002 コノハ。
111階層でオーノとリーノと別れた小閻魔は
青鬼たちの方も、ちょっと見学しようかと思っていたのだが
それよりも、なんとなくそっちへ行きたいから・・・という理由で
戦場をあとにして、足が向かう方へと歩き出した。
なぜか引力を感じる方へと進み、しばらく行くと海へと辿り着いていた。
「Oh~♪」
ザッザァアァァァァーーーーーンッ!!!!
「絶景ッ!
オーノたちも、たまにはこういった場所へ来て
キャンプでもすれば、もっとイチャイチャが捗るじゃろうに。」
そんな独り言を打ち寄せる波に向かって言いながら
誰もいない真っ白な砂浜から、エメラルドグリーンの海を眺めていた。
しばらく眺めた後、今度は砂浜の上で寝っ転がり
どこまでも高い空を見上げながら、波の音をただ聴いていた。
ウト・・・ ウトウト・・・
そして、そのまま・・・
◇ ◇ ◇
(コマ・・ちゃ・・・)
(父・・上・・・?
いや、綺麗な・・・ 翼・・・? )
(見・・た・・・ 会・・・た・・・
やっと・・・)
ふわふわぱたぱた・・・ ぽよ・・・
―― ジジジッ・・・ ザザァーー・・・
チャキ・・・・
(走馬・・・刀・・・??)
(連・・・・・・ 逝・・・ ね・・・)
―― ジジジッ・・・ガガッ・・・ ザザザザァーー・・・
「ハッ?!!!!」 ガバッ!!!
(ふ、ふとん・・・?)
「ゆ・・・ 夢か・・・」
「お? 起きたかー? コマ?
モヤモヤしてると思うが大丈夫だぞー
一部だがリセットしたみたいでな?
まぁ、故障じゃないから安心していいぞー?
乙!」
「ん、あ、あぁ、父上・・・か。
ここは・・・ 余のお家・・・か。」
「ああ、閻魔庁だぞー。
大丈夫かー? 自分の名前分かるなー?」
「あ、うむ、おはようじゃ、父上。 乙じゃ。
自分の名前を忘れるなどあり得ぬが・・・
ん? 今、リセットと言ったか???」
「ああ、オレも一緒にしたようでな?
今気が付いたとこなんだが
調書によるとだな・・・」
そう言いながら小閻魔の父である閻魔大王は
小閻魔の横たわっているベッドとは別のベッドへと視線を向けた。
「ん?! なにヤツじゃ???
余と父上以外をここへ入れるなど・・・
死にたてホヤホヤか??」
「それがどうやら
コマは、おねーちゃんになったみたいだぞ? 」
「ナ・・・ ナヌ????」
ピラッ・・・
「まぁ、見てくれ。」
――――――――――< 調 書 >――――――――――――
名前:コノハ
コノハは閻魔の娘、小閻魔の妹として生まれる。
その為、関係者である 閻魔、小閻魔 の部分リセットを行う。
また、小閻魔同様、地獄内での走馬刀処理を禁ずる。
上記内容を了承する。
オレとコマとコノハが
幸せに暮らす事を心から願う。
閻魔(印)
委細承知ッ!
余もそれを願うッ!
小閻魔(印)
―――――――――――――――――――――――――――――
「なんじゃこれは・・・
データではなく羊皮紙の調書とは珍しい。
それに随分と雑な調書じゃな?
ちょっと手を抜き過ぎではないか? 父上よ?
・・・・ん?
あ、いやそれより、なぜ余のサインと血判があるのじゃ????」
「そりゃコマがサインしたからだろ。
コマのもオレのもちゃんと一致したしな。
リセットしたって話聞いてたか?」
「もちろん聞いておったが、そんな覚えはないぞ?」
「・・・あ、あぁ、まぁいいか。
んー、あれだ・・・
コマが生まれた時もこうだったろ?
ある日突然、オレには娘ができて
コマにとってはパパができた。
名前は小閻魔で仲良くしろ・・・
ってオレが書いた羊皮紙の調書があった。
覚えてるか?」
「―― ッ!!!
なるほどアレかッ! そういう事か!
それならそうと早く言え!
ならば、これは本当に余の妹なのじゃな?!」
ぴょん! ぼふんっ!
じぃぃぃぃぃーーーーーー!!!!
小閻魔は実にいい笑顔で
コノハという名の妹をマジマジと見つめ始めた。
そのお腹の上に飛び乗って。
「ほほほほーーーーぅ!
これは、また、かわゆすのぉぉぉ?!
ん? じゃが、まだ空っぽなのか?
それとも、隠れておるのか?
照れ屋か? ん? ん?」
じぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・ んふふふふっ♪
「ああ、まだボディのカスタマイズ中みたいだから
あんまり雑に触るんじゃないぞ?
10分もすれば起きるだろうしな。
そういやコマの時は、3時間待ったな?
コマ側の体感時間だと丸1日って事だから
あの時はいつまでキャラメイクしてんだ、オレの娘は?
・・・って思ったな・・・懐かしい。」
「ほー・・・ 初耳じゃな?
余は丸1日かけてこのボディを作ったのか。
なるほど、じゃからパーフェクトボディなのじゃな。
うむ! 大儀であった!
その時の余を褒めてやろう!
うははははw 乙である!」
「コノハも、他の死者と同じように死んで、ここへ来て
今回の一生をどこでどうしたいかってオレが聞いたんだろうが
どうやらオレの娘にしようって事になったんだろうな。
コマもいたみたいだから3人で話し合ってな。」
「そんな覚えはないが、余はウェルカムじゃ!!
こんなにかわいい妹なら
こちらからお願いしたいくらいじゃからな!!
むふふーーーん♪
お人形さんみたいに美しくもあり
ぬいぐるみの様にかわぃくもあるのじゃぁぁ!」
「それ、新しいボディだから
ここに来た時は女の子だったかどうかも怪しいぞ?
だが、そんなにコマ好みってことなら
ひょっとして、コマがボディの外見をデザインしたのかもなぁ?」
「そんな事をした覚えはないぞ?」
「あ、あぁ。
今となっては誰も覚えちゃいないんだが
コマなら妹になる条件で可愛くなれとか、言いかねんなからな。
とはいえ、コマの時もそうだったが
魂がちゃんと乗り込まんと、どうにもピンとこんな。」
「そうかぁ? 余はすでにアゲアゲじゃぞ?
・・・早く起きぬかのぉ???」
< そんな事があって・・・はや3日 >
ピピピッ カチッ・・・ ウィーーーーン・・・
トクンッ・・・ トクンッ・・・
「んぅ・・・ んんんぅぅぅ~??」
パチッ・・・・ パチクリッ・・・
(んっと・・・?
うち、何してたっけ・・・・?)
何かめっちゃ長い夢、見てたような・・・
なんかすごく嬉しかったような、疲れたような・・・
てか、目ぇ開けたはずやのに
なんかよお見えへんし・・・
なんか変な感じ・・・
ぼやぁぁ~~~~
キラ・・・キラキラッ☆
(んん??? なんか、綺麗・・・ お星様・・・ やろか?)
「お お お お お ッ!!!
起きたのか!!!
おいッッ! 父上!
寝坊助が起きたぞ! やーーーーーっと目を―― 」
( びくぅッッ!!!
しゃしゃ、しゃべった?! このお星さまッ しゃべッ?!)
「シーーッ・・・
いきなり目の前でそんな大声出したら
びっくりしちゃうぞ? コマ?」
(こま・・・?!)
「そッ それはそうじゃが
なんなのじゃこれはッ!?
ドキドキか? キュンキュンか?
余は余の妹に何がしてあげれるのじゃッ?!
どうしたらいいのじゃ!? 父上よ!」
「まず、大声を止めたら喜ぶんじゃないか??
あと、そこで暴れたらちょっとかわいそうだぞ?!
(しかし、これは確かに・・・)」
「そ、そうじゃな・・・ すまぬ。
モゴモゴモゴ。」
(び、びっくりした・・・)
ん~? じいぃぃぃぃぃぃ・・・・
あ、これ、お星さまちゃうくて・・・女の子や・・・
キラキラお目々やったんや
このちっちゃい女の子の・・・
あ・・・ なんか・・・
“ やっと ” やね。
キラキラな女の子は両手で口を塞いでモゴモゴゆってて
なぜかうちのお腹の上に乗っかってて、ちょっと苦しくて
そんで、おでこがくっついちゃうくらい
めっちゃ至近距離からうちの顔をマジマジ見てて
とにかくめっちゃキラキラしてた・・・
「おはよう。
気分はどうだ? コノハ?
何も覚えてないのはコノハがたった今生まれたからで
故障じゃないから、大丈夫だぞー?
とりあえず、オレの言ってる言葉は分かるかー?」
(あ、もう一人の・・・ 誰やろ?
なんか、落ち着く、ええ声の人やなぁ・・・
えっと、うん・・・ 意味は・・・ 分かる、かな?
えと・・・? ん・・・?
生まれた????
へ?? コノハ?? んんん??? あれ? あれ?)
「はははw 大丈夫だぞー。
まずコノハっていうのが、お前の名前だ。
そして、そこでコノハのお腹を苦しめてるのがコマ・・・
小閻魔っていう名前の、コノハのおねーちゃんな。
で、このオレが閻魔なんだが・・・
なるほど、確かにオレは、コノハのパパのようだ。
分かるか? 感じるか?
随分生まれてくるのにてこずってたみたいだが
とりあえず、言わせてくれ。
よく、生まれてきてくれたな。
ありがとう。 」
トックン・・・
(あ、う、うん。 ありがと・・・。(///)ぽっ)
「モゴモゴーモゴ・・・ モゴーーーモモ・・・」
(ぱぱ・・・ ぱぱっていうんだこのイイ声の人・・・
あ、で、このキラキラのモゴモゴが・・・
うちの・・・おねーちゃん・・・
ん? おねーちゃんって あのおねーちゃん!?
と・・・ぱぱ? ・・・?)
うちはすぐ目の前のおねーちゃんの顔をもう一度よく見た後
次は ぱぱ って言うイケボさんを見るため
見えてる範囲を目の前のおねーちゃんからぱぱ方面へずらしたくて
なんか動きにくい首とか目とかを、がんばって回転させた・・・
ぐっ・・・ ぐぐぅぅっ・・・ チラっ
(んなッ?! で、で、で・・・・)
「はははははw
どうだ、でっかいだろう!
オレは大王だからな!
だが、コノハを愛してるパパでもあるんだぞー?」
「モゴゴモゴモゴモゴゴゴモーー」
(うははははw
父上は器も図体もでっかいからな! 凄かろう?)
(ぱぱ・・・ 父上・・・ あっ・・・
おとんや!
そっかそっか、おねーちゃんと、おとんなんやな?!
イケボやのにでっかくてびっくりやったけど
そっか、じゃぁじゃぁ・・・
家族・・・やんな? そういう、事やんな?
へへっ・・・ えへへへへ♪
そか・・・ そっかあぁぁぁ・・・)
「ちょっとは落ち着いたか?
あと、おとんじゃなくて “ パパ ” だからな?
もうちょっと落ち着いてからで構わんが
ちゃんと生まれれたかどうか
いろいろとチェックしときたいから
大丈夫そうになったら体温とか、測らせてくれな。
ああ、その前に、まず息を吸ってみようか。
分かるかー?」
(息・・・・? あ、あぁ・・・息! うん!!)
「ぷはッ!
ふーーーーー・・・ すーーーーー・・・」
(ぉ~・・・
なにこれ・・・ なんかおもろー・・・
お腹ふくらんで、おねーちゃんが
浮いたり・・・沈んだり・・・ んふふふw)
「モゴモ! モゴーモゴモ!」
「コマ? 大声を出さないようにしてるのは偉いが
手で口を塞いでちゃ、何言ってるか分からんと思うぞ?」
「ぷは! そそ、そうであった!
余とした事が・・・
それよりコノハ!!
余が分かるか??? いや、分かれッ!!
余がそなたの“ 年 上 の ! ”おねーちゃんじゃぞ?
コノハが起きるのを三日も!
こうしてお腹の上で待っておったのじゃ!
そんなおねーちゃんに何か一言ないのか???」
ぱちくりぱちくり・・・キラッキラァ~~☆
(ふふっ♪ めっちゃかわいいおねーちゃんで嬉しいでっ♪
よろしくねっ♪
コマちゃんって言うんよなぁ?
初めてのはずやのに、なんかめっちゃ・・・ ん? あれ?)
「あー、コノハ?
できそうなら、声! 声出していこう!
伝わってるとは思うが
コマはそういうのそこまで得意じゃないんだ。」
(声・・・って えーっと? ああ、声な?
分かるで・・・
声帯を振動させて? 音を出す・・・??
ん・・・? どうやったっけ???)
「ひゅーーー・・・
ふぃーーーー・・・
んーーーー ぬーーーー
・・・・???」
「よし、まかせろ!
年上のおねーちゃんにまかせろ!
良いかコノハ?
まずはこうじゃ、息を吐きながらー
コーーーーーーーーーー!」
(息を吐きながら・・・)
「ノーーーーーー・・・・?」
「いや、コーーーーーじゃ。」
「んごぉーーーーーーー?」
「惜しい! もうちょっとじゃ!
口と舌の形はこうじゃ、こう・・・」
グニグニ、ムニィ・・・
「よしそのまま・・・
コーーーーーーーーー!」
「ンッ・・・ んこーーーーーーーーーー?」
「おお! 良い感じじゃぞー!
次は、こうじゃ・・・
(グニグニ、ムニィ・・・)
エーーーーーーーッ!」
「ネーーーーーーーー」
「エーーーーーー じゃ!」
「んえーーーーーーーーー?」
「ま、まぁ、良い!
次は、ぎゅっとして・・・(ギュっ)
んんんんーーーーーーー」
「んんんんんんんんん~~~♪」
「お? いきなりうまくなったのぉ!!
良いぞ良いぞ可愛いぞ~♪
最後はこうじゃ、こう閉じてからの・・・
まーーーーーーーーーーー!」
「んっ・・・なあぁーーーーーー♪」
「なるほど。
どうやら“ Nがしつこく絡む病 ”のようじゃな?
じゃがまぁ、ボイトレの先生を紹介するまでもなかろう。
すぐに慣れる!
よし、では最後に続けて言ってみるのじゃ!
この年上のおねーちゃんの名をな!
ゆくぞー?
コーエーンーマっ!(ハート)」
「のーねーんーーな!(ハート)」
「・・・か、絡むのぉ。念入りに。
ちゃんとハートが付いたのは計画通りじゃが
わざとではなかろうな???」
「のんなののなにの!」
「ぷっw くふふっw
のんなのの、ある訳ないな!w
まったく余の妹は何をしても、キュンキュンくるのぉ!!
寝ておる時もヤバかったが
起きてからはパないのぉ!! かわゆすのぉぉ!」
抱きぃぃ~~ スリスリ♪
(ふふw くすぐったいw
それに、スベスベプニプニ♪
うちも・・・)
ぐ・・・ぐぃ・・・
(??? く、くぬぬ・・・ う、腕・・・重ぉぉ・・・)
「ん?? 大丈夫かー? コノハ?
時間かけた割に、なんか動きにくそうだな???
どこかおかしかったらパパになんでも言うんだぞー?」
(うん、なんか重い・・・
ってか・・・ ん? あれ・・・?
うちの手・・・なんか大っきない?
あれ? おねーちゃんより・・・
む、胸とかも・・・? ん?)
「むむッ?!
我が“ 妹 ”コノハよ?
今、余と自分を見比べて
何か余をモヤっとさせるような事を考えなかったか?」
(あ、うん、だって・・・
どうみても、うちのがコマちゃんよりおねー・・・)
「そこまでじゃッッ!!
何を考えておるのかは分からぬが、その先は不可侵領域じゃ!
余はコノハの “ ト・シ・ウ・エ・ノ・! ” おねーちゃんじゃからな?
それはこの世が滅んでも変わることのない
この宇宙の永遠の真理なのじゃ。
コノハは、いぃ~~~しょうッ! 余の妹じゃ、分かったか?」
「ぬ、ぬん・・・。」
「ふふw 分かれば良いのじゃっ♪」
「あー、コノハー?
しゃべる時以外も呼吸はしとくといいぞ?
よっぽど死ぬ事はないと思うが
呼吸ってのはエネルギーを補充できたり
いろいろと便利だからな。」
「ぬーん・・・ななっな!」
すぅぅぅーーー はぁぁーーーー
すぅぅぅーーー はぁぁーーーー
◇ ◇ ◇
そんな感じで、どうやらうちは、今、生まれた・・・らしい。
少し話を聞いた感じやと、ここは地獄の閻魔庁で
おとんは閻魔大王、コマちゃんおねーちゃんは次期閻魔大王ってことらしくって
これって多分、凄いとこに生まれちゃったんちゃうかなぁ?
いちお、地獄基礎知識とか? 基本地獄言語とか?
いろいろそういうのを頭に入れてくれてるみたいで
いろんな事が分かるし、いろんな事を知ってる風に感じる・・・っぽい。
けど、自分の事は、やっぱ真っ白で。
きれーーに真っ白なんやけど
コマちゃんおねーちゃんと目が合うた時思ったんは・・・
よぉ分からへんのやけど “ やっと ”って言葉やった。
やっと・・・ 会えた? やろか?
やっと・・・ 遊べる? とかかな?
やっと・・・ なんやろ?
おとんを見たときも、一緒やった気ぃする。
第一印象は でッかぁぁッ?! とかやったけど
声を聞いた時とかめっちゃ安心したし
やっぱり、“ やっと ”ってうちは思った気ぃする。
せやから、うちの過去は真ーっ白やけど
なんかきっと、“ 暖かい ”真っ白やったんやないかな・・・。
◇ ◇ ◇
「温度・・・35.3度」
「ふむ。ちょっと低めじゃな? 良いぞー。」
「質量・・・49kg」
「うむ・・・ な、なかなかあるな?」
「身長・・・163cm」
「・・・163??」
「霊周波数・・・下が108Hellzで
上が・・・ ほぉ。」
「108と、ほぉ? ああ4か?
いや、上が下より低い訳なかろう?
父上は阿呆になったのか?
あ、いや、それより、さっきの身長はおかしくないか?
何が悲しくて余は妹を、にじゅ・・・
9cmも下から見上げねばならぬのじゃ??
余がおねーちゃんなんじゃから物理法則上ありえぬであろう??
天地の理に反しておる。
なんなら違法行為までないか?」
「700・・・ジャスト」
「ななッ?! バカを申せ・・・
700と言えば7m・・・いや70mじゃったか?
ッ?! 70mぅぅッ?!
そ、そんなもの・・・
父上よりもさらにでっかく・・・
それはもう山ッ! 山の領域・・・」
「戻ってこーい?
700は霊周波数の上の話な?
あと700cmは7mだしコノハは163cmだぞー。
あとコマは142cmだから21cm下から見上げないとダメだぞー?
だが、せめて1ケタにしたかった気持ちは分かるっ!
そんな可愛い、お茶目コマをパパは愛してるぞッッ!!!」
「ぅ・・・うるさいッ!
余の容姿はパーフェクトで問題ないのじゃッ!
これ以上大きくなる気も毛頭ない・・・・じゃがッ!
じゃが、、妹が余より21cmも・・・ くッ!
・・・・って、ん?
今、霊周波数700と言わなかったか???」
「おぉ、もう戻ってこれたか。 早かったな?
言ったぞ? ジャストみたいだがすでに地獄での最高値って事な?」
「マジか・・・
生まれたての妹の分際でやりおるのぉ。
さすがは余の妹じゃ。
ちなみに、余はどれくらいじゃ?」
ピピッ・・・
「おっ・・・ 639。
順調に上がってるな! 偉いぞー?
下はいつも通り0で計測不能、優秀だな!」
「ふふふw 当然じゃぁ♪
ふむ、639か・・・ ボチボチじゃな!」
キョトーーーン・・・
「ああ、コノハ、すまんな? 訳分からんよな?
霊周波数って知識は頭に入ってるとは思うが
地獄ではその数値の範囲の階層にしか入れないんだ。
コノハなら、108階層から最上位階層の700階層に行けるって事な?」
「ぬーーん。」
「まぁおねーちゃんくらいにならねば
108階層より下へは行けぬという事じゃ!
下層は楽しいぞー? むふふふふーーん♪」
「逆に639階層より上は、コマは行けんがな?」
「上層に興味などないぞー?
どうもワイルド成分が足りぬから好かぬのじゃ。
じゃから、わ・ざ・と・!
上層へは行かぬようにしておるのじゃ!
下層におっても数値は勝手に上がるようじゃし
いずれ700にもなろう。
何も問題ないのじゃ!」
「はっはっはっ!
もちろん問題ないぞー!
逆に下層でそのペースで上がるとはさすがパパの子だなっ!!」
ぐわしっ! なでなでなで~
「とーぜんじゃぁ♪ むふふーーーん♪ (ニマニマニマ~♪)」
「まぁ、ようするに
自分が受け入れられる範囲の世界にしか行けないって事でな
無理やり行けんこともないが、キツイ。
数値は別に高くても低くてもいいし、狭くたって広くたって問題ない!
ただコマの場合だけ特別で、大王を継ぐつもりなら
下は0以下、上は700以上になってもらわんとダメって話な。」
「なぬぬ・・・?(分からへんw)」
「はははっ そのうち分かるから気にしなくていいぞー?
よし、健康診断の結果はどれも問題ないようだし
どうだ? 大丈夫そうか?
どこか調子が悪いとか、違和感とかあったら言うんだぞ?
N音が最初についちゃうのは、まぁ、慣れだ。
すぐ良くなるだろ。」
「ぬーーーん・・・
ならだ・・・のもい・・・」
「通常で49kgだったよな?
それでそんなに重いってのも変わってるな?
軽くしてやることは簡単なんだが・・・
そのボディ、さっきまでコノハが丸3日かけて
作り上げた拘りのボディでな?
できればそのまま使ってやって欲しいぞ?
他のヤツは平均10分程度で組上げるところを
丸3日、体感時間だと24日間かけて
歴代ぶっちぎりのレコードを樹立して作ったボディだからな。
だからそのボディは、どこもかしこも超拘った超大作
・・・だって事なんだと思うぞ。」
「うむ、おかげで余はレコードホルダーコノハのお腹の上で
3日間のキャンプ生活をせねばならなかったのじゃ。
待たせるにも程があるというものじゃ・・・
まぁ、寝顔も可愛かったからあっという間でもあったがのぅ♪」
「ねッ?! ぬちが作ったのぉぉぉ?!」
「そうだぞー?
オレは嫁も子もおらんから
コマもコノハも自分でボディを作って来てくれたんだ。
誰かの胎児や卵に乗り込んで生まれてきたタイプじゃないぞ?」
(あッ! そうやんな?!
普通、生まれるってそういう事やんなぁぁ????)
「地獄では半々ってとこだが
低い階層ほど、作ったボディで行くヤツが多いな。
面白いヤツだと巨人やドラゴンのボディを作って
他の生物皆殺しにしてやるー!って出てったりするんだが
最後、本当に一人になったら、何して暇つぶすんだろうな?」
「そんな心配はいらぬぞ!
そんな偉業を成し遂げたヤツがでてきたら
余が喜んで遊びに行ってやるからな!
ま、そんな骨のあるやつは見かけぬがのぉ・・・。
飽きもせずちまちま殺しあって
その子供も、そのまた孫も中途半端に。
いったいいつになったら次の遊びを始めるやら・・・。」
「そのあたりの壁は高いからな、あれでも必死なんだぞ?」
「もちろん分かっておる、ヤツらは馬鹿者じゃが
可愛くて、尊敬すべき、余の大切な大馬鹿者じゃ・・・。」
ぐわしっ! なでなでなでっ♪
「むふーーーーん♪ (ニマニマニマ~♪)」
ふふっ♪
難しいお話はさっぱり分からへんかったし
身体を自分で作ったとかもピンときぃへんかったけど
コマちゃんとおとんはめっちゃ仲良しやって事は伝わってきて
うちも、きっとそこに仲間入りできるんやろなって思うと
うちも幸せやった。
◇ ◇ ◇
「よし! そろそろパーティーを始めるぞッ!!!」
「何?! パーリーはどこじゃ!
余はパーリーが好物じゃぞ!!!
なんなら余がパーリーじゃ!」
「よーしよし、パーティーはここだぞ、コマ!
コノハの0歳のバースデーパーティーを行うッッ!!!
全力でなッ!!」
「おおッ! そうか! それはそうじゃな!
よし、余も全力で我が妹を祝うと誓うぞッ!!!」
「「 いぃッ えぇーーーぃ♪ 」」 パーーーンッ!(←ハイタッチの音)
「色々とまだ聞きたい事とかあるかもしれんが
この、嬉しくて、幸せな気持ちが最高潮なうちに
まずはそれを一緒にめいっぱい祝おうッ!
他の事はあとでいくらでもできるからな!
だろッ?」
ニカッ!
そんなええ笑顔されたら
そりゃ、うちだって、そう思っちゃう訳で・・・
うち、ここに生まれれて、ほんと・・・幸せやっ。
「ぬんっ なりがとぅ!」
「よーし! パーっと行くぞー!
コノハの好物はなんだ?
とりあえず、うまいメシに、うまい酒がいるだろう?
なんか食べたいものとかないのかぁ???」
(食べたい・・・かぁ。
なんやろ・・・?)
「ばっかもーーーーん!
そんなもの、龍のしっぽの厚切り輪切りステーキに決まっておろう!!!
この世界にあれを超えるごちそうなどありえぬッ!
待っておれ、この1度しかないコノハの大切な日を
余の愛を形にした、生涯最高の龍肉で飾ってやるからな!!!!
父上! 狩ってまいる!!!」
「はははははw
コマはあいかわらず肉が好きだな!
オレは何を用意するか・・・?
ん~~~~」
(買って? やなくて? 狩って?ってゆうた??
っぽかった気ぃするんやけど・・・
今から、とりにいくん? りゅ? 龍?? を?)
「確か70階層あたりの深層に生きの良いのがおったはずじゃな
ああ、父上、冒険者のカバンを持っていくぞ?
手ではちと持ち切れぬからな!」
「おぅ! ああ、剣ももってけ!
拳で潰すと味が落ちる。
剣でスパッとやってこい!
それでなるべく早くカバンにしまえ!
鮮度が大事だからな!」
「なるほどじゃ・・・さすがは父上っ!
ならば、そうじゃな・・・
うむ、オーノにやったこれでいくか!
よし! 行って参る!!!!」
「おう!!」
ズダダダダ・・・ ガチャリ・・・ ガチャリ・・・
そんな会話をしたかと思うと
コマちゃんおねーちゃんは外へ出るのか
2つ並んだ扉の左側の扉を開けて、出て行った・・・
―― びっくぅぅぅッ??!!!
「んななぁあぁ?!?!」
そして、その瞬間
うちは思わず変な声がでちゃうのを止められなかった・・・
「グオォォォォーーーーンっ♪♪
ただいまじゃーーー! 乙!」
「おう! おかえり! 乙ッ!!!」
(みみ・・右のドアから・・・
入れ違いで・・・
ううん、同時に、別のおねーちゃんが?!
左のおねーちゃんは・・・ど、どうなったん?
へ? は? なんやのん? これ?!?!
双子やったん? うちのおねーちゃんは????!?!)
「ガオォォーーーーンっ♪
ん? どうしたのじゃ? 変な声を出して?
ちょっと汚れておったか?
返り血は浴びておらぬと思うが・・・
それより、コノハっ! 聞くが良い!
この龍ときたらなかなか変わったヤツでなっ!
龍のクセにやたらと吠えておってな?
何がしたいのかと聞いてみたら
ただ気持ちの良いスカッとした雄叫びを
吐き出したいだけじゃとか言い出しおってな?
きっと歌い手や言霊師の原点的な衝動なのじゃろうが
深層でッ! しかも龍のナリでッ! じゃぞ??
ぷふッw そういう訳で、この肉は極上じゃ!!」
「あー、コマ、なかなかいい土産話だが
コノハにはまったく聞こえてないみたいだぞー?」
「ん? なぜじゃ? 余の話はコノハにはちと難しかったか?」
(ううん・・・ 違うの、おねーちゃん?
そういう事やなくてな?
左のドアに入ったおねーちゃんと
右から出てきた別のおねーちゃんが・・・左から・・・右で・・・
おねーちゃんは誰なん?
うちのコマちゃんおねーちゃんは・・・??
あかん、もう頭、動かへん・・・)
「どういう状態じゃ?
お、おい?
上手く聞こえぬが、ヤバ目ではないか? 余の妹は・・・???
メ、メディック・・・ 衛生兵はどこじゃッ!?」
「はははっw
大丈夫だぞーコマ、ちょっとそのドアにびっくりしただけだ。」
「ん? ドアじゃと???
あぁ・・・なるほどじゃ。
ふふふっ♪
驚かせよって、いちいち可愛いヤツじゃのぅw コノハは!」
「閻魔庁は外と比べて速いからゆっくりでな?
ああ、スピードと時間の話な?
だから、あー・・・なんて言ったらいいんだ?
まぁ、すぐに戻って来れる魔法の扉・・・
って事に今はしておいてくれ。」
(じゃぁ、このおねーちゃんはさっき出て行った
おねーちゃんなん?)
「おぅ、間違いないぞー? さっきのはな。」
(・・・そ、そうなんや。)
「ちゃんとコノハのおねーちゃんのコマだから安心しろ!
それより今は、お前の誕生を一緒に祝おうッ!
お前の0歳の誕生日は今日を逃すとこの先二度とないからな!
それをコノハが楽しまないでどうするっ!!!」
(う、うん・・・ そりゃ、そやな・・・・あはは。
あー、びっくりした。)
「あーー父上よ、龍の肉は申し分ないのじゃが・・・
その・・・
余は料理は苦手じゃ。
余の分を斬って焼くだけなら良いが
今日は、ほれ・・・その・・・
特別に美味くしてやりたいではないか。
じゃから・・・」
「コマ! コマはいいおねーちゃんだな!
さすがはパパ自慢の娘だッ!
よし、パパに任せろ!!
龍はカバンの中だな?」
「うむ! 自慢の龍のしっぽじゃ!
しかもスパッと斬って、サッとしまったのじゃ!」
「よしよし!
コマは、輪切りステーキがいいんだよな
それをコノハにも喜んでもらえるように焼けばいいか?」
「うむっ! 頼むのじゃッ!!!」
「コノハの味覚に合わせるとなると500階層前後か・・・
まぁ、いろんな味のを手あたり次第覚えてくるか・・・
よし、コマ!
肉ばっかじゃなんだし、保存庫から
並べれるだけ美味そうなもんを出してくれるか?
オレは肉を焼いてくる。」
「任されたッ!!! 余は大船じゃ!!」
「よし。 あぁ、まず会場作りしとくか。」
パチンッ!!! ドォーーーーーーン!!! グワワンッ!
(―― ッ?!)
おとんが指をパチンって鳴らすと、特大のテーブルが出てきた・・・
うん、出てきた・・・ いきなり・・・
いきなり出たのも、その大き過ぎるサイズにもびっくりやったけど・・・
そのサイズに合わせて、部屋の広さが広くなった気が・・・?!
(あかん、考えたら負けや・・・。
いちいち突っ込んでたら、パーティーが始まらへん・・・。)
(はははw
そういう事だ!
今日は全部、手品か魔法ってことにして
ただ楽しんでくれ! 主役だからな!
それに、すぐに慣れる。)
(手品や魔法か・・・
な、なら、しゃーないな? あはは・・・。)
って、そんな風には思えへんかったけど
でも、新しい事にいちいち怖がったり考え込むより
ただ、びっくりしながら楽しんじゃった方が
ちゃんと、うちの記念日をしてるって事になんのかなって・・・
パチンッ!
ウィーン・・・ シュイーン・・・・
・・・って考えてる間に、またおとんは指をパチンとして
今度はうちが寝てるベッド? 機械? が動き出して
椅子の形に変わって、うちは大きなテーブルの前で
椅子に座ってる態勢になってた。
「どうも動くの大変そうみたいだから
今日はそのままベッドでな。」
(う、うん・・・ ありがと。)
「よーし!
余は父上と余が好きなものをジャンジャン並べてゆくぞッ!!
残念ながら、コノハの好きなものを
余はまだ何1つとして知らぬからのぉ・・・。
あ・・・ ん? じゃが、毒はダメか?
なぁ? コノハ?
おぬし、毒はイケるクチかぁ???」
「ん?」
毒・・・毒・・・毒・・・・
食べると死んだり、病気になったりする・・・
うん、頭の中にはそういう知識があるから
フツーに毒!って事やんな?
(え? おねーちゃん毒とか食べるん???
死んだりせーへんのぉ?
うちも・・・大丈夫なん???)
「あー コマ! 気にせんでいいぞー!
死にそうになったらちゃんと治すし
いろいろコノハの事を知りたいしな!
とにかく面白そうなもんは全部だしとけっ!」
「じゃなっ?
よし、任せろ!!!! 余は大船じゃ!!!」
「・・・・・。」
(う、うち、楽しめる・・・やろか・・・)
おねーちゃんは、いわゆる“おかもち”ってゆうのかな?
「出前の配達人がラーメンなどの料理を運ぶ際に用いる箱のこと」
っぽいヤツを持ってきて、そこから料理を出し始めた。
「ふふふw なにはなくともまずこれじゃ。」
コトン・・・
あ、あれは知識だけやなくてなんか懐かしい感じする・・・
うん、あれ、「ごはん」や。
しかも、土鍋ごはん!!
「ぬんぬん!」(なにはなくとも、ごはんは欲しいよね!!)
「お? コノハもごはんがイケるクチか?」
「ぬんぬん」
「よしよし!
趣味が合うではないか! 余はお酒よりもこっち派じゃ!
・・・ふむ!
ごはんがいけるなら・・・
これはどうじゃ? ニヤッ♪」
コトリ・・・
「のつけものっ!」
「おお! 分かるか! そう、お漬物じゃ!
その顔をみると・・・
イケるクチじゃな?! ニヤッb」
「ぬんぬん!」(たぶん、好きなヤツ!)
「おぬし、なかなかに見どころがあるのぉ?
余はこれも至高の食べものじゃと評価しておるのじゃが
どうも地獄では、貧しい住民が仕方なく食べるイメージがあってな?
・・・解せぬ。
じゃがまぁ、このお漬物は一味違うのじゃぞ?
余の秘蔵コレクションじゃ!
327階層のお梅ばあさんのハンドメイド一点物じゃ!
いくらでもコピーはできるのじゃが、これはなんとオリジナルじゃ!
普段は父上にすら、コピーしかやらぬのじゃが・・・・
(////)ポッ
コ、コノハなら全部食べてしまっても構わぬ。
実はコノハを愛する気持ちを
これ以上どうやれば伝えれるのかと困っておったのじゃ・・・
龍もそうじゃが、これも、何でも、全部・・・
何をしてでも、この1度きりの大事な日は
どうしてもコノハの最高の笑顔が見たいのじゃ。
じゃから、この余の宝物にも遠慮などいらぬからな?
もししたら、逆に余が泣くからな?」
元気で偉そうなコマちゃんが
いきなりちょっと照れながらそんなことゆうんは・・・
反則やろっ!
ってか、あれ? なんやろこれ・・・
こんな時って、喜ぶんちゃうかったっけ?
笑うんやなかったっけ?
おかしぃな・・・
楽しくて、嬉しくて、浮かれちゃってるのに・・・
なんかキュンってして・・・
「ぬん・・・
な・・ありがとぅ・・・
のま・・・
こまちゃん・・おねーちゃん。」
「い、今、なんと申した??!
アンコール! アンコールを頼む!
あ、いや、誰がコマちゃんじゃ!
余は小閻魔さまおねーちゃん・・・
あ、いや、それも、捨てがたい・・・
ぐぬぅ・・・余は、余はどうすれば・・・」
「こまちゃん・・・
なぃ・・・ だいすき・・・」
ずっきゅーーーん☆
「くッッはッ・・・
だ、だめじゃ・・・ 抗えぬ・・・最強か?
なんじゃ? このかわいい生き物はッ?!
キュンで死ぬ・・・
このままではキュン死にじゃ・・・
そうじゃぞ! 余が・・・
余が、コノハを護る、おねーちゃんじゃ。
余も、コノハが、大好きじゃ!」
「ぬん・・・ うんっ!」
ツツー・・・・ ポタ・・・ あれ・・・
たった、1日。
ううん、たった数時間で、うちの空白の真っ白な部分は
埋まってもーたのかもしれへん・・・
その真っ白にぽかっと空いてた部分に
何が書かれてたのかって事なんかよりも
今ここで大好きって伝え合えてる事の方が
今のうちには、絶対に大事な事・・・
うちはこれを感じる為に
ここへ来たんかも、しれへんな・・・
「へへっ・・・ えへへ・・・」
「・・・コノハよ?
おぬしの涙腺、少し弱過ぎぬか???
笑っておるのに、目から水が出ておるぞ??
24日もかけて、整備不良とは・・・
そっちはあまりイケるクチではないようじゃな???
ああ、じゃが、くやしいが・・・
どうやら余はドジっ子もイケるクチのようじゃ。
余の愛は変わらぬみたいじゃから、安心してドジるが良いぞ
コノハ・・・あっ、いや・・・
“ ドジッコノハ ”よッッ!
ぷっw ぷははははw 乙なのじゃ!」
「ナッ?! ぬッ・・・ぬるさぃッ!」
(誰がドジッコノハやー!
いい感じで浸ってたのに!
うまい事ゆったったーみたいな顔してぇぇーーー! もう!)
「おぉ・・・ これが第一次反抗期か!
てらかわゆす!」
おねーちゃんはこれを故障みたいにゆったし
うちもなんかおかしいとは思ってんけど・・・
ほんのちっちゃな感動で出ちゃった涙が
なんか心地よくて・・・
もし、これが故障だったとしても
うちは、このままがええな・・・ なんて、思った。
ドッッ ドォォーーーーーーーンッ!!!!
「へい、お待ち!
ぐぬぅ・・・
コマばっかりずるぞ!
オレがちょっと本気でステーキを焼いてる隙に・・・
ぐぉぉぉぉ・・・」
そんなちょっとかわいい愚痴と一緒に
今度はおとんが机の上に・・・ 机?を・・・・?
「「 ?! 」」
ぎゅるるるるるる・・・・ ダバダバダバぁ・・・・
「ここ、これはッ・・・
まさか、しっぽか?!
この良い方向に変わり果てたコレは
龍のしっぽなのか?」
「そうだぞー!
あぁ、まずヨダレを拭くぞーコマー。
(フキフキ・・・)
コノハの今の霊周波数が500くらいだったから
500階層のカリスマ料理人のところへ行ってきたんだが
頼む・・・ストライクゾーンであってくれぇぇ!!!
コマにはちょっと薄切りかもしれんが
20cmごとに味付けを変えて
1枚で何度も何度もおいしいステーキにした!
美味そうだろ! 凄いだろう!
どうだ? ゾーン入ってる・・・か?」
「のいしそうッ!!!
なりがとーッ! おとん!」
「おっ おおッ!?! よっしゃ!
オレもなんかキュンと来たぁー?!
やっぱし、言葉ってのはグッとくるな!
あ、だが、おとん じゃなくて パパ な?!
いや、だがそれはそれで、むしろいいッ! ・・・のか??
ぐぬぅ・・・オレは、オレはどうすれば・・・
だが、コマもパパじゃなくて父上だしなぁー・・・
コノハは是非にもパパと・・・ブツブツブツブツ」
「・・・。
父上よ、そのネタはさっき余が素でやったから薄いぞ?
そして、長い!」
「ぅッ・・・ ま、まぁいい!
・・・が、辛抱たまらん!
なぁコノハ? 一度でいいから言ってくれんか?
『 パパ大好き 』っと!!!」
「ぬ、ぬん・・・。
な・・なな、ないぬに・・・。」
「ぷふっww ななないぬにwwww」
「お、おぅ・・・
わ、分かった・・・すまんかった。
次は自発的に言ってもらえるように、パパがんばるからな!」
その後、見た事ないものがもっとたくさん机に並べられて
うちの0歳のお誕生日パーティーは
みんなの好きな食べ物とか、好きな事とかの話をしながら続いた。
めっちゃ楽しくて、嬉しくて
びっくりすることばっかりやったし
二人の笑顔や優しさがいーーーっぱいで、ほんまにめっちゃ幸せやった。
コマちゃんは辛い物が好物みたいで
龍しっぽステーキもコマちゃんの前のとこだけは
目がシパシパするくらいおかしな姿に変わり果ててて
コマちゃんはそれを美味しそうにモグモグしながら
肉、ごはん、肉、ごはん、って食べてた。
きっとコマちゃん用の味付けも
おとんは頑張ったんやと思う。
うん、おとんはフツーにいつも優しい、素敵なおとんや。
その素敵なおとんはいろんなお酒や毒?をグビグビ飲んで
たまにしっぽステーキとかうちにはよく分からへんものをつまみにしてたけど
食事よりもうちやコマちゃんをじーっと見て
お話している時間の方が圧倒的に楽しそうな顔をしてた。
で、うちはというと
とりあえず、何を食べてみても新感覚?って感じで
美味しいっていうよりびっくりしてばかりやった。
でも、おとんが自慢げに持ってきた500階層の
スイーツコレクションはマジで美味しくて、ほっぺ落ちそうやった!
ちなみに毒は大丈夫みたいやったけど
ちょっと刺激的過ぎてちょっと苦手やった。
でも、毒よりもっときつかったんは
コマちゃん用の激辛系の食べ物で
あれは、マジで口や胃どころか、目や鼻や肺まで痛かった・・・。
あと、ナイフやフォークや箸を持つのが重くてしんどかって
無理っぽかったから、直接フォークを動かして食べてたんやけど
一瞬それを見てコマちゃんは目をクリクリさせてキョトンとしてた・・・
きっとなんかちょっとマナー違反をしたんやないかな?って思ったけど
うちからしたらコマちゃんみたいに
机の上に座り込んで手掴みで食べたり
酷い時は四つん這いでそのままお口でガブリといっちゃう方が
マナー違反ちゃうかなーって思ったから、お相子・・・やんな?
それにしてもコマちゃんは毎回ごはんで
全身ベトベトになっちゃうんやろか???
そっちのが謎やった。
そんなこんなで、コマちゃんが龍しっぽを5kgくらいかな?食べて
かわいいお腹がぽっこり膨れたころ・・・
「うはははは!
なかなかいい誕生日パーティーになったと思うんだが
どうだ?! コノハ? 楽しいか? 美味いか? 幸せか?」
「うんッ!!!」
「だいぶ声も慣れてきたようだな?」
「ぬち、ちゃんとしゃべれてる?」
「ああ、あっという間に上手くなったぞ!
さすがパパの娘だな! 偉いぞー?」
「のっかそっか! 良かった!」
「発音は良くなったんだが
コノハの言葉はなんかなまってるな?
パパじゃなくて、おとん って感じなんだろ?
ちょっと変わってるな?」
「のうなんだ? うち、変なん?」
「いや、そこがイイんだぞー?
地獄の住人はみんな変だからな
ここでは、変なら変でそのままでいいんだぞ?
むしろその方がコノハらしさを感じれていい!」
「のっか!」
「そうやって、ほかの人と違う部分は大事にな!
それは記憶を消しても消えない、大事な大事なものだ。
パパもコノハの魂がそのボディに入った時
もちろん記憶は何も残ってないのに
凄く嬉しいような、泣きたくなるような、そんな感じがしてな。
それは何があっても消える事のないこれまでのオレの宝物で・・・
だから、今までも、これからもずっと、ずっと、大好きだからな、コノハ。
例え、今みたいに親子じゃなくってもな。」
「・・・おとん。
うちだけやなかったんや・・・ 良かった。
いろいろびっくりで、パニックやったけど
うちも生まれた時、おねーちゃんがいて、おとんがいて・・・・
なんかめっちゃ安心できて・・・
“ やっと ”って思ったんよ。」
「ああ、ちゃんと聞いてたぞ?
それもあってか、ああ、確かにコノハは
オレの娘なんだなーって、感動でいっぱいになった。
よく、来てくれたな、ありがとう。」
「ううん・・・ それはうちのセリフ。
ありがと。
うちを・・・生んでくれて。
あれ? 生んではなんか変やな? あはは。」
「はははははw」
「ぬぅぅーー 余をのけものにして・・・
余のしっぽをもっと食べれ・・・のじゃ・・・
モゴモニョ・・・ムニャ・・・グチャ・・・」
気づくとお腹をポンポンに膨らませた
かわいらしいおねーちゃんは
机の上でステーキにかぶりついたまま
そのままお肉を布団にして瞼を閉じちゃってた・・・。
「んふふっ コマちゃん、おねむみたいやな?w
何しててもかわいいなぁ、うちのおねーちゃんは。
ぬちも、ちょっと疲れちゃったみたいやし
ののまま、おねーちゃんと一緒にお休みしてもええ??」
「ああ、もちろん。」
パチンッ!
ウィィーーン・・・ ビヨーン!
おとんはうちの椅子をさっきより大きなベッドへ変えてくれて
その後、何かの機械でコマちゃんをピピッとしてから
コマちゃんをだっこしてうちの隣に寝かせてくれた。
いつの間にかベタベタコマちゃんは
服も顔もピカピカになっていた・・・。
そんで、うちにもピピっとしてくれて・・・
なんか綺麗になって、お腹もスッキリ? したっぽい・・・?
「今日は、コマの部屋でゆっくり寝るといい。
いい夢を・・・ おやすみ、コノハ。」
「あ、うん。 ありがとう、おと・・・
パパ・・・ おやすみ。」
「おッ おうッ!!」
パチン!
おとんはガッツポーズを決めながら
うちらの寝てるベッドをコマちゃんおねーちゃんの部屋へ移動させてくれた。
隣で幸せな顔で寝息を立てているコマちゃんの顔を
その息がかかる距離で見ながら
これから始まる地獄での生活、ううん、3人で迎える明日が
もう待ち遠しく感じてる自分がなんだか嬉しくて幸せで
うちはコマちゃんにピッタリくっついたまま
ゆっくりと幸せな眠りに落ちていった。