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第九十話 事件の内容

 治安維持の為と言う散歩でも冒険者である俺達は入る事をためらった通称貴族占有地区の中に入って行く。


 別に入ってはいけないなどとは決まりは無いのだがもしも貴族に絡まれたりしたらろくな事にならないと知っている冒険者は決して近づく事すらない。


 その中は通りの脇には綺麗な花が飾られているし勿論道にゴミなど落ちている事は無い。


 先を走っている衛兵について行くとこの中でもかなりい大きい方だと思われる屋敷に近づき、その門の前では貴族の面々が野次馬をしている。


「皆さん申し訳ないですが入らせてください」


「何だね君はその言い方だと私等が邪魔だと言うのかね」


「そうよ私達は心配して集まっているのよ」


「おいっそんな連中をまた中に入れるのか」


 俺達に向けて侮蔑の視線を遠慮なく投げかけてくるのでやはり上流階級意識が強い連中なんだろう。


「けっそれだったら俺達は帰ろうぜ」


「あ~そうだな、だったら街の見回りでも行くとするか」


 馬鹿らしくなった冒険者は帰って行くので俺も一緒に行こうとしたが一人の衛兵は俺の肩をしっかりと掴んで放してくれない。


「君は絶対に逃がさないからな、もしかしたら魔法が役に立つかもしれないんだ、さぁ中に入るぞ」


 そのまま門の中に連れていかれるが貴族達の嫌味はしっかりと聞こえてくる。


「あんなのが魔法が使えるんですってよ、ふん、生意気よね」


「どうせ魔道具のおかげに決まっているだろ、まともな魔法が使える奴は国王軍に入るに決まっているからな」


「全く衛兵の数が少ないからいけないのよ、何処に行ったというのかしらね」


 貴族の会話が耳に入って来るので怒りで仕出かしてしまわない内に此処から離れたかったのだが、この屋敷の中で人質になっている貴族は病で寝込んでいる伯爵だそうなので出来る事があったら協力をして直ぐに出ようと思う。


 門からかなり離れた場所に屋敷が建てられていてその前には少人数の衛兵と10人程度の冒険者がいてその中にはゲルトも混じっていた。


 他に知り合いがいないのでゲルトに近づいて行く。


「何だい旦那も駆り出されたんですかい、まぁ今の状況じゃ何も出来ないと思うけどな」


「あのさぁもう旦那は良いだろ、いい加減普通で良いよ」


「それでいいならそうしようかね、それでお前さんは何処まで知っているんだい」


 俺が衛兵から聞いた話はゲルドにとっては目新しい情報ではなく逆にもっと詳しい事を教えてくれた。


 まず人質になっている伯爵だが伯爵なのに領地は無くてこの街の領主に寄生している。それに病などではなく衛兵がいなくなったことで仕事が増えてしまった為に仮病を使っているらしい。


 そして今衛兵と話している見るからに甘やかされて育っているデブの男は次期当主でもあるし、この事件のきっかけを作った張本人でもあった。


 事件はそのデブである次期当主のアドリアーノがメイドである娘に薬を飲まされ昏睡状態になった事が始まりで、アドリアーノが翌日になって目を覚ますと部屋の中に置いてあった宝石が盗まれていたと同時にそのメイドも姿を消してしまった。


 直ぐにそのメイドは捕まったのは宝石を持ち込んだ先の店主が身分不相応の宝石に疑問を持ったからだ。そしてそのメイドはそのまま犯罪奴隷として奴隷商人に引き渡されてしまった。


 そして伯爵を人質に取って立て籠っているのはそのメイドの兄で、ロドロ言い分は妹であるサチを手籠めにしようと襲ったのはアドリアーノで彼女はそれが嫌で抵抗して逃げただけだしそれに宝石なども家には持ち込んでいなかったそうだ。


 ちゃんとした証拠もなく家に上がり込んでサチを無理やり捕まえた事も怒っているし、もし本当にサチが何かしたとしても奴隷商人に売る事はありえないと主張している。


「妹の解放とちゃんとした捜査をしろって事だな、因みによ宝石商と奴隷商は仲間だぜ」


「何だそれ、怪しくないか」


「まぁそうだな、だけどよ領地無しの伯爵家なんて怪しい所にメイドとして働くなんざ世間知らずってもんだな」


 どちら側の話も目の前に証拠がある訳では無いが、アドリアーノの態度を見ていると真実は兄妹の方にあるとしか思えない。


 衛兵隊長は困ったような顔をしながら汗を拭いているが、彼もまた加担しているかも知れないと思うと二人をみる目に力が入っていく。


「その目は止めるんだな、それになお前さんはまだ見たことも無い兄妹の証言を全て信じるのかい、もしかしたらあの豚が正しいかも知れないんだぜ」


「えっ違うのか、だってどう考えてもおかしいだろ」


「話の大元は間違っちゃいねぇよ、ただよ全てを信じるなって言っているんだ。おっどうやら動きだすぜ」


 あちこちにどよめきが巻き起こると、2階のバルコニーに短剣を突きつけられた伯爵と目が血走っているロドロが姿を現した。


(ゲルトは何かを知っているのか) 

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