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第百十九話 平井との再会

 王宮の城兵に名前を言うだけで俺とエドは謁見の間に案内されたが、オルガ達は一緒には行けず入口近くに部屋で待たされている。


 謁見の間にはこの世界の人間は誰一人としていなく、無表情の会社の人達は壁際に並んで立っていた。


 そして、わざとなのか平井はまだ姿を見せて来ない。


「小川先輩、大丈夫ですか?」


「………………」


 近寄って声を掛けるが返事もしなければ表情を変える事も無い。肩を揺すってもまるで人形だった。


「先輩、これは魔法の影響か何かでしょうね」


「だよな、戻せるのかな」


「原因がはっきりと分かれば対処出来るかも知れませんけど……やはりこれをしたのは平井さんですかね」


 そう思うと怒りで身体が震えきた。すると奥から平井と隣の営業所の名前は知らない男、そして第三王女であるエリシュカが眉をひそめながら入って来る。


「遅いじゃねぇか津崎、それに高岡も一緒だとは思わなかったな、まぁ何にせよ良かったじゃなぇか、なぁ北村」


「まさか外の世界にいきなり放り出されて生き残っているとはよほど運が良いんだな」


 その男の名前は北村だと分かったが、どうしてこの二人だけがこうやって会話が出来るのか。


「平井さん、小川さん達はどうしたんですか、まさか平井さんがやったんじゃないですよね」


「勘違いするなよ、いいかあいつらをこんな風に変えてしまったのはこの国の連中に決まっているだろ、信じるか信じないかは別にして話してやるよ、実はな……」


 平井の話はもしも本当だとしたら運命に翻弄された被害者でもあり、仲間を守れなかった悲しい男のように思えるがどこか全てが嘘くさく聞こえてしまう。


「それで国王達に復讐をしたんですね」


「あぁそうさ、あいつらは俺達をただの駒としか見ていなかったし人間扱いもしなかったからな、それにあいつらのせいで死んでしまった同僚達の復讐でもあるんだ……あぁそうか、お前らにも立ち会わせるべきだったよな、何処にいるのか分からなかったからなすまんな」


「君が謝る事じゃないさ、それに能力が低かったから俺達と同じ目に合わなくて済んだんだから幸せ者じゃないか」


 こっちの事情を全く知らなないくせにそんな風に言い切る北村に対して怒りが湧いて来るが、一先ずは我慢するしかない。


 しかしエドはその言葉に強く反応してしまった。


「そんな言い方ってありますか、こっちだって大変だったんだ、まるで呑気に暮らしていたみたいに言うなよ」


「悪いな、だがよお前らはあんな腕輪を付けないで自由に出来たんだろ、それだけで幸せなんだ。ただ俺達に比べて能力が低いからその点は苦労したのかも知れないがな」


(能力が低いか……確かに俺の魔法はどうしても克服する事が出来ない欠点があるし、エドだって同じように抗う事が出来ない欠点がある)


 俺は馬鹿にされたとしても認めるしかないと思ったがエドは更に怒りに満ちた表情になっているので優しく背中に手を置いた。


「北村、そいつらは俺の可愛い後輩なんだからよ、そこまで言わないでくれよ」


「あぁそうかい、だけどよ君も君も気が付いているだろうけどこいつらは俺達を見た途端に殺気をぶつけて来たんだぜ」


 二人の顔を見た瞬間に思わず殺気を出してしまったがその僅かな時間でもバレてしまったようだ。


「その事は申し訳なかったです。先輩達の様子が変なのはその時は平井さんのせいかもしれないと思ったので、申し訳ないです」


 決して本心では無いがここでこのまま喧嘩別れをする訳には行かないし。もし戦いになったとしたら選ばれた平井達に勝てるのか確証がない。


「知らないんじゃ仕方がねぇよ、その事は水に流してやるからお前らは俺の部下になるんだ。元の世界でも後輩だったから大差ないだろ、役職は好きなのを選んでいいからな」


 すると今まで二人の斜め後ろで黙って立っていた第三王女のエリシュカが声を張り上げた。


「何を勝手に馬鹿な事を言っているのですか、さっきから聞いていると嘘ばかりではありませんか、それに殺された父や母の死体は何処にあるのですか。兄上の仕業だとは言わないで下さいよ、あの人はそんな大それたこともそれに従う部下もいるはずなどないのですから」


 涙を流しながら詰め寄るエリシュカだったが平井はただ首を横に振り、北村はあざけるように笑いながら話始めた。


「おいおい、いきなりどうしたんだよ、今まではずっと大人しく従っていたじゃないか」


「それはあなた達に対抗出来る人が来るのを待っていたのです。同じ異世界人なら……」


「どういう事ですか平井さん、何処までが真実なのです」


「ん~そうだな、俺は殆ど嘘なんてついてねぇよ、全てはこの世界の連中が悪いんだ、まぁそうだな、ちょっと来い」



 ◇◇◇



 泣きわめくエリシュカに平井は何かを呟くといきなり黙りだす。その王女と共に平井について行くと途中でオルガ達も付いて来ることを許された。


「平井さん、第三王女に何をしたのですか」


「精神を安定させただけさ。それより黙って見てろよ津崎、面白い物が見れるぞ」


 無表情の二木に平井が顎だけで命令すると、二木は長い詠唱を唱え始めた。


 すると地面が波打ち、その中から大量の死体が浮かび上がってくる。


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