第八十八話 アキムとの会話
ゴルゴダの街に戻ってみると門番として立っている人物はどう見ても普通の衛兵とは思えない。
「あれっ何で奴が門番をしているんだい」
「おっさんの知り合いなのか、そうだよな道理でいかつい顔をしていると思ったぜ」
「旦那ぁ、その言葉を良く言えましたね、自分の顔を見たことがねぇんですかい」
「うるせぇよ、俺の方がマシだろうが」
ヘンリクとゲルドの無駄な争いを無視して門番をしている男にギルドカードを見せようとしたがそのまま入れと言われてしまう。
「確認はしないのか」
「知っている顔がいるから良いんだよ、それによこの魔道具の使い方を忘れちまったからどうでも良いんだ、いいから早く入れって」
他に並んでいる人がいないのにせかされたようにされて街の中に入るとそこは至っていつもと変わりがないように思えるし、どこか違っているようにも思える。
「こりゃ……まぁいいや早くギルド長の所に行った方が無難ですぜ」
◇◇◇
ギルド長に45層を攻略した事を告げたのだが意外とあっさりとした答えしか返ってこなかった。
ハルが書いた地図と転移魔道具になる魔石や普通の魔石をを渡すと直ぐに鑑定士を呼び数10分後には報酬を支払ってくれた。
「それでは私とヨモギは店に戻りますね、例の物は10日程かかるのでその頃に来て下さい」
「あぁ楽しみだよ、それじゃ出さないといけないな」
ヘンリクと共に部屋を出てギルドから借りた台車の上にどんどん鉱石を乗せて終わると直ぐにハルとヨモギが帰って行った。
「なぁ本当にいいのかよ、お前の取り分も俺に寄越すなんて馬鹿じゃねぇか」
「良いんだよ、それに盾には必要な量じゃないか」
分け前となるオリハルコンはそのまま武具を作って貰う事にしてヘンリクは盾を、ジールはランス、そして俺は籠手にして貰った。
杖にすればもっと性能のいい杖が出来るらしいがこの杖はおばば様から貰った特別な杖なので変更する事などありえない。
二人を見送った後で部屋に戻るとジールとゲルトは何故か不貞腐れている。
(何だか嫌な予感しかしないな)
「おぅ戻ったか、こいつらには伝えたんだけどよ、ちょっとやらなくてはいけない事があるんだ」
また違うダンジョンだとかを想像してしまったがギルド長の話はそれよりかはまだましな命令だった。
この街からかなりの数の衛兵が一時的にいなくなってっしまったのでその代わりを一部の冒険者がやると言う事だ。ただ残念だったのはこの期間は衛兵の仕事をしない冒険者であっても街の移動は禁止されてしまった事だ。
「ちょっと待てくれよ、俺はよこれが終わったらイレイガにある自分の家に帰りたいんだがそれも禁止されるってのか」
「お前が商人であったのなら良かったんだがな、それによお前はB級なんだから強制的に衛兵の代わりをしなくちゃならん」
「ひでぇ話だな、どうせ安く使われるんだろ」
「仕方が無ぇだろこの国の命令なんだからな、まぁ少ないだろうが日当はでるからそれで我慢するしかねぇよ、冒険者もギルドも王国に逆らえる訳ねぇからな」
てっきりギルドは国の支配から外れた独立組織だと勝手に認識していたがそれは誤解だったようだ。
他国とのギルドと繋がりがあるのでそう思っていたが、他国のギルドは兄弟会社のような関係でしかないらしい。
「ヘンリクとゲルトはこのまま配置場所に向かってくれ」
「こいつらはどうなるんだ」
「ちょっと訳ありでな、さぁ早く出て行けよ時間がねぇんだよ」
ヘンリクとゲルトを部屋から追い出すと頭を掻きながら椅子に深く腰をおろす、
「お前だけの報酬を渡さなきゃならんからな、本当に良くやってくれたよ」
「まさかここまで上手くいくとは予想外だったけどね、あの、世間話よりも情報を下さい」
「そうだな、いいかサムライはな此処から東に行ったアフガルの街いる。いや、そうとは違うな……まぁいい兎に角お前らは移動禁止が解けたらそこに向かえば分かるだろうよ」
あんな事をさせた訳だからもっとちゃんとした情報をくれるものだと信じていたのに騙された気分になってきた。
「何ですか結構曖昧ですよね、そんな情報であそこに行かせたなんて酷いじゃないですか」
「曖昧じゃねぇよ、いいか俺が言えるのはこれが限界なんだけどよ、お前が本当にサムライと同郷だったらアフガルに行けば必ず分かるだろうな」
何だか良いように丸め込まれた感じがするが、それでも訴えても良いとまで言ったその答えがそれなのだから良い情報だと信じたい。
「分かりましたよ行きますって…………あの、俺がこれを聞くにはおかしいと思うのは理解しているけどギルド長とはいえ冒険者の所在地を勝手に教えていいんですか」
「確かにそうよね、私達がサムライの命を狙うような奴だったら問題になるんじゃないの」
俺の正体に気が付いた者が探すとしたら居場所がバレるのは問題だし、ジールだって領主の娘なんだから簡単に話されたら困ってしまう。
「あのなぁお前らちゃんと話を聞いていたのか」
アキムは呆れた様な様子でテーブルの上に両足を乗せると馬鹿にしたような表情を見せ始めた。