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その二 本当に異世界なのか

 目が覚めた場所の奥にはいくつもの寝室やテーブルが綺麗に並べられている部屋があり、扉の入口に置かれた食事を運んでその部屋で食事をしていると、部屋の端で主任である今村康夫と中尾光男がこの状況について二人だけで話合っている。


「あの話は本当だと思うか」


「どうだろうな、元の世界に戻る為の条件が魔王を退治する事もそうだがそもそもここが俺達とは違う世界だなんて信じられるかよ、やはり誘拐されたんじゃないか」


「やはりそうだよな、ただもっと情報が欲しいよな」


「奴の言葉通りだと十日を過ぎれば此処から出れるそうじゃないか、それまでは大人しくしておいた方が安全かも知れないな」


 姿を見せずにこの状況を説明したのはプレイス法王なのだが、決して自らが召喚したとは言わずにただ神からのお告げがあり森の中から救出しただけだと嘘をついている。


 そして彼等には特別な力が与えられ、三大魔王を倒す事が使命でありそれが達成すれば元の世界で元の時間に戻るであろうと説明をした。


 違う世界・魔王・神などと立て続けに話してくるので途中で文句を言う者がいたので話が中々進まなかったので全ての話が終わる迄かなりの時間がかかってしまった。


 プレイス法王はそれでも懇切丁寧に優しく話していたが、彼等に見えていないのを良い事にその表情は苦々しい表情をしていた。



 ◇◇◇



 王の間では国王と法王だけの密談が行われている。


「法王よ、あんな連中が本当に戦力になるんだろうな」


「国王様、それは間違いございません。今もあれだけの高濃度の魔素を恐ろしい程の速さで吸収しておりますので」


「それならいいが、それよりさっきの話は何なんだ、腕輪を嵌めているんだから無理やり従わせればいいじゃないか、それとも命の火に何か問題でもあるのか」


「そうではありません。ただ無理やり従わせるよりも希望を与える事でよいよい戦力になるからです」


 法王は自信ありげに答えたが国王はその言葉を全て信じる事は出来ずに納得出来ないでいる。


「儂にはどうみても積極的に動く連中には見えないんだがな」


「そうなったら傀儡にすればいいだけです」


 いよいよ十日目の朝になるとけたたましい音楽と共に白髪の老人である法王が彼等の前に姿を現した。


「皆さま体調はどうでしょうか実は先程結界を解除しておりますのでまだ対応出来ていなくて体調が優れない方がおられたら仰ってください」


 好々爺のようなその姿に誰もが安堵し、不安な気持ちを抱えて過ごしていた彼等に少しだけ暖かい光が灯ったようだが平井道人だけは余計に警戒心を強くした。


(何でこいつらは油断してるんだ。どう見ても如何にもな奴じゃないか、これで俺に力が無いとすると殺されるんじゃないか)


「特に問題は無いようですね、私がこの中で責任者となりました今村康夫と言いますが、貴方が国王様なのでしょうか」


(国王が一人で来る訳ねぇだろうが、こいつは仕事以外はまるで駄目な奴だな、まぁ俺が出しゃばる訳にはいかないがな)


 この十日の間に今村康夫がこの中でリーダーとなり、副リーダーとして中村光男となっている。


 この先に上司である所長や課長が彼等と合流した場合はリーダーを退くと宣言したので誰も不平不満を言う者はいなかった。


 ただ、心の中で平井だけが言葉に出来ないような文句を言い続けていた。


「私はこの国の国王ではなく呼称は法王です。そうは言ってただの老人ですので気になさらないで下さい。それよりも先日お話しした身体検査を早速行いたいのですがよろしでしょうか」


「申し訳ないですけどその前にこの腕輪を外してくれないですか、どうなっているのか知らないけど外せないんでね」


「う~ん、難しいですね、前にも言いましたがその腕輪があるおかげでこうやって会話が出来ますし、この世界の環境で生きる事が出来るのです。それに一度外すと暫くは付ける事が出来ませんのでその時間に命を落とす可能性がありますがそれでもよろしいでしょうか」


 その言葉に本当に外してしまっていいのか誰も判断が出来ずに黙り込んでいる。


(おいっ誰でもいいから外しちまえよ、そうしないと分からないだろうが)


 平井は言葉巧みに誰かをそそのかして腕輪を外して貰うように持ち掛けたかったが、平井の言葉など誰も聞かないと言う事はよく理解しているので言葉に出す事は出来なかった。


 今村と中村は外させないために何か言ってくるだろうと思っていたのでこの反応は想定内だったので直ぐに質問をぶつける。


「そんな機能の腕輪はどうやって作っているんですか」


「そうですな、貴方方の世界と違うので説明が難しいのですが、そもそもこの腕輪を考案したのは昔にやって来た別の世界の勇者だと聞いております」


 この質問が来る事は盗み聞きで分かっていたので、それに対する嘘もちゃんと法王は準備していたので淀みなく答える事が出来た。


 そして、此処にやってくる異世界人は全て神から選ばれた人物であると説明をした後で、中には悪行をした事によって神によって処分された者もいると告げた。


「そうですか……」


「どうやら全ての話が嘘だと思っている方達もいるようですね、それではほんの障りではありますがこの世界をご覧ください。


 法王は杖を前に持って何かを呟くと、目の前で数々の魔法を繰り広げた。


 最初は映像かマジックでは無いかと疑う者もいたが、実際に触れる事が出来たのでどう考えても現実でしか無いと認めるしか無かった。


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