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第百十七話 最後の戦い

「なぁどうするよこれ? このまま殺しちゃっていいのか?」


 ザシャがつまらなそうに言ってくる。出来ればその通りにして欲しいがドロフェイはそれは我慢出来なかったようだ。


「俺がそいつをぶっ殺す……って言っても今更だよな」


 ドロフェイは美味しい所だけ奪う事は出来ないと諦めたようだ。


「まぁそうだな、そうだお前、ちょっと来い、いいものをやるよ」


 ザシャはイデアを踏みつけながら満面の笑みを俺に向けてくる。


「あの、俺だよね」


「お前に決まっているだろ、いいから早く来いよ」


 下手に断って暴れられたら面倒なので近づいて行くとザシャはイデアに手を翳し始め、イデアからザシャに向かって光の粒子が集まって来ている。


「えっと何をくれるのかな、まさかそれじゃないよね」


「これに決まっているだろ、有難く受け取れ」


「ちょっと待ってよ、それって魂とかじゃないのか、そんなのは勘弁して欲しいんだけど」


「ちげぇって、いいか、俺も色々と調べてよ。これはな勇者の力の源みたいなもんだな、まぁよ、そこにいる天性の勇者からは抜き取れねぇが、こいつが乗っ取れるぐらいだから作られた勇者なんだろ、だったらそれをお前にやるんだよ」


 作られた勇者? それはかりそめの勇者の事なんだよな……その源だと、どうして俺に。


「あのさ、それが本当だとしたら自分に入れたらもっと強くなるんじゃないのか」


「その通りだ。なるにはなるんだけどよ、俺は魔族だろ、こんなものを身体に入れちまったら3日と持たねぇで死んじまうさ」


「ぐっおい、それは本当の事か」


 ザシャと俺が話している内に傷口が塞がり始めたイデアがザシャの脚の下で叫ぶ。


「あれっまさかお前は知らなかったのかよ、馬鹿だねぇ、まぁよ今俺が抜き取ってやったから感謝しろよ」


「くそっ私は何の為に苦労してこの身体を手に入れたと思っているんだ。お前にやられて瀕死だったこいつの身体に……」


「見てたから知っているさ。俺がそいつの腹に穴を開けた時に影から入って命を繋ぎ止めたよな、何か企んでいると思ったから休戦を申し込んだんだぜ」


「嘘だっ私は自らの身体を消滅させてまであの瞬間に賭けたんだぞ、お前らオーガに見破られる訳がない」


「俺は魔王なんだよ、出来るに決まっているだろ」


 その瞬間にイデアはザシャの脚の下から抜け出しその手を上に掲げると訓練場の天井を吹き飛ばす。


「クソがっいいか俺はいつか悪魔族を立て直しお前らに復讐をするからな」

 

 翼も復元したイデアはそこから飛んで逃げ出そうとするが、ワミレスが吹き飛んでしまった天井の代わりに障壁を張って逃がさないようにする。


 イデアはそのまま加速して障壁を壊そうとしたがワミレスの障壁を壊す事が出来なかった。


「どうやら貴様は本当に力を失ったようだな、どうした早く壊して見たまえ」


「今の内だな、ほら受け取れよ」


「えっちょっと待って、心の準備が」


 俺の意見は無視されてザシャの掌に集まった光の粒子が身体の中に吸い込まれてくる。


「多少の力は失ったようだがこの身体はまだ俺の物なんだよ」


 直ぐ近くではワミレスが魔法でイデアに攻撃を仕掛け、ドロフェイが斬撃を飛ばしているが、イデアは逃げる事に専念しているので中々当たっていない。


「お前はよそ見してねぇで、取り込むことに集中しろ」


「あっはい」


 何でザシャに指導されているのか不思議だが俺の魔力に光の粒子が溶け込んで行くのが感じられた。


「おぉ良いじゃねぇか、もう戦えるんじゃねぇか」


 完全に溶け込んで行くのが分かると体の中から力が湧いて来る。まだ頭上に逃げ回っているイデアを見ると何だか簡単に捕まえられそうな気がしてきた。


「ちょっと行ってきます」


 感覚的には【雷瞬】に似た感じがしているのでそのままイデアに向かってジャンプすると次の瞬間いはイデアの身体にぶつかりイデアは障壁を突き抜け空高く上がって行き、俺は反動で地面に降り立った。


「何しているんすか先輩、逃がしてどうするんだよ」


「えっあっ悪い、雷銃」


 ゴーっという音と共に小さくなっていくイデアに向かって【雷銃】を放つと何時ものような雷の玉ではなくレーザーの様な光の束がイデアを貫いた。


 二つの身体に別れてしまったイデアが空から落ちてきてみんなが見上げている目の前に落ちてくる。


「くそっこんなはずじゃなかったのに。貴様も魔族のくせに人間の味方をしていいのか」


 上半身だけのイデアは血を吐きながらもまだ話せるようでザシャに対して文句を言っている。


「俺様は良いんだよ、だって魔王だからな、どこのどいつに文句を言われる筋合いがあるんだ、ほらっ言えよ」


「くっ」 


 イデアにとっては絶望的な状況なのにそれでもあきらめないのかズタボロの下半身の方ににじり寄っていく。


「お前がとどめを刺すんだ。早くしねぇとくっ付くぞ」

 

 ランスを肩に乗せドロフェイは言ってきた。


「そうだなその力で消滅させなさい」


 ワミレスは警戒を弱めていない様でイデアにまだ剣を向けている。


「こうなったら先輩が最後までやらないとね」


 エドは勝利を確信しているのか剣を鞘にしまい込んだ。


「分かったよ、雷銃」


「がっよせっ……」


 再び放つとイデアの存在は跡形もなく消え去った。


 

 ラストまで残り1話となりました。


新作の方も宜しくお願い致します。

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