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第二十八話 親玉との戦い

 滑り込むように街道に入ると、そのまま二人を地面に対して滑らすように投げる。


 ジールとホムラは思いのほか反対側まで滑って行ってしまい、そのまま街道を抜け草むらの中に突っ込んで行った。


(あ~もう腕がパンパンだよ、筋力が増強しているはずなのにこれだもんな、やはり二人を抱えて走るのは無茶だったな)


 両手を交差して腕を摩っていると、草むらからフラフラと二人が街道に戻って来てその顔は折角助かったというのにかなり不満げな表情をしている。


 街道の全てに魔獣除けの結界がある魔道具が設置されている訳では無いが、街からさほど離れていない此処にはちゃんと置いてある。


 確実にこの中に魔獣が入って来れない訳では無いが、魔獣にとってはかなり不快に感じるらしいのでわざわざそんな思いまでして此処に入る様な事はして来ないだろう。


「どうした、助かったんだぞ」


「あのねぇ、此処にこれたことは感謝してるけどさ、最後のあれは無いだろ」


「仕方が無いんだ。普通の状態の君達がいきなり動きを止めると気持ち悪いどころじゃなくなるからね、まぁそれぐらいは諦めなよ」


 俺が【雷瞬】を使用する時はその速さに身体が耐えられるように勝手に強化しているので俺は普通に動けるが、他の人はそう言う訳にはいかない。


 ドロフェイを背負って走った時はもう二度と乗りたがらなかったのでかなりの負担を感じていたはずだ。


「だったらゆっくりと速度を落とせばいいじゃないか、あのやり方は酷いじゃないか」


「そうですよ、もしジール様の顔に傷でもついたらどうするつもりなんですか」


「そんな事をやっている時間が無いんだよ、それよりも探らないと」


 胡坐を組んで魔力を探るとやはりヴァーウルフは此方に近づいて来ている。


「どう、やはり来てるのかな」


「そうだね、ただこの中に入って来る事は無いと願うけどね」


 普通ならこの街道に入ったと分かったら諦めるかとも思ったがそうでもないようだ。その証拠にもう街道の直ぐ近くまで来ている。


「さぁ早く街に戻りましょう」


「お前らさぁ一体何をしたんだ。恨んでいるとしか思えないぞ」


「私達は討伐をしただけだ」


「そうですよ、それにジール様はちゃんと子供ではなく大人を討伐したのですから」


(あ~それが原因かもな、魔獣の討伐だから仕方がないけどわざわざ親子連れを狙うなよな、よりによってヴァーウルフなのに)


 話していると唸り声が聞こえ、街道の脇に何十体ものヴァーウルフが姿を見せて来た。ここまで近寄って来ると言う事は魔道具の効果など意味が無いと言っている様なものだ。


 街道沿いに白毛のヴァーウルフがの集団が立っている光景は殺意さえなければ美しくも見ごたえのある光景かも知れないが、殺意があるこの状況は寒気すら覚えてしまう。


「運が良いのか悪いのか分からないけど俺達以外は誰も街道にいないとはな」


「こうなったら二人で戦うしか無いね、いいかホムラは後ろに下がっているんだ」


「待ちなよ、意外と戦う必要が無いかも知れないぞ」


「何を言ってるの」


「ほらっ街道の脇までは来ても中には入って来ないだろ、もしかしたらあそこが限界なのかも知れないな」


 ヴァーウルフから視線を外さないようにしながら街道の反対側をゆっくりと街に向かって歩いて行く。てっきり同じようについて来るのかも知れないと思ったが、奴らはその場で遠吠えをしているだけだ。


「それでは今の内に街に戻りましょう、さぁジール様行きましょう」


「結局何の為に山を登ったんだ私は……」


「落ち込んでいる場合じゃないぞ……参ったな」


 街に戻る方向の街道の中に見上げればならない程の大きさのヴァーウルフが立っている。


 柔らかそうな白い毛を逆立てて、その目は赤黒く光り輝いている。そしてその大きな口から見える牙はどれもが鋭利な刃物の様に尖っていた。


「お前らは防御だけに専念するんだぞ」


「ちょっと待ちなよ、これは私の責任なんだ。戦うに決まっているだろ」


「無理だよ……雷銃」

 

 うねりを上げながらジグザグにそのヴァーウルフに向かって飛んで行くが、次の瞬間には奴はその場から消え失せ、俺の後ろにいるホムラの身体を蹴り上げていた。


 ホムラはうめき声の一つも上げることなく壊れた人形のように吹き飛ばされてしまう。


「ホムラ~」


「ジール、取り乱すな、殺されるぞ【雷瞬】」


 ホムラに向かって走り出しだそうとしたジールに声を掛け、俺はヴァーウルフの前に回り込んだ。


 【雷銃】の弾をヴァーウルフを取り囲むように出現させ同時に向かわせる。弾同士がぶつかり合い目も開けられない程の光と、何故かそれぞれ違う音が重なり合い何と言い難い状態になった。


 光と音が治まり、砂煙だけが舞っているとその中から奴が飛び出してきた。


「えっ何であれで無事なんだよ」


 ヴァーウルフは俺ではなくジールに狙いを定め、口を開けながら迫って行き、ジールの身体にその鋭利な牙が食い込んでしまったが、地面から突き出した【雷槍】によってヴァーウルフを串刺しにする事には成功した。


「ジールを離せ」


 串刺しの状態で血だらけになっているヴァーウルフに向かって何発も【雷銃】を撃ち込んで行く。


 身体に当たった【雷銃】は当たった途端に消えてしまうが、右耳から入った【雷銃】は脳みそをかき混ぜてくれたようだ。


 つい先まで赤黒く光っていたその目は白く変わり、口を大きく開けたのでジールは身体中に穴を開けたまま地面に落ちていく。

 


 


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