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第十二話 オーク討伐

 先に進んでいるクラウジーがオークの群れを発見し、その群れを見下ろせる場所で様子を伺うと俺の目に写ったのは想像をはるかに超えた現実のオークの姿だった。


 オークの顔には愛嬌と言うものはなく、微かに原型が豚なのだが醜悪な顔をしてその体躯は相撲取りの様に肥えている。


 身に着けているのは腰蓑しかなく知性の微塵も感じられない。


「なぁあれと対話は出来るのか?」


「対話~? もしかしてオークと話そうとか思っているの? あのねぇ私達と同じ二足歩行でも魔族になりきれなかった魔物何だから無理に決まっているでしょ」


 オルガが呆れたように言ってくるが、俺は森の中にいる魔獣やたまにゴブリンを見かけたことがある位だからそんな事を言われても分かる訳がない。


「結構いやがるな、さぁ早く討伐しちまおうぜ。お前のフォローは俺達がするから心配するな」


 ドロフェイもクラウジーも見て来たので杖を構えて魔法を唱えようとしたが、いきなり後頭部をオルガが叩いて来る。


「どうした。ユウにやらせるんだろ」


「あのね、こんな遠い場所からあんな連中を討伐して何の意味があるのよ」


「厳しいな」


 ボソッとクラウジーが呟いたがオルガはすました顔を俺に向けてくる。


「ドロフェイもユウも何も分かっていないね、いい、ユウはこれから冒険者としてやっていくんだよ。他の人間とパーティを組めばいいかも知れないけどそれは無理でしょ、私達だってずっと一緒じゃないんだよ」


 確かにオルガの言う通りでドロフェイも納得したようだが、聖獣様だけは俺に同情をしているようで哀れんだ目を向けてくる。


「あのさ、オルガの言いたい事も分かるんだけど、俺だよ、これ以上近づくのは厳しくないか」


「愚鈍なオークなんだよ、それにたかが三十体ぐらいしかいないじゃない。大丈夫だって、それが出来る位には鍛えて貰ったんでしょ」


(三十なんて数と戦うの何て初めてなんだけどな……駄目だなその目をすると何を言っても無駄だ)


 オルガの目は真剣そのもので、こうなってしまったオルガは決して自分の考えを曲げたりはしない。


 普段はかなり優しい女性になってくれていたのだが、こういう時はおばば様と同等の怖さがある。


「分かったよ、もう少し近づいてからなら魔法を使っても良いんだよな」


「なるべくあの剣で戦いなさいよ、あいつらは素手なんだから平気でしょ」


 深く深呼吸しながらゆっくりと歩きだし、身体の魔力を杖に集めるようにイメージすると杖に雷が纏いそれが【雷剣】となる。


 ジジジジジと音が出てしまうのが欠点なのだが、この剣は切れ味が鋭いと言うよりも対象物を焼き切る事が出来る。


「待て、三十じゃなくて三十六だ。奥にもいるからな」


「何でそんな事を言うのよ、馬鹿じゃないの」


 折角のクラウジーが言ってくれた有難い助言をオルガは気に食わなかったようだ。冷たい視線を向けられたクラウジーは頭を掻きながら視線を合わせないようにしている。


 そのまま近づいて行くと、自然界にはありえない音がしているので直ぐに手前のオークに見つかってしまう。


「がふっがふっ」


 威嚇するように声を荒げオークたちが近寄ってきた。


「心の準備がまだなんだけどな……雷瞬」


 身体の中に電気を走らせるイメージで強制的に身体能力を高めていく。もしこれが本当の電気やもしくは雷であったのならこんな効果がある訳無いが。魔法というのは元の世界の常識などあまり関係はない。


 一気にオークに近づきその太った身体に雷剣を当てるだけで何の抵抗もなく一刀両断していく。そして次々と手当たり次第振り回すだけで簡単に命を奪って行った。


(こいつらは何が起こったのか分かって無いだろうな、これでもう少し静かに移動出来たらいい魔法なんだけど)


 オルガの言う通り、愚鈍なオークはたったの数秒で何も抵抗できず半分以上が死んでいくと、奥にいたオークは我先にと四方八方に逃げ出した。


(バラバラにならないでくれよ、この中で追うのは苦手なんだって)


 体の動きが目で追えない程速くなるのは良いが、その分細かい動きをする事が出来ないので散らばってしまうと森の木々が俺の動きを緩めてしまう。


 それでも何頭ものオークを背中から突き刺したが、ここまでくると一体一体に距離が出来てくる。


(まだ時間は残っているけど仕方がないよな、解除するか)

 

 効果を解除した途端に一気に身体が重く感じるので、もう少しあのまま戦っていたら動けなくなっていた可能性がある。


(あっぶな、緊張のせいか感覚がずれているんだな、さてどうするか)


 額から滴り落ちる汗を手で振り落としながら深く息を整え大声を張り上げる。


「お~い、逃げるなよ~こっちで戦おうぜ~」


 言葉が通じるとは思えないが、完全に姿を見せたことで戻ってくるかも知れない。


(知性の無さに期待しているんだからな)


「ぎふっ、ごぶるるるるる」


 まともに姿が見えどう見ても弱々しい人間だと思ったのかオークは逃げる事を止め、怒りに満ちた赤い目を光らせながらその視線を全て俺に向けている。


(やはり馬鹿なんだな、まぁいいけど頼むから全部戻って来てくれよ)


 杖を元の形に戻し、身体の前で円を描くとその中に無数の小さな玉が出現する。


「来い来い来い来い……よしっ雷針」


 ズババババババババババババ


 杖を押し出すように前に出すと、小さな玉が細長く伸びて向かってくるオークに向かって破裂音を出しながら飛んで行った。


 只の細い針だったらオークのぶ厚い脂肪に阻まれてしまうだろうが、かなりの高温になっているのでその身体を簡単に貫いていった。


(これで何体だっけな? ……あと二体だよな、さて何処にいるんだ)


 見える範囲にはオークの姿が見えないので、この場に胡坐をして座り、目を瞑ってゆっくりと深呼吸する。


 こんな場所でやる行動では無いが、魔力を持った物を探すにはこの方法しか俺にはまだ出来ない。


「づぅわぁっ」


 直ぐに一体を発見したが、まさか直ぐ近くに倒れているオークが死んだ振りをしているとは思わず変な声を出してしまう。


「あっぶな、雷剣」


「ごぶぅわぁ」

 

 そのままの姿勢で杖をそのオークに向けて【雷剣】を頭に向かって伸ばすと、不気味な声を発しながら死んでくれた。


(死体の振りで油断を誘ったのか、それともやり過ごそうとしたのか、しんだら魔石に……まぁいいか、残り一体を探さないとオルガに何を言われるか分かんないぞ)


 再び目を瞑ってオークの魔力を探していく。



意外と長くなっちゃいました。

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