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第二十四話 森からの脱出

 精神的にも肉体的にもダメージを受けている女性と小さな子供達なのでこの森を抜けるのに想像以上の時間が掛かり五日を過ぎてようやく抜ける事が出来た。


「生きて出たのは嬉しいけど……」


「この先は……」


 森を抜けたことに安堵するのも、この先の事を考えて誰もがどうしたらいいのか悩んでいるようだ。


 本当だったら俺はもっと同情して堪らない気持ちになっているはずだが、ここに来るまでにエルマーとラウルスが聞き出したことを思い出すと、別の感情も湧いて来る。


 君達の村は何処なんだ?


 誰も他の街や村に助けを求めに行った者はいないのか?


 男達はどうなったかわかるか?


 ゴブリンが村を襲ったのには何か理由があるのか?


 どうして目を逸らすんだ?


 辛いのは分かるが、どうして近くの街じゃ駄目なんだ?


 何故、王都の診療所も嫌がるんだ?


 辛い記憶を消せるのに、何故誰も拒否するんだ?


 その答えは明確でこの人達の村、いや、住処などはなく森や洞窟を転々とする盗賊団だった。


 本当かどうか分からないが彼女達は盗賊行為に関わった事が無く、無理やりに盗賊に攫われたのでただの被害者だと言っていた。


(どうせ嘘なんだろうな、誰も自分の故郷に帰りたがらないしそもそも街じゃなくて何処かの村が良いと指定してくるもんな、村なら捕まらないとでも思っているんだろう)


「おっ、あいつらちゃんと荷台を隠したようだな、これならかなり移動が楽になるぞ」


「何言っているんですかエルマーさん、馬がいないから意味無いじゃないですか」


 当たり前の事を言っているだけなのだが、エルマーもラウルスも呆れたように俺を見て来た。


「お前さぁ本当に馬の事知らねぇな」


「いくら何でも常識が無いよな君は、D級に昇級する資格はあるんだけどそれじゃ無理かもね」


「そうだよな、実力はそれ以上に申し分ないんだが、どうするか」


 俺を置き去りにして二人で話しながら口笛を何度か吹くと、ほどなくして二頭の馬が駆け寄って来た。


「えっ戻って来るんだ」


「当たり前だろ、俺達が森にいる間に繋いだままだったらどうやってこいつらはエサを食べるんだよ、はぁ~そんな事も知らんとはな」


「仕方がないじゃないですか、エルフの里には馬がいないんですよ」


「そうか、こいつは記憶を無くして……」


 俺の生い立ちを思い出してくれたのでこの事は聞かなかった事にしてくれたが、この先もこれが通用する訳はないので早く人間の世界の常識を身に付けないといけない。


 多少狭いが彼女達を馬車に乗せて出発すると、直ぐにエルマーが嫌そうな顔をして進行方向を指さした。


「めんどくせぇ奴がいるな、気づかれる前にお前の魔法で何とかならんか」


 草木をかき分けるように迫ってくる魔獣はスラーミーアヒと言って何処にでも生息する大型の蛇なのだが、その身体はなめくじのようにぬめぬめしているので、エルマーもラウルスも自分の剣が汚れるのが嫌なのだろう。


「ここからだと俺の魔法を弾き飛ばしますね、近くでも効果があるかどうか」


「そうだよな、魔法耐性が強いもんな、だったら逃げるしかねぇよな」


「逃げれますか、馬車にはかなりの人数が乗っているんですよ」


「奴を殺すのは簡単なんだけどさ、剣を整備に出さないといけないし、もしかしたら買い替えする羽目になるからちょっとね」


 こんな状況だと言うのにエルマーもラウルスも討伐後の事を考えると戦いたくないらしい。


「分かりましたよ、俺がやるので一人ついて来て下さい」


「どうするんだ、あのぬめぬめした外皮を打ち破る自信があるのか」


「ちょっと考えがあるんで、だからおとりにはなって下さい」


「それぐらいならやってやるが、俺が戦う羽目にならないようにしろよ」


「分かりましたって」


 高ランクの冒険者なんだから随分とせこいなとは思うが、ぬめりはかなりの匂いもするので防具に触れたら洗ったぐらいでは落ちないから嫌なのだろう。


 エルマーは俺の指示通りに両手を上げてスラーミーアヒのエサを演じてくれている。


 普通の人間の三倍程の高さのある鎌首を持ち上げその速度を上げて迫って来る。


 エルマーまでの距離が数mとなった時に大きな口を開け始めた。


「雷瞬」


 一気にエルマーの背中を飛び越えその大きな口の中に【雷銃】を撃ち込みそのままスラミーアヒの身体を飛び越える。


 ガボガボガボガボ


 身体の中でもジグザグに動きスラーミーアヒの身体が内側からうねっている。身体の中に【雷銃】が入っているせいで気持ちの悪い音が聞こえてくるが、鳴りやむと同時に口から大量の黒い煙を吐いて倒れて行った。


 身体全体が湯気に包まれ死体が魔石へと変わっていくと、その身体のサイズにまるで合っていない小さな魔石をエルマーが拾い、それを俺に投げて来た。


「ほらよ、ただでさえ金にならない魔石なのにお前が内部に魔法を放つから価値が全く無くなったぞ、まぁギルドに持って行けば討伐証明にはなるがな」


「仕方が無いんですよ、あれしか思いつきませんでした」


「まぁいいけどよ、それより俺の役目って意味あったのか」


「勿論ありますよ、早く動くためには詠唱が長くなるので失敗する可能性があったんです」


「そうか、まぁ成功したから文句は言わんがな」


 本当はスラーミーアヒが口を開けなければそのまま諦めるつもりだった。そうなった場合は嫌でもエルマーが戦うだろうと考えただけだ。


(この事は黙っておこう)


 

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