第一話 異世界への旅立ち
よろしくお願いします。
一つの話で2000字前後で書いて行きますのでちょっとした時間で読めるようにしてあります。
11月が終わり、そろそろ年末に向け会社が慌ただしくなる前に二年に一度の二泊三日の社員旅行が始まろうとしている。
羽田空港に向けて大型バスが各営業所を回りながら社員を乗せていく事になりこのバスは三つの営業所が乗る事になる。
同じ会社でも営業所が違うと滅多に顔を合わせないので、合流するたびに挨拶合戦が始まっている。
「お~い友、まだ酒は残っているか~」
「大丈夫で~す。まだまだ余裕はありますよ、何本後ろに持って行きましょうか」
「そうだな、何でもいいから五本持ってきてくれ」
「了解で~す。義人、これを後ろに持って行ってくれ」
「イエッサー」
バスの先頭に座り、酒の管理を任されているのは入社三年目の次期エース候補の津崎友で、ビールを抱えて後ろに持って行ったのは入社一年目の高岡義人だ。
「ねぇ友君も一緒に飲もうよ、今年は新入社員が入っているんだからそんな雑用は任せればいいじゃない」
つまみを取りに来ながら誘いに来たのは入社五年目の小川春奈で、猫顔の綺麗系ではなくたぬき顔の可愛らしい女性だ。
津崎は入社してからずっと憧れているのだが、彼女はつい先日から同じ営業所の今村主任と付き合い出してしまった。
「俺は良いですよ、バスの中から飲んでしまったら飛行機の中で大変な事になりそう…………先輩、どうかしましたか?」
「ねぇあれは何かな」
今までは楽しそうにしていた春奈は、手にポテチの袋を持ったまま窓の外を指さした。
バスが走っている高速道路は高くなっていて真横は山しか見えないはずなのに、薄っすらと青く光る何かがバスと平行して動いている。
「えっもしかして、UFOじゃ……そんな訳ないですよね」
「ちょっとゴメン、知らせてくる」
春奈は此処で騒いではいけないような気がして今村主任の元に移動したが、その物体に気が付いたのは二人だけではなかった。
「おいおい、みんな、右側を見てみろよ」
「俺は酔っているのか」
「お客さ~ん、そんな大勢で片側に寄らないで下さい」
「あんたも横を見てみろよ、説明できるのか?」
このバスの中に乗っている乗客の三十三人はもうその光から目を離せなくなっている。
バスの運転手が横を見た途端に全てが光に包まれ、バスはガードレールを突き破って空に飛んで行く。
◇◇◇
ぺろぺろぺろぺろぺろ
(うっう~ん、何だかくすぐったいな)
違和感を感じて目を開けると、顔は狐のようだが身体が丸くふわふわした毛を身に纏った可愛らしい動物が胸に上に乗って顔を舐めまわしている。
「ちょっと、あはっ止めてくれよ、くすぐったいじゃないか、よしよし落ち着いてくれ、あれっ君はミックス犬でいいのかな?」
思わず見慣れない動物に関心を持ってしまったが、段々とこうなってしまった原因を思い出していく。
慌てて体を起こして周りを見渡すと、側には泉があり周りは木々に囲まれている場所だった。
(バスから投げ出されたのか、俺以外の皆は何処にいるんだ)
過呼吸の手前になりながらも必死に辺りを探すが、この狐もどき以外の生物は全く見つからない。
「誰かいますか~課長~所長~みんな~」
何度も声が枯れるまで叫ぶが全てはこの周りにある木々の静かさに吸い込まれてしまう。
(何だよここは、もしかして死後の世界なのか、そういやどこも痛くないしな)
この状況を打破するには目の前に広がっている森の中に入るしかないのだが、そんな勇気はこの俺には無い。
「く~ん、くんくん」
唯一の生物である狐もどきが首をかしげながら寄って来たので、不安な気持ちを抑えながら思わず抱きしめてしまう。
「あのさ、俺はどうしたらいいのかな」
「く~ん、くんくん」
「そうだよね、君も分からないよね、心配してくれてありがとね」
気を落ち着かせて服やズボンを探ると財布とスマホを発見した。
(んっ現実なのか、まぁいい、これで助けを呼ばないと…………どうしてだよ、電波がないのか)
中を見る事は出来るのだが、電話を掛ける事も出来ないしネットにも繋がらない。
ディスプレイの時間だと多分あれから数時間しか経っていないらしいが、それが正確なのかは判断する事が出来ない。
(もしこの時間が正確ならもっと暗くなっているはずだし、それに外なのに暖かいじゃないか、もう11月だぞ)
ガサッガサガサ
ただスマホの画面を見つめていた時に、誰かが此方に向かって歩いてくる音が聞こえてきた。
「お~い、こっちは泉がありますよ、こっちに来て下さ~い…………えっ」
ようやく木々の中に歩いている人影を見たが、その姿は普通の人間だとは思えない。
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