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第二十話 ゴブリン討伐

 エルマーはラウルスの話を聞き終えると苦いものを口の中に入れたような表情になりながら直ぐに馬に跨った。


「もう行くぞ、いいか、ここからだとサバスの街が一番近いからそこに向かう。分かったか」


「ちょっと待てよ、奴らの集落までは一時間もかかるし、サバスならどんなに急いでも半日は掛かるんだぜ、その間にあの人達がどうなるのか想像つかないのか」


 いつもは講師として丁寧に言葉を話していたラウルスだったが、この状況になるとすっかりと冒険者に戻っている。


 ただそれはラウルスだけではなく、エルマーも同様だった。


「馬鹿野郎、こっちは一人殺されたんだぞ、足手まといのこいつらを連れてどうしようって言うんだ。それに二人だけだとしても無理だろうが、いいかこっちはそんな装備は持ってねぇんだよ」


「あの、ゴブリン程度なら俺も戦力として数えて欲しいんですけど」


 ラウルスは味方をしてくれるかと思ったが、予想に反してエルマーより先に怒鳴って来た。


「お前ぇなぁ、こっちは二人なんだぞ、お前が詠唱を唱えている間を守ってやる人間はいねぇんだよ」


「怒鳴んなくてもいいでしょうが、それに俺を守らなくても良いですよ、そもそも俺がいつ詠唱をしましたか?あぁもうこれならどうですか」


 これ以上話しても無意味なので【雷銃】の玉と同じような物を飛ばすのではなく空にスーっと浮かべていく。


 これ自体には威力は無いので近づかなければ音は何も聞こえない。


「行きます……雷撃」


 爆発したような破裂音が空一杯に広がり、細かく分裂した雷が地上へと降り注いだ。


 耳を塞ぐ事も忘れたエルマーが目を見開きながら俺の方を振り向く。


「お前、詠唱無しであれが出来るのか」


「えぇ、それに視界で捉えればある程度狙い撃ちをする事も出来ます。ただ前に見せた魔法より分裂しているので威力はかなり落ちますがゴブリンなら暫くまともに動けないでしょうね」


「まだ出せるから今見せたんだよな」


「勿論ですよ、これぐらいじゃ魔力は減りません」


「ラウルス、どうするやってみるか」


「いいんじゃないですか」


 エルマーは直ぐに決断し街に戻るのはジールをリーダーとした新人達だけで、俺達三人はこのままゴブリンの集落に向けて走り出す。


 ジールは討伐に参加したかったようだが、残りの三人だけだと街までの道のりが心配なのでエルマーは同行を許さなかった。



 ◇◇◇



 森の中を走りながらエルマーは作戦を伝えてきたので緊張と共にどんどん冷静になって行く。


 俺は怒りのままゴブリン討伐を志願したので、陽が落ちて夜になる事を考えていなかった。ゴブリンの集落が明るければ狙いをつける事など容易だが、もし完全な暗闇なら【雷撃】を勘で落とさなくてはいけなくなる。


(まいったな、いまさら後には引けないしな)


 ラウルスが集落を見渡す為に見つけた場所は集落が半分程度は見渡せるようになっている。ここから更に上に登れば集落全体を見渡せるようだが身を隠す物が無い為に下から見上げたら直ぐに見つかってしまうだろう。


「それじゃあ合図を送ったら上に登ってやってみろ」


「分かりました。それまで待っています」


 エルマー達が突入をしやすい場所に移動するまで待っていると集落の方からは耳障りなゴブリンの声が聞こえてくるが、人間の声は全く聞こえてこない。


(まだかな、もうすぐ夕方になるぞ、早くしてくれよ)


 身を潜め激しく高鳴っている鼓動を必死に押さえていると、俺の近くに合図である石が投げ込まれてきた。


 直ぐに斜面を登っていくと、緊張の為か何度か足を滑らせてしまうがものの数分で目的の場所に到着する。


(ここは全部が見渡せるな)


「ゴブリン共め、覚悟しろよ」


 何体いたとしてもいいようにいつもより大きい玉を上空に浮かべていく。音はしなくとも光輝いているので下から見たら簡単に見つかってしまうがゴブリンにはその意味が分からないだろう。


「さて、先ずはおびき出すかな、雷銃」


 集落の中にある一番高い木に向かって【雷銃】を当てると、轟音と共にゆっくりとその木が小屋を巻き込みながら倒れていく。


(不味いかな、あの中に人間がいないでくれよ)


 直ぐにつぶれた小屋に向かって他の小屋の中にいたゴブリンが続々と集まって来た。


(全部じゃないよな、50、60しかいないけどやるしかないか、雷撃)


 山が震えるほどの音が鳴り響き、視界にとらえたゴブリンの頭上に墜ちていく。他の小屋には当てないようにしているが、中には集落の中の木に当りそれらを燃やして行った。


 鳴り響ていた音が消えると同時にエルマーとラウルスが集落の中に忍び込み、小屋の中を一つずつ確認しているのが見える。


「何だよ、やっぱり隠れていたのか」


 何処の世界でも危機管理が遅い奴らがいるらしく、今頃になってわらわらとゴブリンが出てきている。


 エルマー達も見つかってしまい交戦状態となってしまった。


「こんなにいたのかよ、これだけで100はいるじゃないか……雷撃」


 もう一度【雷撃】を落とすが、エルマー達に当たらないように気を使っているのでまだまだ動けるゴブリンが多くいる。


(これ以上此処にいるより下だな)


 転がるように斜面を駆け下りながら走るとエルマー達の声が聞こえて来た。


「弱いくせに数だけはいるじゃねぇか」


「そうですね、俺が見た時よりもいますね」


「これはかなり不味いな、諦めるか」


 二人が撤退も考え始めた時にようやくユウが集落に到着した。 

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