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第二十九話 後始末

 今度は今までじっとしていたヴァーウルフが一斉に動き出すと思い構えてていると、何もせずにそのまま姿を消してしまった。


(どういう事だ? あいつらは入って来れないのか? 今は考えている場合じゃない)


 直ぐに全身から血を流しているジールに近づくと、身に着けている黒革の鎧は穴だらけになっていて、その穴からにじみ出るように血が出ている。


 ジールの端正な顔は無傷ではあったが、その顔色を見る限り残された時間は長くないようだ。


(元の世界なら無理だったけどな、このおばば様から貰った回復薬があれば何とかなるさ)


 急いでマジックバックの中から回復薬を取り出して飲ませようとしたが、ジールの口が堅く閉じられ思うように入っていかない。


(不味いな、どうする? どうする? どうする? 直接掛けるしかないか)


 鎧の各パーツは強靭な紐で繋がれていてどうやって脱がしたらいいの分からないので小刀で紐を切り、鎧を剥ぎ取った。


 その次に下の服を下着事一気に切り裂き露わになった傷口に直接回復薬を掛けると穴が塞がり始め同時に血も止まっていく。


(よし、これなら良いぞ……あっ)


 ほんの数秒前までは傷口の事しか目が向かなかったので気が付かなかったが、靴しか身に着けていないジールの裸を見ると、多少の胸の膨らみがあり、下半身にはあるべきものが無かった。


(えっ…………何してるんだ、見ている場合じゃないだろ)


 バックの中からマントを取り出しジールにかぶせ、今度はホムラに向かって走り出す。


(けど、ホムラは無理だろうな)


 50mぐらい蹴り飛ばされたホムラは全く動く気配すらなく、あそこまで飛ばされたのだからかなりの酷い状態の死体となっていると思うのでその走りはどうしても遅くなってしまう。


 視界にはっきり捉えてきたが、どういう訳か血も流れていないし手や足もしっかりと付いている。


(どうなってるんだ?)


 不思議に思いながらも直ぐ側まで行くと、薄っすらとだがホムラの口からうめき声が聞こえてきている。


「ううっ……うう」


「まさか生きているのか」


 ホムラの頑丈さに驚きながらも回復薬を口に運ぶとジールとは違って自分の力で飲み始めた。直ぐに身体が光で包まれ、ホムラは両目を見開いた。


「ぐわぁ、何を飲ませたんですか、変な物じゃないでしょうね」


「何で直ぐに話せるんだよ、まぁいいけどさ、それより身体はどうなんだい」


(恐ろしく頑丈な奴だな、もしかして人間じゃなくて別の種族なのか?)


 ホムラは立ち上がって自分の身体を上から下まで叩き、それからその場で何度も飛び上がってどこかおかしな点があるのかじっくりと確認している。


「こんな効き目のある回復薬なんて初めて飲みましたよ、でもあの味の事を思い出すともう二度とのみたくないですけ…………ジールさま~」


 ようやくこの場にジールがいない事が分かったのか周囲を見渡して倒れているジールを見つけるといきなり走り出していく。


 俺もその後を追いかけてホムラの様子をみると、完全に元通りになったのかその足取りに不安な要素は一つもない。


(それにしてもあそこまで頑丈な身体をしているのにどうしてそれを活かせることが出来ないんだ? 活かす事が出来たらE級に上がれたのにな、不思議な少年だよ)


 ホムラは滑り込むようにジールの元に行くと、号泣しながらマントからはみ出ている手を両手で握りしめて祈るようにしながら名前を呼び続けた。


「落ち着けよ、彼女にも君に飲ませた回復薬を掛けたから傷口は塞がっているよ、ただ意識が戻らないから治療院に運ぼうぜ」


「……今、何て言ったんだおっさん」


 いきなりホムラの雰囲気が変わり、もし俺にオーラが見えるのであれば今のホムラはどす黒いオーラを全身から出しているような気がする。


 変な事を言ってしまうと何かが起こってしまいそうなので、此処は慎重に言葉を選ばなくてはいけない。


「どうしたんだ、街の治療院に行こうって言っただけだぞ」


「そこじゃない。おっさんは彼女って言ったよな、どうしてジール様が男では無くて女だと知っているんだ? 僕が意識が無い間に何をしたんだ」


(こいつは馬鹿なのか、もしこの俺がただの言い間違いならどうするんだよ、領主の娘が冒険者なんてかなりの秘密だと思うんだけどな、まぁ見ちゃったから知っているんだけどね)


「治療かな」


 先程脱がせた鎧やその下に着ていた衣服を指さすと、ホムラは這いずるようにそこに向かい衣服を手に取って震え始めた。


(おいおい、こいつは変態じゃ無いだろうな)


「襲ったのか?」


「あほか、その服の穴は俺が開けたんじゃないに決まっているだろ、勘違いするな」


 多少動揺はしているが、その動揺を隠すようにヴァーウルフの牙を剥ぎ取った後でその身体を燃やした。


 業火とは言えない俺の魔法の火なので何度も着火させながら、ジールの裸体が見えないように慎重にマントでその身体を包んで行く。


 ヴァーウルフの肉体が燃え、俺の足元に綺麗な魔石が転がって来たのでそれをしまってからゆっくりとジールを抱きかかえる。


「何をするんですか、ジール様は私が運びます」


「君じゃ無理だよ、いいから行くよ」


(言葉遣いが戻ったか、少しは冷静になったようだね) 

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