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第十六話 訓練開始

 ギルドが主催の初級訓練に参加する為に三階の一室に待たされているが、その中にいる参加者はどうみても十代であろう若者しかいない。


(そういえばこっちに来てから二年は過ぎているんだよな、となると俺は23か、下手すると10ぐらい離れている子がいるんじゃないのか)


 当たり前の事だが彼等の中に入って会話するような事は無く、ただ窓の外を眺めているとようやく講師であろう冒険者風情の男達が入って来た。


「さぁもう静かにするんだ。最初に講習料を納めてくれ」


 五日間の集中訓練で金貨一枚もするのでこのかなりの高額だが実はこの訓練に合格すると半分が返金される事になる。


 実質は大銀貨5枚となるののだが、オークの魔石でも足りない俺はオルガに借金をして此処に参加をしている。


 金貨一枚など最初の階級であるF級にとってはかなり厳しい額ではあるが、合格すればE級かD級に上がれるし、何よりも将来有望の冒険者から丁寧な指導を受けられることが上を目指している者達には魅力的な訓練だそうだ。


 自己紹介が始まると、やはり俺のような20代はいなく、12歳と14歳と17歳が一人ずついて、15歳が二人いた。


 俺が23歳であると告げると講師の二人は微妙な顔になり、参加者は誰もが目線を合わせてくれなかった。


「何だよこの雰囲気は、いいかい、俺はずっとF級じゃなくてつい最近になって冒険者になったんだからな」


「大声を出さなくていいから」


「はい、すみません」


 滅多にいないらしいが、自分の力ではE級に上がれないのでこの初級訓練でE級以上の地位を狙う奴もいるそうだ。上がれたとしても人並に生活が出来るC級に上がれる奴は皆無らしいが。


(俺はそんな馬鹿な奴だと思われたのか)


「それでは次に俺達だな、俺はB級のエルマーでこいつがC級のラウルスだ。B級以上になる為には講師を何度かやらなくてはいけなくてな、お前らも上級者になりたいのであれば講師が出来る程にならんといけないぞ」


「「「はいっ」」」


 若い子達は小学校のように元気に返事をしたが、俺は別の事で頭が一杯だった。


(ドロフェイも講師をしたのか……あいつには無理だろ、感覚で生きているからな。

 オルガも講師をしたのか…………五日間じゃ心を開く前に終わったんだろうな)



 ◇◇◇



 街道を進むのではなく道なき草原を一台の馬車と六頭の馬で進んで行く。


 この世界は馬に乗れることが当たり前なのか俺以外の誰もが馬に乗り、俺はこの騎乗訓練には参加しないでラウルスの隣で座って眺めている。


「君は馬には乗っていないけどこれも訓練なんだぞ、ボーっとしてないでちゃんと周囲を警戒するんだ。いいか訓練だからって気を抜くんじゃないぞ」


「あっはいすみません」


「いいか今回はたまたま馬に乗れる者ばっかりだったが気にしなくていいんだからな、そもそも下位の階級の依頼に馬を使ってまで遠出する依頼なんかありはしないんだからな」


 馬車を操縦してくれているラウルスは年齢が近いせいか結構気を使って話してくれるのが分かる。


 見た目も優しそうな男なので本当に冒険者なのかと疑う気持ちもあったが、丘を乗り越えようとした途端に雰囲気が変わった。


「気合を入れ直せよ、ここからは討伐訓練が始まるぞ」


 エルマーが皆に下馬を命じ、ただ一人だけで下を見渡せる場所にゆっくりと移動していく。


 ラウルスは緊張している新人に一人一人に声を掛けながら落ち着かせ、エルマーの合図を待っている。


(平地での狩りは初めてだな、此処ではどんな魔獣がいるのかな、あ~楽しみだ)


 エルマーからの合図が来たので身をかがめながら全員でゆっくりと近づいて行く。


「今日の獲物はあれだな、中々の大きさのリーフホーンだぞ」


「あれは魔獣じゃなくて獣ですよね」


 獣と魔獣の違いは身体に魔素を取り入れているかで、その影響か殆どの魔獣は好戦的になっている。逆に殆どの獣は温厚な生き物だ。


 100m先にいるリーフホーンは鹿のような角に牛の体格を持っているので立派と言えば立派なのだが最初の獲物にしては少々面白くない。


「見かけ以上に素早い動きをするからな、どうやって狩りをするのか、あいつらが移動する前にお前らで考えるんだ」


(考えるも何も、狙ってドンなんだけど)


 幸いにもリーフホーンは食事中なので動く気配がないが、俺達は円座になって話し合いが始まってしまった。


 リーフホーンは高さが2mを超えているので近づくのが怖いのか、主に使っている武器ではなくて馬車に積んである弓でまず最初に弱らせようという意見が多かった。


 ただ17歳のジールだけは速く近づいて手にしているランスで首を落とすなどと、美形男子には思えない強引なやり方を提案してくる。


「ユウはどう戦うんだ」


「俺には魔法が使えるのでここから狙いますね」


「そうだな、それがいいな……さて、冗談はさておき、現実をもっと真剣に話し合うぞ」


(俺は杖しか持っていないんだから魔法使いに決まっているじゃないか、どうして無視するかな)


 誰かが発言するとエルマーやマイルスの忠告が入るので時間ばかりが過ぎて行く、無駄に思える時間を過ごしているせいでお腹が一杯のなったのかいよいよリーフホーンが動き出した。


「あの、動き出しましたよ」


「慌てるな、この話し合いも大事なんだ」


「ラウルスさん、このまま行かすのは勿体ないので試しにユウにやらせてみませんか、失敗しても新人にフォローをさせて、それがダメでも俺が倒して見せますよ」


「お前なぁ、奴を食べたいんだろ」


「へへへっバレましたか、いい夕飯になりそうですよ」


「わかったよ、だが、奴の進行方向を塞いでからだ」


 こんな話をしている間にもリーフホーンは奥に行ってしまい、新人達のフォローは難しい状況になってしまった。




 

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