004 お散歩。
< 歩行練習を頑張った次の日 >
「のぉ父上?」
「なんだー? コマ?」
「これではダメであろう?」
「何がだ?」
「コノハの美貌で可愛らしいワンピースに見えておったが
よく見ればあれは、オペ台の上の患者の衣装ではないか!
カスタマイズ中は仕方なくとも
今はこんなものではもったいなかろう???」
「そッ そうかッ!!!」
「そう思うのなら、早くせぬか!
余の時も指パッチンで出したじゃろうがっ!」
パチンッ!!! バサッ・・・
「これだな?(ニヤリ)」
「うむっ!(ニマ)」
「おーい! コノハ!
いい加減その恰好じゃつまらんだろう?
これ着てみないかー?
着てから仕上げをするから
まずは羽織ってみてくれー!」
wkwktktk x2
2人は閻魔コスを差し出て
興味津々な顔でうちを見つめてきた・・・
「へ・・・
それ、うちも着るん???」
「ふっふっふっw
遅くなってしまったが、嬉しかろうー♪
これは見た目だけではなく強度も着心地も最高最強じゃぞ?」
「コマちゃんそれ
次期大王様やから嫌々着てたんちゃうんや?」
「ん? ・・・・イヤイヤ?????」
「だって、そのコスプレ・・・
ちょっと、無理めにダサぃやん?
あ、でも、コマちゃんの可愛さで帳消しになってるっていうか
むしろギャップ萌えっていうか・・・?
あ、でも、おとんは元々似合ってるし
あれ? 2人には、なぜか似合ぉーてるなぁ???」
(( ガーーーーーン・・・ ))
「よ・・・余の妹は、言葉や動き方に加えて
ファッションセンスもアレなのか。
これは、今日も楽しめそうじゃなッ!!!」
「よし、衣装部屋へ行くぞッ!!!」
そんなこんなでうちは“衣裳部屋”へ連れていかれた。
「よし、コノハ。
この衣装ケースには無限に服がある!
適当に見て良さそうに思ったヤツに
いろいろ注文を足せば、それが形になって現れる。
デザインはもちろん、色・形・厚み・素材・機能・・・
とにかく注文を言えばそんなのが出てくる。
大体理想のが出来上がったらあとは試着して微調整して完成だ。
分かったか?」
「・・・ゎ、分かった。 30%くらい。」
「おねーちゃんに任せるが良い!
まずはおねーちゃんが見本を見せてやろう!
よーく見ておれ?
ん~ そうじゃな、まずは・・・
かわいい着ぐるみッ!」
コマちゃんがそういうと衣装ケースの中は
全部着ぐるみになった・・・
「ぅわぁぁあぁ・・・ ナニコレすごー?!
最初おとんが何ゆってるか
ちょっと意味わかんなかったけど
これ、めっちゃ便利なヤツちゃう???」
「はははw
これも600Hellz以上だからな。
下層、中層にはないぞー?」
「へーーー・・・(ぽかーん)」
「ん~・・・ 恐竜! ティラノじゃ!」
ズラー・・・
「あぁ、本格着ぐるみは却下じゃ。
着ぐるみ風のパーカーだけで
色は緑系にしてくれるかー?」
ズラー・・・・
「ふむ・・・この部分は黄色系が良いな。」
ズラー・・・
「ふむ・・・ もうちょっとお目々ぱっちり。」
ズラー・・・
「Oh~ なかなか♪
これも捨てがたいが・・・
こっちも・・・
コノハはどっちが好きじゃ?」
「えー そっちぃー?
コマちゃんならこっちちゃう?」
「・・・・・・。
うむっ! やはり余はこれにするとしよう。
(ピッ)
キャストォォーー オォォーフ!」
パサッ・・・
なんか普通にスルーされたみたいな気がするんやけど
コマちゃんは閻魔コスをなんかピピっとして
無駄にかっこよく脱ぎ捨てるすると
緑と黄色の恐竜の着ぐるみ風パーカーを
ケースから取り出して着替えた。
ちなみにスポーツブラやった。
ぶっかぶかやったのに着た途端シュシューンって感じで
サイズがピッタリになったあと
コマちゃんが手で生地を伸ばしたり縮めたりをすると
なんかそれっぽい形に変形されて・・・
とにかくなんかええ感じになってった。
「わぁ・・・ コマちゃん、めっちゃ可愛い♪
うちはこっちのん着て欲しかったけど、それもええなぁ?」
「ふむ!! 当然じゃ! やはり余が正義じゃッ!!!
とまぁ、こんな感じじゃ!
あと耐火耐水耐電撥水防汚加工じゃとか
潜水機能や雨よけ機能じゃとかは
全部付けておけば問題ないじゃろうが
まぁ、そう言った事は、後でよい。
好きな服を作ってみるが良いぞ?
もう分かるであろう??」
「ぬん!!」
(これ、絶対めっっちゃ楽しいヤツやんッ!!!!
あ、これ、声出さなあかん系やろか?
んーーー Tシャツー!!)
ズラー・・・
(わっ? この子は聞こえてるんや。
へー、賢いなぁ? ふふ♪
そやなー、まずは普段着用の、楽なんがええかなー?
じゃー・・・ブカブカで・・・
いつでも着れそな、白いのんがええかなー。)
ズラー・・・・
(下は、短パン? ショーパン? ってゆうんかな?
短いパンツ・・・ズボンってゆうた方がええ?
楽ちんなヤツ!)
ズラー・・・・
「思ったよりフツーじゃな?」 「上層テイストだが、まぁ、普通だな?」
(あっ・・・なるほど!
ジャージもええなぁ? 楽やし。
じゃ、この3つ目の短いジャージかわいいから
これ系の色違いをいっぱい見せて―。)
ズラララーーー
(ぅーゎ・・・ 悩むぅぅ・・・
でも、うん、下はこれかな?
えっと? ハーフパンツジャージ
メッシュ生地(水色)2本白ライン?っていうこれ。
あと・・・上なんやけど・・・)
ブカブカの白Tシャツとハーフパンツジャージをどうやらチョイスしたコノハ
その後しばらくTシャツの加工に熱中し始めた。
で・・・10分後に出来上がったのは・・・
「でっきたぁぁーーー♪
うーわ♪ 何これ?
ここまで思った通りの作れるとか凄い機械やなぁ?
どう? コマちゃん!
コマちゃんのも作って一緒に着ぃへん?
あ、コマちゃんの方はうちの着て欲しいなー♪」
「い、いや・・・
余は閻魔コスで良い。
あぁ、じゃが、予想外に可愛いし似合ってもおるぞ??
妙な気分ではあるが・・・(////)」
「いいじゃないかー! 似合ってるぞっ!!」
「せやろーーー? へへっ♪ 良かったぁ!
生まれてからずーーっと、変やー変やー言われたけど
これは大丈夫なんやなっ!
ま、変やったとしても気に入ったの着るんやけどなぁ~♪
閻魔コスとかちょっと無理やし!」
「お、おぅ・・・」
コノハが頑張って作ったTシャツは
かなりブカブカのスカスカだったからか
守護神として中に限りなく軽い素材で
短い丈のタンクトップが追加されていた。
片方の肩がずり落ちてもタンクトップの
鉄壁の守りがある安心設計だ。
そしてさらに前面には綺麗なプリントが追加されていて
白地のシャツの上に光の反射具合によって
青、緑、黄色とキラキラ変色しながら輝く素材で
あるデザインがされていた。
正面から見ると
右下よりに大きな星型の輪郭があり
星全体ではなく見切れた感じで星形に縁取りがされ
その中に・・・
アニメ調にデフォルメされたコマちゃんの顔があった。
しかも、見る角度を少し変えるとパラパラ漫画の様に
その表情が変わり・・・
コノハが動くとアニメ調コマちゃんが
星の輪郭の中でニコニコと楽しそうにウインクをする・・・
という、シロモノだった。
遠くからみるとひざ丈の薄い水色のジャージに
ダボめの白Tシャツで綺麗な虹色のプリントも綺麗だ。
ある文化を知らなければ
ちょっとだらしないかもしれないがマトモに見えるはず・・・
だが、見る人が見れば、これはアレだ・・・
“ アニメオタク ”・・・というヤツだ。
それを見たコマちゃんが
嬉しいような、悲しいような
止めたいような、そうでもないような・・・
複雑なテレ顔になったのは言うまでもないだろう。
「しかし、なぜ余の顔を変化させる必要が?
確かに見ていて楽しいが・・・服じゃぞ?
流石に着たいとは・・・」
「服でやるのは上層でも見た事ないかもしれんなぁ?
斬新だなっ! 」
「ふふーーん♪ ええやろー?
今日、これ着ててええの~?」
「ああ、もちろんっ!
丈夫で便利な加工をいろいろして仕上げをしてやるから
ちょっと待ってろー・・・(ピピッ)
よし、もういいぞー!」
「やったーっ!
これ、暇な時、他にもいーっぱい作って遊んでもええ?」
「ああ、構わんが、服屋でもするのか???」
「んーん? 靴とか帽子とか下着とかも拘りたいし
それに、毎日違ったの着たいやん?」
「ま、毎日着替える・・・じゃと??
めんどくさいヤツじゃのぉ?
余も父上も1年、いや、1000年?
とにかくずっとこれじゃぞ?」
「へ??? 汚ぁっ??? 大丈夫なん、それ???」
「馬っ鹿者ぉ!
ちゃんと常にピカピカじゃ!
コノハだって知っておろうが!」
「あ、あそっか・・・
そういえば、着たまま綺麗にしてたなぁ?
そんなもんなんや?」
「そんなもんじゃ。
まぁ、下層にはピカピカくん(←アナライザ)などないから
相変わらず洗濯をして、着替えも必要じゃが
600階層以上ならそんな面倒な風習は廃れておる。」
「ふーん・・・ つまんないね?
うちも上層より下層の方が好きかもやなぁ・・・。」
「ほほーぅ・・・
おぬしなかなか分かってきたではないかぁ?
下層はいいぞー? 実にシンプルで自由じゃ!」
「そうなんや!
でもなら、コマちゃんも毎日お着替えして
おしゃれしたらええのに・・・。」
「ん~・・・
それも、そうかもしれぬな?
父上がこうじゃから、それが当たり前じゃと
思い込んでおったのかもしれぬな?」
「お、おぉ・・・ なんかスマン。」
その後、コマちゃんは気分によって
色違いの閻魔コスを着るようになった・・・とさ。
◇ ◇ ◇
それから数日・・・
うちはコマちゃんの部屋で一緒に過ごしていた。
おとんとコマちゃんが部屋を改造してくれて
うちらのベッドをでっかくしてくれたり
壁の1つを丸ごと鏡にしてくれたり
衣装ケースを置いてくれたりして
動き方の練習や、衣装を作ったり、発声練習をしたり
うちの知らないピカピカくんとかの便利グッズの使い方を覚えたり
そんな事をしてたらあっという間に数日が過ぎてた。
コマちゃんはその何日かの間に何回も
例のドアの左から入って右から戻ってきていた。
で、うちにはその一瞬の時間が1分なのか、5年なのか?
めっちゃ気になる訳で・・・
「コマちゃん?コマちゃん?」
「ん? なんじゃコノハ?
たこ焼きでも食べたくなったのかぁ?」
「たこ焼き? は知らへんけど
コマちゃんってちょいちょい出てってるやん?
どこへ行ってるん?
どれくらい出かけてるん?」
「下層や深層じゃ!
気になるヤツもたくさんおるし
殺した方が良いヤツもおるから
バッサリ斬ったりもしておるぞー?」
「へ・・・?
人殺ししてくるん?!?!」
「まぁそうじゃな?
コノハの食べたしっぽの本体の方も、余が葬った。
その次は、中層で元気にやっておるはずじゃ。」
「ドユコト???」
「まぁ、外の事は、外で教えてやるから慌てるでない。
100回聞くより1回見た方が早いと言うであろう?
それに余は100回も言う趣味など持っておらぬからな。
長々と2、3回言う程度じゃ。」
「そか、 なんか難しそうやしなぁ。
あ、でも、コマちゃんって、全然年取らへんなぁ?
うちよりもいっぱい時間過ごしてるんやろ?
コマちゃんはずっとその可愛い姿のままなん?」
「とーぜんじゃ! 余は永遠に正義じゃからな!
次期閻魔大王でもある訳じゃし
きっと10万年とかの寿命設定なのではないかぁ?
調べてはおらぬがな?」
「へー・・・壮大やなー。
なんか、うちだけのんびりしてるってゆうか
ずっと、置いてけぼりってゆうか
なんか変な感じやな?」
「ふむ。 慌てても仕方ない事なのじゃが・・・
それに、コノハと過ごしておるここでの数日は
余にとって外で過ごす時間より濃い時間じゃぞ?」
「そうなんやっ!
それなんかちょっと嬉しーし♪」
「コノハは見ておるだけでwktkじゃからのぅ!
珍妙、ドジっ子、珍センス
綺麗可愛いと裏キュンが乗って、役満じゃ。」
「やくまん・・・??」
「ふむ・・・。
そろそろ、外へ行ってみるか?」
「へ・・・?」
それは唐突やった。
うゎぁ・・・
うち、ついにお外へっ!?
鬼とか龍とか魔物がいる・・・
あれ? それっ 大丈夫なん????
「父上ー?
そろそろコノハを外に出しても良いかー?」
「ああ、そういえばそうだな?
いいんじゃないかー?
数日見てたが、そのボディ想像以上に凄そうだし
特製チート服も着てるしな。」
「じゃろ? 余のキバすら通さぬのじゃ、最強じゃろう?」
「他の一般住民と違って死んじまったら
ちょっと面倒な事になるとは思うんだが
死ななきゃいいだけだから、大丈夫だろ。」
「うむ! それに、余もついて行くしなっ!
余がおれば万が一もあり得ぬっ!
うははははw 乙!」
「手始めに500階層あたりを1年くらい散歩してきたらどうだ?
相変わらずその辺の数値で落ち着いてるみたいだしな。」
「500か・・・
ならば483階層はどうじゃ?
丁度余も出かけようとしておったから
余の仕事ぶりを見るのも良かろうっ!」
「-17か・・・。
コマが一緒なら、まぁ、いいんじゃないか?
どうだー? コノハ?
483階層行ってみたいか?」
「龍とかバケモノとか、いるん? やっぱ?」
「町とか集落を作ってるのは大体人型じゃったと思うぞ?
野にはいろいろおかしな存在もおったはずじゃが
大きな龍とかはおらぬと思うぞ?」
「まぁ、自分の目で見てくるといい。
深層じゃあるまいし、そんな危なくもないしな。
とりあえずまずは外の世界に慣れてこい。
ネタバレもつまらんだろ?」
「ぬ・・・ぬん。
せやなっ!」
緊張でまたNがちょっと絡んじゃったけど
コマちゃんと一緒なら
不安よりも、ワクワクの方がちょっとおっきい
ってのが本心やった。
◇ ◇ ◇
「冒険者のカバンよーし。
走馬刀よーし。
よし! 準備万端じゃ!
行くぞ! コノハ!」
「え? も、もう?
うちめっちゃ普段着でサンダルやし
なんか持ってく物とか・・・」
「そのままで良いっ!
いる物があれば現地調達じゃ。
それが冒険の醍醐味というものじゃ!」
「大丈夫! 楽しんでこいっ!」
「な、なかった!」
という訳でいきなりやったけど
うちは初めて、例の左のドアをくぐる事になった・・・・
ガチャリ・・・
「じゃ、じゃぁ、おとん、行ってきま・・・」
ぐわわわわん・・・ ?!?!
へ? あれ? クラクラクラぁぁ・・・ ペシャン。
さぁ未知なる世界へ冒険やぁ~~~!
って思って飛び出した途端、うちはなぜかその場にへたり込んでいた・・・
「大丈夫かー? コノハ。
慣れるまで、階層酔いは仕方ないのじゃ。
まずここでしばらく休憩しながら
ゆっくり慣らすが良い。
この辺りは誰もおらぬし、美しく、安全な場所じゃ。
余もついておるし、何も心配はいらぬ。」
(あ、う、うん・・・・ 階層酔い・・・?
目の前真っ暗んなって、頭ぼーっとして
なんかいろんなのが入って・・・くる・・・)
「それがこの階層、483階層の現状じゃ。
コノハなら馴染めるはずじゃ。
今は少しびっくりかもしれぬが
落ち着いて、それを受け入れるが良い。」
(これを、受け入れる・・・?
で、でも・・・
なんかうちがうちじゃなくなっちゃうような・・・
大丈夫・・・かな?)
「それも、コノハじゃ。
483階層の現状でもあり、ここでのコノハの現状でもあるのじゃ。
怖くても、変でも、それはコノハの一部で、過去であり、未来じゃ。
最初は何日かかっても良いぞー?
余が隣でちゃんと見守っておるからなっ!
納得がいくまで抗っても良いし、なんなら諦めて帰っても良いし
無理をさせるつもりもない、納得の行く選択を自分でするのじゃ。
大丈夫、余がちゃんと付いておる。
それにこれも、そのうち楽しみの1つになるはずじゃ。」
(・・・ぅ、うん。 分かった。
た、楽しめる・・・かな? うち。
コマちゃんも初めての時はこうなったん?)
「そうじゃぞー?
余だけではなくここの住人全てな。
生まれるというのはそういうモノじゃ。
余たちは生まれるとはちょっと違うがのぉ?」
(そうなんや・・・) クラクラ・・・
「辛そうなら、少し、眠っても良いぞ。
胎児の様にただ浸かって
これを静かに感じてみるのも乙なものじゃしな?」
(う、うん・・・)
◇ ◇ ◇
目を閉じると、夢なんか、現実なんか・・・
よお分からへんくなって
イラっときたり、モヤっとしたり、チクっとしたり、怖くなったり・・・
なんかグチャグチャで・・・
ギュッ・・・
コマちゃんおねーちゃんが手を握ってくれた。
それも、もう夢なのか現実なのか分かんなかったけど
おねーちゃんと感じる イラっともモヤっとも
一緒なら、ちょっとだけ大丈夫になった。
◇ ◇ ◇
「くぅーーーー すぴーーーーー ガジッ!」
「のッ?!」
(ハッ?! えっと? ここ・・・ ッッ?!)
ザザーーーーーー・・・・ ザザザーーーーン・・・・
気が付くとそこは海岸やった。
目の前には水平線しかなくて
空と海の境目にオレンジの大きな太陽が半分隠れてた。
なんて・・・綺麗・・・・
ガジッ!!
「きゃんッ?!」
その痛みに腕を見ると、予想通りコマちゃんがうちの腕を捕食してた・・・
(もぉぉぉぉ! コマちゃんっ!?
うちの事心配して隣で見守ってたんちゃうのぉ??
めっちゃ寝てるやん?
てか、それ、けっこうマジ噛みで・・・(ガジジッ!!!))
「ぅ痛ぁあぁッ?!
こ・・・ このぉぉ・・・ のりゃ!!」
ブンッッ!!!! ポーーーーン・・・ドサッ。
「は?! 余のしっぽ・・・しっぽは・・・????」
「これはうちのお手々!! しっぽちゃうから!! アホーッ!!!」
「・・・おろ?!
Oh~♪
起きたか! 寝坊助!
コノハはいつも寝坊助じゃのぉー?
お腹が減っておるのではないかー?」
「寝坊助はコマちゃんやろ?!
てか、酷いやんッ?!
うちがしんどい思いしてる時に、うちの腕ガジガジしながら寝てるし!
またうちの腕、べちょべちょやんか!
大体! うちが歩く練習してた時だって
呑気に面白半分に笑ってたしッ!!
いっつもコマちゃんは!!」
「ぷふっw ぷははははっw
どうやら、よく馴染んだようじゃな?
いきなり余を投げ飛ばすとは、なかなかワイルドじゃなっ!!
良いぞ良いぞー!
野生のコノハも実に可愛いのぉぉー♪」
「また、訳分からへん事ゆって!
うちは不機嫌なんやでー!」
「こ、これが、不機嫌コノハかッ!!!
父上もかわいそうに、この瞬間に生で立ち会えぬとは。
代わりに余が存分に愛でておいてやろう!
うははははw 乙!!!」
「コマちゃんッ!! 聞いてるんっ?!
うちは!
(ぐぅぅぅ・・・)
あっ・・・」
「うむ! しーっかり聞こえておるぞー?
お腹が減っておるのじゃろ?
安心しろ、ちーゃんとおねーちゃんが用意しておる!
そこの海で魚を捕っておいたのじゃ!」
「あ、や・・・ これは違くて・・・
違わへんけど・・・ うぅぅ。」
「まぁ、まずはごはんじゃ!
あいにくお米はこの辺にはなかったのでな?
魚の丸焼きだけじゃが、食べるじゃろ?」
ドサ・・・ ドサドサドサドサ・・・・ッ!
「(ゴクっ・・・)
あ・・・ぅん。 食べる。」
「うんむ♪ (ニコっ♪)」
カバンから大量の魚を取り出したコマちゃんは
なんかめっちゃ原始的に
魚を枝に刺したり火を起こしたりして魚を焼き始めた。
なんかめっちゃ楽しそうに。
パッパッパッ・・・
「むふーん♪ 生も良いが、やはり塩焼きじゃな!」
「・・・うん。 なんかめんどうな事ばっかして、どしたん?
うち、おとんのパッチンみたいにパパッと出てくるんかと思ってた。」
「冒険者のカバンにはいろいろ便利グッズが入っておるが
こう、自分で捕った魚を自分で起こした火でジュワジュワと焼くのは
どうにも捨てがたいロマンを感じるじゃろう?」
「ま、まぁ・・・ めっちゃええ匂いはするけど。
大変ちゃうの? めっちゃ時間もかかるし。」
「そうか? 相変わらず効率厨じゃな?
別に時間は無限にあるのじゃ。
急ぐ事なかろう?
たかだか10分程度が待てぬ程、お腹が減っておるのか?
余も2日食べておらぬが
減っておるからこそ、こうして美味い物を食べたいではないか。」
「・・・? 2日?」
「そうじゃぞ?
コノハは生まれつき寝坊助を患っておるからのぉ?
まぁ、おかげで塩を作ったりする時間があった訳じゃがな?
あぁ、果物も見つけてとってきたから
水分も補給するのじゃぞー?」
「へー・・・ソノ塩・・・ココデ作ッタンヤ・・・」
「うむ! 自信作じゃ!
ちょっと舐めてみるか? 甘じょっぱいぞっ♪」
「???????」
(またや?! また、うちが知らん間に2日も??
今度はお魚捕ってきてくれて、お塩まで作ってくれたん???
てか、なんで、一人で食べへんかったん?!?!
2日やろ? お腹減ってたやろ?
寝てたうちでもこんな減ってるのに・・・)
「やっと、こうして一緒に過ごせるのじゃ。
それくらい、当然じゃ!
それに余だけが食べてしまったら
コノハがどれくらい腹ペコか
分からぬようになってしまうではないか?」
「ぁ・・・ あほぉ・・・ 」 うるうる ポタポタ。
「なっ?! またか・・・?
やはりその涙腺はおかしくないかぁ?
父上は拘りのボディじゃと言うが
困ったものじゃな・・・。
んっ・・・
それよりコノハ! そろそろ頃合いじゃ!
ガブっといけ!
この瞬間を逃すでないぞ!」
「ご、ごめん・・・。
コマちゃん、うち・・・
いつも、なーんも知らん癖に・・・ うぅぅー」
「馬鹿者! そこはごめんではなく、ありがとうじゃ!
自分を責めるヒマがあるならもっと余を讃え・・・
・・・って!そうではない!
そう思うなら今はすぐにガブっといけ!
余のコノハへの愛は今が旬なのじゃ!
頼むから無駄にするなっ!!!」
「ぅぅ、分かった。
ごめ・・・ありがと・・・コマちゃん。」
カプッ・・・・ モグモグ
(ゎ・・ なにこれ・・・ なんでこんな美味しいん・・・?!)
じぃぃぃぃ・・・・
夕日に照らされていつもよりオレンジに染まったコマちゃんの
どうじゃ? 美味いか? って覗き込んでくるその顔が
ほんとにうちの事を大事に思ってくれてるって・・・
・・・思えて・・・(ポタポタ)
うちが悪態ついても、何しても・・・ 優しくて・・・
「ふふっ♪
美味いであろー?
それに手の使い方も随分上手になったの?
さすが余の妹じゃっ♪ (ニコニコ♪)」
「ぬん。」
塩味のきいたとれたてのお魚もびっくりするくらいおいしいんやけど
涙が止まらへんくて・・・
おねーちゃんの辛党の味付けでしょっぱいんか
うちの涙でしょっぱいんか・・・・分からへんかった。
◇ ◇ ◇
「うむ・・・ た、食べたのぉ・・・
なんだかんだ言って、コノハも数kg食べたじゃろ・・・
大丈夫か?」
「ぁぅ、だって、あんな美味しいヤツあんなに焼かれたら・・・
ぅ・・・ くるぢぃぃ
・・・ハッ?!
ひょっとして、また太ってへんかな???」
「食後にお腹がでるのは当たり前じゃ・・・
ぽっこりお腹も確かに見ごたえはあるが
この空でも眺めたらどうじゃ?
なかなかのモノじゃぞ?」
(空・・・? ) チラッ
「わっ・・・ 綺麗ぇー・・・」
そこには昼色と夜色の
綺麗なグラデ―ションに塗られた空が広がってて
めちゃめちゃ綺麗やった。
(うち、ほんまにお外に、来てたんやな・・・)
・・・けど、膨れたお腹もやっぱ気になった。
どうして49kgと50kgはこんなにも違って感じるんやろ?
ううんっ!もしこのお魚たちが全部身になって51とかッ?52ッ!とかまで・・・
ブルブルブルッ!!
そ、それは美少女的に超えたらアカン何かのラインを超える気が・・・
(ダ、ダイエットや・・・)
「美少女とは大変なのじゃのぉ・・・?」
「ぅ・・・。」
でも、体重も気になるんやけど
冒険者のカバンにはびっくりした。
めーーっちゃたくさんの物が入るみたい。
しかも、冷凍保存とかやなくて、時間が進まないらしくって
後から後から捕れたての生きるお魚がたくさん出てきた。
たくさん・・・? いやいや、捕り過ぎ。頑張り過ぎ。
ってくらい出てきた。
だから、うちらは2日分の空腹を満たすため
勢い任せに食べに食べ・・・
結果、打ち上げられたナマコみたいに
日が沈んだ海岸に転がってるって訳なのです・・・
「コ、コマちゃん・・・
ピカピカくん持ってへん?(←アナライザ)
お腹、ヤバぃ・・・
それに、なんか・・・むずむずする・・・」
「おしっこか?」
おしっこ・・・ おしっこ・・・ おしっこ・・・
“体内の余分な水分を排出器官から体外へ放出する行為・・・”
あぁぁぁ・・・なんかそんなんあったような気ぃしてきた。
いつもおとんがピピっとしてくれるから・・・
「そ、それかも・・・
持ってきてる?」
「もちろん持っておるが・・・
使わぬぞ?」
「へ? なんで???」
「ここはどこじゃ?」
「海・・・?」
「いや、階層じゃ。」
「えっと、483階層?」
「そうじゃ、ならピカピカくんのHellzは?」
「あ・・・600とかゆってたかも?
もしかして使えへんのぉ?」
「いや、使えるぞ?
・・・が、ここでは誰も知らぬ未知のシロモノという事じゃ。」
「結局なんなん? 使ってええん? あかんの?」
「それは自由じゃ!
今までは余しかこの階層で
ピカピカくんを使う可能性はなかったのじゃが・・・
これからはコノハにもその可能性が出てくるという事か。
考えてなかったのぉ。
余も最初は使っておったし、使いたいか?」
「・・・えっと?
使わないとしたら?」
「立っションじゃッ!!!
いや、座ション?」
“立っション・・・立ち小便の略語。立ったまま特に野外で・・・(以下略)”
「・・・って?! マ?」
「マ! 余はトイレか、なければそのあたりで用を足しておるぞ?」
「マジかぁ・・・。
って! いやいやいや・・・
ちょっと分かるけど。
分かるけど・・・ うちの容姿でそれはあかん気がする!
コマちゃんはなんか幼いし・・・ギリセーフかもやけど。」
「だぁーれが幼女じゃッ!」
ぺっしーーーんっ!
「のーッ!? ぶ、ぶつ事ないやんッ!!
それに幼女まではゆーてへんし・・・もぉぉ。
でも、うちがここでおしっこしたら、おかしいやろ?」
「483階層なら、変でもないぞ?
それにそんなにお腹をぽっこりさせておいて、今更じゃろう?
まぁ、似合うとは思わぬがのぉ?」
「おっ、お腹は・・・ しゃーないやん!
お魚が美味しいんがあかんねん!
てか、お外でおしっことか、やっぱあかんやろ?
うちらってほら! こんなかわいい乙女なんやで?」
「ふむ。
まぁ、この階層らしく
トイレへ行くとしようではないか。」
「う、うん。 ほっ・・・。」
そんなこんなで、うちが予想してた
なんか大冒険的な?外の世界は、階層酔いとか
なんか凄く身近な問題がすでに大変そうやった・・・。