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SIDE1 まだいた転移者

「ん~はぁ~」


 目を覚ますと見知らぬ場所に一人だけでいる。


(どこなんだよここは、何が……もしかして病院なのか? それにしては……)


 特に何かの処置をされている訳では無く、どう見ても病院とは思えないあばら家の中にいるので一先ず立ち上がろうとするが眩暈が襲って来て、寝かされていた木の箱のような物から落ちてしまう。


(いってぇ~、何なんだよ、どうせ助けてくれたんだったらもっと他に場所があっただろうに)


 身体がこんな状態なのはぞんざいに扱われてせいだと思いながらも、誰かが助けてくれた事には変わりが無いのでその怒りを押し込めた。


「すみませ~ん、どなたかいますか」


 声が聞こえたのか部屋の扉が開き、奇妙な中世のコスプレのような恰好をした歳の割には体格のいい老人が入って来た。


「’&&$##”#’’%#&$」


「へっ、あのもう少しゆっくりと話して貰えますか」


 てっきり聞き取りにくいだけかと思ったが、どの言葉を聞いても理解出来る単語は一つも無かったのでただその顔を見ていた。


(こいつは頭がおかしいんだろうな、だから救急車を呼ばずにここに寝かせる事しか出来なかったんだろう)


 出来れば早々に立ち去りたいが思うように身体が動かず、まごまごしていると老人が身体を支えてきてゆっくりとではあるが外に連れ出してくれた。


「えっ何でこんな森の中に? あの鳥は何だ? えっあんな動物なんて見たことないぞ」


 外の風景は今まで見たことが無い景色が広がっているので夢であることを願いながら自分の頬を叩くが目の前の光景は変わらなかった。


 思わず叫び出しそうになったが声は出ず、再び意識を失ってしまう。



 ◇◇◇


 目の前が明るくなってきたので今度こそ此処が病院である事を期待しながら目を開けるが残念ながらその期待は儚い夢だった。


(何だよ俺は一体何処に連れて来られたんだ? 誘拐されたのか? ただの一般人の俺を?)


 泣きそうになってくるがどうにか涙を堪え立ち上がろうとしてもやはり体が思うように動かない。


 するとまたしても扉が開き、あの老人が皿に入ったスープを差し出してきた。


(飲めって言うのか? どうせ何か薬が入ってるんだろ)


 信用して良いか分からないので頭では飲みたいとは思わなかったが、かなり空腹状態になっていたらしく、身体が勝手に口に運んでしまった。


(もうどうとでもなれだ……あれっ何だか身体が軽くなってきた気がするな、これはどっちだ)


 全て飲み干すと老人は何も言わずにただ満面の笑みを浮かべて部屋から出て行ってしまう。



 ◇◇◇



 何日過ぎたのか分からないが、毎日のように出されたスープを飲み続けると日に日に体調が戻って来る。


 初日はかなり警戒したし、あまり美味しいとは言えないスープではあったが、今では漢方か何かのスープだと思って飲んでいる。


(これを飲むと調子が良くなるんだよな? 危ない薬が混ざっていない事を願うしかないけど)


 いつもは飲んで直ぐは調子が良くなるが直ぐに疲れてくるのでトイレに行くので精一杯だが、今日は時間が過ぎても疲れる事は無いし、それどころか力がみなぎっている。


 身体を動かしていると、皿を下げにきた老人がその様子を見て肩を叩きながら笑顔を見せて来た。


(悪い人じゃないよな、只なんで言葉が……まさかと思うけど試すしかないよな)


 感謝するように頭を下げ、さりげなく手を取りながら老人を外に連れ出していく。


 地面に落ちていた木の枝で適当な絵を書くと老人は久し振りに訳の分からない言葉を話した。


(よしっいいぞ)


 それからも何度か同じような事を繰り返すと、必ず一つの単語が混じっていることを掴んだ。


(その単語が【何?】なんだな、これならこの人とコミュニケーションが取れるぞ、ただこの人がまともであればだ)


 ずっと考えていたが、見たことも無い生物がいるのは確かなのでかなりの確率でここは日本では無い。


 あの時の地形は覚えていないがもしかしたらあの下は海で漂流したのかも知れない。そんな事がある訳無いと思うが、頭に角が生えた兎が家の周りを跳ねまわっているのだから日本である訳が無い。



 ◇◇◇



「シショウ、イイノカ」


「駄目だな、もっと正確に」


 数ヶ月もここで暮らすともう此処は普通の世界では無いと思っている。ありえない事だが目で見たことを信じて先に進むしか選択肢はなかった。


 今では単語ではあるが会話をする事が出来ているし、この世界で生きるために剣を習っている。


 初めは出来る訳が無いと思っていたが、どうやら剣に対して俺は天才だと思う。


(これが分かっていたら剣道をやっていれば良かったよ、多分だけどそうとういい成績を残せたんじゃないか)


 鉄のような素材で出来たあまり切れ味のよくない剣ではあったが、最初こそ振り回されていたけど今はその重さすら感じないし、この森にいる変な獣は一刀両断出来る。


 師匠は何日も戻って来なかったりこの森で狩りをした獲物を街に売りに行っている事もある。


 獲物によっては何故か宝石が取れるのでかなりいい稼ぎになりそうだ。


 また街に行くと新たな言葉を覚えていくし、この世界のことも徐々に分かって来た。出来ればあんな森の深くに暮らすのでは無くて街で暮らしたいが、何故か師匠は頑なに嫌がった。


 そもそもいい歳をしているのだから俺だけ街で暮らせばいいのだろうがその考えは俺には無い。


 何故なら訳の分からない俺を助け、剣と狩りを教えてくれている師匠を置いておくことは自分からは出来ない。



 ◇◇◇



 一年後、父の様に思っていた師匠が死んでしまった。


 俺は冒険者という地位を手に入れ討伐に行っていたのだが、師匠は森の中で魔獣に襲われていた貴族を助けて命を落としてしまった。


 そんな馬鹿貴族を庇わなければ倒せたはずなのにどうしてそこまでしてあんな連中を助けたのか未だに意味が分からない。


 その魔獣を追い続け復讐すると何故か死体が直ぐに宝石に変わり、それをギルドに持って行くといきなり俺は何段階か階級が上がったらしい。


(良く分かんねぇけど、だったら名前も変えるか……ラストサムライ、いやサムライでいいか、せめて元の世界と名前だけでも繋がっていたいし、そもそも師匠のギルド名も意味は最後の盾だったしな、この世界ではでは本名は止めた方がいいんだろう) 


 

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