第二十三話 ゴブリン討伐終了
エルマーとラウルスの姿を見ると俺だけでなく先程まで怯えていた人達も安堵の表情へと変わっていく。
「おいっあの光っている鳥はお前の仕業だよな」
「ええ、ただの遊びのような物ですが」
「それとだな、あの音がしたって事はゴブリンがいたのか」
ゴブリンの死体は既に魔石へと変わっているのだが、米粒みたいな魔石など気が付く訳も無いし探す気にもなれない。
「ちょっといいですか」
誰もが聞き耳を立てている場所でまだゴブリンがいるとは言えないので少し離れた場所で三人だけで小声で話す事にした。
「隠れているのか」
「寝ているとは思えないですからね」
「何にせよ生かしては置けないな、ユウ、場所は分かるんだろ」
「大丈夫です。はっきりと分かります」
今度はラウルスが護衛をする事になり、俺の案内で集落の外れにあるその場所に向かって行った。
その場所にはしっかりとした小屋があるのだが何だか異様な気配が漂ってくる。
「随分とくせぇな、本当にあの中にいるのか」
「間違いは無いです。ずっとゴブリンの魔力を感じていましたから」
小屋に近づくと匂いが強烈になって来たのでこの辺りの匂いを飛ばす為に扇風機の弱でしかないが風を流して匂いを和らげる。
いい感じで匂いが消えてくれたが、エルマーが頭を叩いて来て小声で怒ってくる。
「お前な、匂い位我慢しろよ、それになこんなちょっとの風の割には嵐みたいな音を出すなよな、中に気づかれるだろ」
「すみません、俺の魔法はどうも音がなる様なんで」
これだけ騒がしくしたのに中から飛び出ては来ず、俺がゆっくりと扉に手を掛け開けるとエルマーが飛び込みそうになったが、その入り口で顔を歪めたまま立ち止まった。
扉から手を放しエルマーの肩越しに部屋の中を覗くと窓も無い暗い小屋の中に小さなゴブリンが床に這いつくばって蠢いている。
「何ですかあれは……あっ」
最初は暗くて分からなかったが徐々に見えるようになり、その部屋の中にいたのはまだ幼いゴブリンだと言う事が分かった。
人間で言うと幼稚園児ぐらいの大きさで、顔や体は大人のゴブリンと違って張りがある。小綺麗な恰好をさせたら遠目で見たら人間の子供だと誤解してしまうだろう。
「……こいつら、何をさっきから食っているんだ」
「あぁ動物のように食べているんですね、それでどうしますか」
「どうするだと、お前、もしかして見逃すと言うんじゃねぇだろうな、もしそうなら……消えろ」
「そんな事は思いませんよ、ただ生け捕りにするのかどうかを聞いただけです」
その言葉は本心だ。ただこの里には知性を持つゴブリンがいたのでこの中にもそのように成長する可能性があるのかどうか調べるのか聞いただけだ。
ゴブリンは単体では弱いにも関わらず、その異常なまでの本能で他の種族を全て敵に回している様な存在だ。人間以外からも殺されているのに絶滅しないのは異常なまでの繁殖力のせいだと言われている。
(種族が違っても子供をはらませる事が出来るからな、勿論、あの人達もそのような目にあったんだろう……)
「お前の言いたい事は少しは分かるがな、ただなあいつらをよく見てみろ、俺はこいつらを一日も生かして置きたくない。よく見ればお前も分かるさ」
目を凝らしてよく見ると床はどす黒く何かで汚れていて十匹はいる子供のゴブリンは何かの固まりに覆いかぶさるように群がっている。
「……あれは、もしかして」
「だろうな、それなのにこんな幸せそうな顔をしている奴らを見過ごせないだろ」
その固まりは何体かあってよく見ると手や足の面影がある。
(もしかして、こいつらはその人達から生まれたのか……)
この惨たらしい想像が本当に合っているのか確かめようも無いが、どんなに可愛らしい顔をしている子供のゴブリンも今は汚らわしい害虫にしか見えない。
「俺が殺しても良いですか」
「一匹も逃がすなよ」
「そんな暇すら与えないですよ」
杖で円を描いた中に無数の針のような雷が現れた。バチバチと激しい音が鳴っているのに此方をまるで気にしないで未だに死体を貪り食っている。
「苦しんで死んでくれ……雷針」
小さな雷の針が子供のゴブリンに突き刺さるが、あえて心臓や顔は避けて突き刺している。いきなり全身に広がる痛みに全ての幼いゴブリンがのたうち回った後でその身を内側から焼いていった。
「えげつないな」
「こんなのを見ちゃいましたからね」
「そうだな……なぁお前はいつ詠唱をしてるんだ? それにその魔法は何だ?」
(そんなに詠唱が気になるのか)
「詠唱は音に出してないだけです。それにこの魔法はエルフ独自なので特殊かも知れません」
そもそもこの魔法は俺のイメージだし、名前はイメージを固めるために勝手に付けたものだ。エルフ達は同じ魔法を使っているように見えても実はそれぞれ微妙に違っている。
(同じ効果を出す為に詠唱があるのかな? まぁ知らないけど)
その後でエルマーは人間の死体だけが残った小屋を燃やした。




