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また別の話

「旦那様、新製品の売れ行きは好調何ですがやはり例の武器を売って欲しいとの声が多いのでいかがいたしましょうか」


「う~ん、もう武器はいいかな、止めましたと張り紙を張っておくか」


「本当にいいのですか、確かに旦那様がお作りになる数々の製品はどれもかなりの売り上げを上げておりますが、武器もかなりの利益を生んでいます」


「利益率を考えて下さい。材料費が高いではありませんか。今更値上げもどうかと思いますよ」


「分かりました、それではこの話は終わりにいたします」


 振動ブレードも自動追尾矢も全て私が考えて作り出したが核となる材料が中々手に入らない。


 2級品や3級品でいいのなら量産できるがそれで店の価値を下げたくない。それよりも魔道具を利用して作ったコンロや洗濯機の方を売った方が儲かると睨んでいる。


 それに自分の作った武器でこの世界の恩人であるラムザを失ってしまった事も武器を作りたくなくなった原因の一つだ。


 田所修二(36)は元の世界では旅行代理店の人間で勇者転移の時に鉱山の前に飛ばされてしまった。


 そこで鉱石を採取していたドワーフ達に助けられこの世界に身体が順応するまでの期間を無事に過ごす事が出来た。


 鉱山長であったラムザは言葉が通じないのは記憶が失われているせいだと思い、見捨てる事が出来なかったので鍛冶場で働かせた。


 田所は直ぐに彼等を見て此処が普通の世界では無いと気が付いたが、どうする事も出来ないままそこで働きながら言葉と仕事を覚えていくとある日になり自分の手の中に想像した物が生まれてくる事を知った。


 人当たりがいい田所は言葉を完全に覚えると店で働く様になりながら魔道具と錬金術で生み出したものを組みあわせ次々と新たな武器を売り出していく。


 ラムザは大変に気に入って店の一角に田所専用の棚を設けて店の大看板となり順調に二年が過ぎていく。


 その間は何度も元の世界に残した妻や子供の事が頭から離れなかったが彼の耳にはどうしてこうなったか情報が一切入って来なかった。


 ラムザの店は他の武具店を圧倒し、一人勝ちの状況になってしまったので恨みを買い、あろうことか田所が作成したマシンガンを店の中で乱射されラムザを含む店の者は全て殺されてしまう。


 たまたま田所は得意先に武器の修理に行っていたのでこの事を知ったのは数時間後だった。



 ◇◇◇



「私は向うの店に行ってくるが、良い商品は入荷したのだろうね」


「極上な品が届いたそうです」


「そうだと良いがね、私はね色んな貴族ともっと繋がりが欲しいんだよ」


「まだ何かをお考えなんですね」


「あぁどうせなら楽に暮らしたいじゃないか」


 田所は笑いながら地下に入って行き秘密の通路を通ってこの店から少し離れた店に入って行った。


 この店では決してラムザは表には立つ事はないが有力者だけには田所がオーナーであると教えている。


 その店に入ると如何にも人相の悪い男が夜食を食べているところだった。


「ボスじゃありませんか、いってぇこんな時間にどうしたんです」


「君ねぇ、その言葉使いは頂けませんね、もしかしてまた盗賊の世界に戻るつもりなのですか」


「いえ、申し訳ねぇ……申し訳ございません」


「よろしい、これからは侯爵家とも繋がりが持てるのですよ、いいですか最低限の身だしなみと言葉遣いは身に付けて下さいね」


「かしこまりました」


 田所が一番力を入れている商売は若い女性や亜人を扱う奴隷商人をやっている。何も無い所から始めたのではなくこの場所を使って商売をしていた人間ともめたおかげで結果的にそのツール事奪う事が出来た。


「仕入れた商品はちゃんとさせているんでしょうな」


「それはぬかりがありません。はっきり言うとあっしら、いや私達よりも上等な食事をさせてありますし身なりも清潔にしてあります。私の部下には交わりたいなんて言う輩もいる位の好待遇です」


「そんな馬鹿な事を言う者は奴隷にしてあげなさい。まぁ高くは売れないでしょうけど……いいいですか奴隷に嫉妬して何かをするようでしたらその者は必ず殺しなさい。良いですね」


「かしこまりました。強く言い聞かせますので任せて下さい」


 田所は初めは自分が奴隷商をやるなどは思ってもいなかったし、前の持ち主の時に捕まえられていた奴隷は即座に開放してしまった。


 ただ帳簿や日記を読んでしまった時にどうしても抑えきれない感情に支配され奴隷商を営む事を決意し今に至っている。


 その時の感情は正解だった様で表の仕事の時以上に金と情報が集まり、元の世界で顧客だった未来商事の人間が六宝星であろうと目星もついている。


 だからと言って彼等に合流する気は全くなく、自分はこの世界で楽しく生きようと決めている。


「私は運が良いのかな、もし彼等みたいな能力があったのなら今頃は勇者と言う名の駒に過ぎなかったのだろう……んっそうだ、何で今迄気が付かなかったんだ。私みたいに弾かれて生きている者がいたとしたら絶対に見つけないと…………どれ程の価値があるのだろうかね」

  

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