その三 この世界の現実
たまには深夜の予約投稿をしてみようかと。
「これで信じて頂けましたかな、先ずは私が手本として石板に手を置きますので同じようにやって下さい。それであなた方の能力が分かりますので」
法王と名乗る人物が最初にやると言うので、何かしら言おうと思っていた今村は言葉を失ってしまった。
本当だったら訳の分からない事は出来ないと言いたかったが最初にやられてしまうとそれを言うのは失礼になってしまうと判断したからだ。
普通に法王が手を置くと石板から濃くて白い光が溢れてくる、ただそれだけだった。
「あの、それだけなのですか」
素質が分かると言う事なのでもっと変わった事が起こるかとも思っていたが、ただ石板が光っただけなので今村は拍子抜けしてしまう。
「人によって光の色や濃さが違うのですよ、私は回復系の魔法が得意で魔力もこの城の中では一番持っています、さて、どなたからやられますか」
「分かりました私からやります」
今村が手を置くと次々と色を変えていき、どれもが眩いばかりのハッキリとした光だった。
「いきなりでましたか、どうやら貴方は全てに渡って能力が高いですな、勇者と言ってもいいでしょうな」
それからは代わる代わる手を置いたが、殆どが一色のみで中には二色の光を出す者がいたが、今村に似たような現象を起こしたのは平井だけだった。
◇◇◇
玉座で腰を浅く掛けながら国王は法王の報告を聞き、久し振りに満足そうに笑みを見せている。
「そうか、勇者の素質を持つ者が二人もいたか、あの人数しかいないのに二人も出るとはやはり勇者召喚だけあるの……それで奴らは何をしているんだ」
「外の世界を見に行かせております。さすればここがどのような世界なのか五感で分かると思いますので」
「そうか、それで訓練はいつから始めるのだ」
「奴らも帰るために必死になるはずでしょうから明日から開始する予定です」
「元の世界に戻るか……そんな夢は儚いのにな」
「国王様、お言葉ですがあ奴らは我々と同じ人間ではありません、ただの道具ですので気になさらないように」
◇◇◇
三台の馬車に乗せられ今村達は王都の中を通り過ぎ、堅牢な城壁を潜り抜けて平原を進んで行く。
「なぁ何処まで行くのかな、何だか怖いよ」
「心配するなよ春奈、俺が必ず君を守る」
勇者の素質があると言われ少しだけ気分のいい今村は恋人になったばかりの小川春奈を人前にもかかわらず強く抱きしめた。
すると馬車が止まり精悍な顔をした中年の兵士が声を掛けてくる。
「皆さま、今から魔獣討伐をお見せしますので降りて下さい」
「えっ魔獣ですか、それは」
「見れば分かりますよ」
今村達は恐る恐る馬車を降りると、騎馬隊が彼等を守るようにして周りを囲んでいる。中には襲われるのではないかと震えるものもいたが、騎馬隊の兵は此方ではなく円の外に向かって警戒しているので直ぐにその誤解は解けた。
「皆さま、見えにくいかも知れませんが騎馬隊の外に行かないようにお願いします。今から討伐が始まりますのであちらをご覧ください」
兵士が指を差した方角を見ると二頭の騎馬が蛇行しながら此方に向かって走ってくる。
それだけならいいが、その後ろから数mの高さまで舞い上がっている砂煙が騎馬を追いかけているように見えた。
「何な……あっ化け物じゃない」
「あれはリズールと言う魔獣です。ただの身体が大きいだけの奴ですよ」
近づいて来たので砂煙の中が見えて来たが、その中には顔が平べったいトカゲのような化け物が騎馬を追いかけていた。
(おいおい、ただ逃げるだけなのか、もう少しで追いつかれるんじゃねぇか)
勇者の素質があると言われ自信を持ち始めた平井であったが、そのリズールの大きさに早くもその自信が揺らいで来ている。
ただ今村達を守っている騎馬隊は全く動揺していない。
「さぁこれから討伐を行います。今は無理だと思うかも知れませんがあなた方は直ぐに簡単に倒せるようになりますよ」
その兵士が合図を送ると同時に三人の騎馬が飛び出していく。
今まで追い駆けられていた騎馬と交差すると同時にリズールに向かって矢を放った。
その矢は外皮によって弾かれてしまったが兵士は動揺する事なく、今度は頭上でハルバートを振り回している。
リズールは動きを止めることなくその三人に狙いを定め駆けてくるが、その頭上にいきなり大岩が落ちてきてリズールの身体を打ち付けていく。
動きが鈍くなり、緑色に血を流しながらも怒りに満ちた目を向けながら迫って来るリズールに対し、三人の騎馬は臆すことなく突撃し、ハルバートでその身体を切り刻んだ。
誰もがその光景を茫然と見つめているが、只一人、平井だけは興奮の只中にいる。
(兵士であれか、だったら勇者の俺は何処まで出来るんだ……面白くなってきたぞ)




