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第九十三話 その結果

 ギルドの地下にある訓練場の中でロドロが正座をして項垂れている。アキムの説教は長い時間続いたせいかロドロは涙を浮かべて憔悴してしまっていた。


 ロドロが此処にいる経緯は庭に落とした【雷爆】と同時にアキムはバルコニーの上に登り、【雷銃】でロドロが逆方向を向いた瞬間に一気に近づいて気絶させると同時に伯爵を俺の方に向かって蹴り飛ばしたのだがアキムの姿は殆ど見えていない。


 伯爵は前しか向いていないので蹴れたのはロドロのせいかもしくは爆風の影響だと思っている事だろう。


 その後でアキムはロドロを担いで裏門に潜ませていた職員に渡してギルドの地下室にかくまっている。


 ロドロが将来有望されていた冒険者ならこの作戦は上手くいくはずも無いが、実際はD級の実力しかない男なので何が起きたのか全く分かっていない。気がついたら此処にいたという訳だ。


 アキムにあんな動きが出来るとは想像もしなかったが昔はS級に手が届きそうな冒険者だったらしい。


「あの~最後のあれはやり過ぎですよね」


「気にするなよ、あそこまでやったからこそこいつの死体が見つからない言い訳になるんだからな」


(そうなると俺が殺したことになるんだろうな)


 アキムも本当だったらこんな無茶な事はしたくなかったそうだが早く解決するにはあれが一番だと言ってきたが、どうも貴族に対する恨みが混じっている様なきがするがそれは気のせいだろうか。


「あの、それで妹のサチは見つかりましたでしょうか」


「まだだな、だけど街の出入りが制限されているんだからまだこの街の何処かにいる可能性が高いんじゃねぇか」


 奴隷商人の店や屋敷の中に忍び込んだ者達は見つける事が出来なかったのでもしかしたら別の貴族が絡んでいる可能性もあるがまだ何とも言えない状況だ。


 ロドロのすすり泣く声が訓練場に響く中に受付嬢のイレーナが飛び込んできた。


「ギルド長困ったことになりました。衛兵隊長が引き渡しを求めています」


「何だと、見抜いた奴がいたのか」


「そうではなくて彼の事です」



 ◇◇◇



「君のおかげで解決できたのに本当にすまんな、ただな両隣の屋敷にまで被害が及んだのが不味かったな」


「あの爆発は俺の魔法のせいじゃないって言ったじゃないですか、ロドロが何かしたのが原因だって言いましたよね」


「そうなんだが、あの方たちがそれでは納得しなくてな」


 詰所の中では縛られてはいないし牢屋の中でもないのだが小さな部屋の中で軟禁状態になっている。


 両隣の家の男爵はこの事を影の薄い領主に訴えてこの俺に対して損害賠償と俺を犯罪奴隷にしろと訴えている。


「証文があるんだから伯爵にも責任があるんじゃないですか」


「それなんだがあの家の当主は伯爵だろ、ルティス様が書いた証文は無効だと伯爵様がおっしゃってな」


「何だよそれ、助けてあげたのにさ」



 ◇◇◇



 その頃アキムはもうギルドでは解決が難しいと考えドワーフ族のザワンの所に行き全てを話して相談をしていた。


 話を聞くうちにオリハルコンが大量に加工する事が出来てずっと機嫌のよかったザワンは機嫌が悪くなり最後まで話を聞くとブチ切れてしまった。


 ザワンはドワーフ族のまとめ役をしていたので彼等を集めて意見を統一するとその足て領主の元に怒鳴り込みに行く。


 ドワーフ族の要求はこうである。


 1、証文は無効では無いので伯爵が全て責任を持つ事。


 2、そもそもの事件がおかしいのでサチを解放する事。


 3、ユウを即刻解放する事。


 以上の要求が通らなければドワーフ族は撤退しダンジョンの近くに新たな村を建設するし、この街とは取引をしない。


 それに付け加えギルドも同じように新たな村に移ると宣言した。


 領主としては村が直ぐに作れるなどとは思っていないが、それでもドワーフ族やギルドがこの街から出て行ってしまったら直ぐに王都に伝わり責任を取らされてしまうと考えた。


 伯爵が裏で何をやっているのかは知っているし今迄は見返りがあったので見過ごしていたが今回もそれをやってしまうと被害が自分の方にまで及んでしまうので早々に切り捨てる事にした。


 余計な事を言わないように直ぐに伯爵を処刑し、アドリアーノには命を助ける代わりにサチの居場所を吐かせるとアドリアーノが別名義で所有していた建物でサチは無事に発見された。


 だが領主はそこでは終わらなかった。賄賂を貰った事が発覚するのを恐れた領主は伯爵家にまつわるものを全て処刑し、ついでに訴えてきた貴族の罪すら背負わせてしまう事でその貴族を納得させた。

 

 奴隷商の一味は取り調べも牢屋にすら入る事なくその場で惨殺された。


 こんな強引な方法しか考えない領主がこの先も無事で生きられることはなく、数年後に女王の命により処刑されることになる。


 そんな中で今更ロドロが生きているとはアキムは言えなかったので権力を最大限使ってロドロを別人として冒険者登録させて移動制限が終わったら別の街で暮らさせる事にした。


 これが最大の事件であり、これ以降はささいな喧嘩しか起こらずに2ヶ月が過ぎるとようやく移動制限が解除される事になる。



 


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