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フリーダム/フリーウィル  作者: たきかわ由里
6/10

第六話

「えっ!? マジですか!?」

「マジマジ」

 月曜の、客の少ない夜。何の前触れもなく雄貴がサンダー&ライトニングに現れた。茶金の短髪、しっかりした肩幅を持つ彼は、和馬と同い年の同級生だ。

 どのギタリストよりも、颯太にとっては神に近い存在だ。一見威圧感があるが、その実気さくな彼は、ここで出会って以来ずっと颯太を可愛がってくれている。

「そういうことだから、今度の日曜、スクリーム集合な」

「はい!」

 所用で事務所に顔を出した雄貴が、社長から颯太への伝言を持ち帰って来た。

 スクリームのオーディションを行うと。

 今も定期的に事務所に送り続けていたデモ音源が功を奏した形だ。やっと、目標として来たメジャーデビューに指先がかかった。

「ほんとはちょっと前から社長もやりたかったらしいんだけどな。今回、レコード会社で手ぇ挙げたとこがあったんだとよ」

「うわ、マジですか!」

 嬉し過ぎて、「マジ」しか言葉が出て来ない。

 横で聞いていた和馬は、颯太の背中を叩く。

「やったじゃねーか! しっかりやって来いよ」

「流石に緊張しますよ! 曲の指定はあるんですか?」

「ねぇよ。3曲見せてくれってだけ。自信あるヤツぶちかまして来い!」

 雄貴はガハハと豪快に笑い、ビールを煽る。

 どの曲を選ぶか、それもオーディションのポイントの一つになるだろう。頭の中で、オリジナル曲をあれこれと思い浮かべる。

「どれがいいですかね」

「俺は口出さねぇよ? お前がリーダーのお前のバンドだ。自信もってやれ!」

「はい!」

 雄貴はずっとスクリームを評価してくれていて、アドバイスをもらうこともあった。ケルベロスのリーダーを長年務めている彼は、そういう意味でも颯太の手本だ。

「和馬どうするよ、スクリームがデビューしたら、この店」

「結構参るな」

「俺、絶対辞めませんよ? 勉強になるんで」

「そうか。そんならいいけど、バイトリーダーは敦也にバトンタッチだな」

 同僚の敦也も、颯太と同じオーディションでこの店に入ったベーシストだ。彼もスラッシュメタルバンドをやっていて、同様にデビューを目指している。

 基本的には寡黙な敦也だが、この店のことは充分把握しているから、バイトリーダーとして不足はないだろう。

「まあでも、俺らが受かったらの話ですよね」

「受からねーようなレベルのヤツは、うちの店には置かねーぞ?」

 和馬は笑顔でそう言ってくれる。この4年、彼はこうして颯太とスクリームを見守ってきてくれた。

「ありがとうございます! 頑張ります!」

「おう! 頑張れ! よし、お前も呑めよ」

 雄貴はそう言うと、和馬に目で合図する。和馬はすっとビールサーバーに向かってビールをジョッキに注ぐ。

 そのジョッキを受け取る。

「スクリームデビュー前祝いだ!」

「早いッスよ!」

「いいんだよ! それくらいのつもりでやれ。乾杯!」

 そして、雄貴は自分のジョッキを颯太のジョッキに当てる。

 そのビールの味は、過去最高に美味しかった。

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