第二十一話 集落の中で
二人に向かって走りながら目の前に杖で円を描くとその中に無数の雷の針が出現してくる。
「行けっ雷針」
ババババババババババババババババ
細かい破裂音が鳴り響き、二人に群がっているゴブリンの背後に突き刺さり内部からその身体を燃やしていく。
(うわっちょっとグロいな)
二人も残っているゴブリンを切り伏せようやくつかの間の静寂が訪れた。
「何でお前が此処にいるんだ」
「魔法使いは後方に居ないと駄目じゃないか」
かなり疲れているのか息を荒げながら言ってくるが俺はそっと人差し指を空に向かって掲げて見せた。
「あと少しで夕方じゃないですか、遠距離から正確に狙うのは難しくなるんですよ」
「そうか、ただな、まだいるようだから油断はするな」
「嫌になるけどまた湧いてきたね、さぁやりますか」
ラウルスが指摘した通りに視界の端にある小屋の影から再び多くのゴブリンが姿を見せて来た。
「此処は任せて下さい。やってやりますよ……雷撃」
僅か数m先に【雷撃】を落としたことは初めての事で、余りの音の衝撃の為に自分の生み出した魔法なのに思わず耳を塞いでしゃがみこんでしまう。
「お前さ、もしかして近くに落としたのは初めてなのか」
「ここまで近いのは初めてですね、それに何だか音も大きくなっているような、ははっ」
俺が正直に告げるとエルマーのこめかみに浮かぶ血管がピクピクと動いている。
「ああいうもんかと思って我慢したけどよ、いいか音だけじゃねぇんだぞ、俺もラウルスも多少なりとも火傷をしてるんだからな」
「あっそうなんですか、すみません。直ぐに回復薬を渡しますんで」
結構使い勝手のいいサポート魔法として重宝出来るかと思っていたが、少し見直さなくてはいけないのかも知れない。
「薬は終わってからでいいよ、それより全ての小屋の中を調べるからね」
三人で小屋の中を調べ行くと、中にはまだ隠れているゴブリンがいるだけで捕らえられた人達の姿が見当たらない。
ゴブリン達は俺が魔法を唱えるより早くエルマーかラウルスによって斬り殺されるので魔法の出番は全く無かった。
「あっちから人間の声が聞こえるぞ」
エルマーには微かな声が聞こえたらしくいきなり走り出していく。その悲痛な声は直ぐに俺やラウルスの耳にも届いた。
(こいつら何をしてやがるんだ)
その小屋の中には捕らえられた人達が後ろ手に縄で縛られて、口には汚らしい布で塞がれている。
そしてボロ布で顔を隠した三体のゴブリンが小さな子供を抱えながら首元に刃物を押し付けていた。
「ゴブリンが人質を取るだと……」
「君の魔法で三体同時に殺せるかい」
「子供の鼓膜が心配ですがやるしか無いですよね」
なるべく小さな【雷銃】でゴブリンの頭を吹き飛ばすしか無いので背中で隠すように弾を出現させると中央のゴブリンが口を開いてきた。
「お前ら動くじゃ、じょず杖をずてろ」
予想外の事に折角作成した弾は霧散してしまった。
「エルマーさん、あのゴブリンが言葉を話してますよ」
「上位種になると言葉を理解する個体もいるとは聞いていたがまさか話せるとは知らなかったな」
「じゃまれ、おまんらの武器をばたせ」
腕輪を装着すればもっと綺麗に言葉を理解出来ると思うが、発音が悪いせいで頭に中で変な風に変換されてしまう。
「ぐぎゃぎゃ」
もう二体のゴブリンは知恵が低いようで人質にしていた子供を壁に投げつけて、石斧を構えながらゆっくりと迫って来る。
「今なら余裕ですが、どうしますか」
「あいつは言葉……構わんやれっ」
「行きます、雷瞬」
床板を壊しながら一気に中央のゴブリンに近づき、視線が俺に向いていないゴブリンに対して杖の先端をそのゴブリンの額に埋め込んだ。
振り返るとエルマーとラウルスもゴブリンの首を切り落とす状態になっているので【雷瞬】を解除する。
死体となったゴブリンをそのままに捕らえられていた人達を解放すると安堵したのか震えながら泣き始めた。
ただ一人の若い女性は髪を振り乱しながらゴブリンの死体を蹴り続けた。
「くそっくそっ、人間のくせにゴブリンの味方をしやがって」
「「「えっ」」」
思わずその言葉を聞いて俺達は固まってしまったが、直ぐに我に返ったエルマーがその女性の肩に手を置きながら質問をする。
「もしかしてこいつらは人間なのか」
「あぁそうだよ、顔を隠している布を取ってごらんよ」
ラウルスが器用にボロ布だけ切り裂くと、その顔は垢だらけで歪んだ顔をしていたが紛れもなくゴブリンではなく人間だった。
「エルマー確かにこいつらは人間だぞ、だけど俺はゴブリンの気配にしか感じなかっただ」
「あぁそれは俺もだ。よく分からんがこの事は報告しないとな、まさかここまで人間がゴブリンと同じようになるとは思わなかった」
「こいつらはね、人間だけじゃなくてゴブリンも食っていたんだよ、あっそうだこいつらより流暢に言葉を話すゴブリンは森の中に逃げて行ったんだ」
「上位種か」
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