぎなんだよ」


 ドロフェイの声がいきなり後ろから聞こえたので振り返ると。その足元には二つの死体が転がっている。


「あぁごめん」


「下は混乱してるからよ、此処からはお前に任せるわ」


「それでいいのか」


「良いだろ別に、頼まれた訳じゃねぇからな」


「あっそうだ、あれを試してみるか」


 殆ど【雷銃】と変わらないのだが、【雷銃】は意識して弾を解除しないとどんどん先まで行ってしまうが【雷爆】は当たった途端に対象物を吹き飛ばし消えていく。


「さて、あいつでいいかな【雷爆】」


 人に対して初めて使用する【雷爆】はカンカンカンと甲高い音を奏でながら飛んで行き、当たった途端に破裂音がした。


 後の事を考えなくていいので楽だと思ったが、直ぐに後悔の気持ちが襲ってくる。


 いくら盗賊とはいえ肉片を巻き散らかして殺すのは気分のいい事じゃなかった。


「ちょっと、いくなんでもあれは……」


「言わないで良いよ、俺もそう感じているんだ」


 肉片があの辺り一帯に振り注いだおかげなのか盗賊達は一斉に此処から逃げ出して行ったのが唯一の救いだと思う。


「さて、今度は怪我人を助けに行くか」


 ドロフェイはわざとらしく無手の両手を上げながら馬車の方に向かって歩いて行くが、護衛達は警戒心を緩めようとはしない。


「あのなぁさっき助けてやっただろ、それにこのカードをみろよちゃんとした冒険者なんだよ」


 ギルドカードを調べる魔道具は此処には無いだろうが、ようやく護衛達は警戒心を緩め地面に腰を下ろす者も出始めた。


「お前らのリーダーは何処にいるんだ」


「確か向うに……あっ」


 その男が見た方角には緑の胸当てを付けている男が倒れていて、地面にはかなりの血が流れていた。


「隊長~」


 それに気が付いた別の者が隊長と呼ばれた男の元に駆け寄ると、回復薬らしきものを身体中に浴びせ始め、直ぐに身体は光に包まれる。


 俺達も彼の元に駆け寄るとその回復薬はこの世界では珍しいガラスの容器に入っているのでかなり上等な回復薬だと思って間違いないだろう。


「クリストフ~」


 この場では似つかわしくないオレンジ色のドレスを身に着けた女性が走ってきて血で汚れている隊長に抱きついている。


 思わず誰もが動きを止めて見ていたが、ドロフェイは吐き捨てるように怒鳴り散らした。


「てめぇらは何ボーっとしてんだよ、他にも怪我人がいるんじゃねぇのか」


「「「はいっ」」」


 男達は散らばるように走り出し、ただ一人、目つきの鋭い初老の男がそのドレスの女性の前に膝間づいて頭を下げた。


「隊長は私達が見ますのでどうか馬車にお戻りください。またあの連中が戻ってくるかも知れません」


「いいえ私は彼が目を覚ますまで此処にいます。私の事は構わないで良いですから副隊長の貴方がこの場を指揮しなさい」


 顔に似合わない剣幕でまくしたてると副隊長はしぶしぶこの場から離れて行った。


(何だか変な連中だな)

 

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