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フリーダム/フリーウィル  作者: たきかわ由里
3/10

第三話

 今日も、早い時間に店に向かう。この水曜日だけは、颯太一人ではない。

「あー、颯にい! おはよ!!」

 店の扉の前には、ブレザーの制服姿でギターケースを背負った弥太朗が待っている。彼は颯太の顔を見ると、笑顔で手を振る。

「おはよ。早かったな」

「今日短縮授業だったんだよ」

 前髪を長く伸ばして、茶色い髪。成績の良さにものを言わせて、生徒指導からも見逃してもらっているらしい。

 彼ももうすぐ高校3年生になる。背もすっかり伸び、颯太と殆ど変わらないくらいになった。

「颯にい、飯食った? おにぎり食べる?」

「サンキュ、後で食うわ」

 彼の差し出したコンビニ袋を受け取り、店の鍵を開ける。

 2年前、高等部に進む折に、弥太朗はギターを両親に強請って手に入れた。

 その少し前に、弥太朗から聞かれたのだ。

「俺、颯にいとバンドやりたいなー。何の楽器なら一緒にやれる?」

「どれでもやれるぜ?  俺、ギターだから」

「じゃあギターがいい! ギターやるよ、俺。教えてよ!」

「ああ、いいけど?」

 その後、彼がギターを手にして以来、今度はギターのインストラクターとして毎週会っている。和馬に事情を説明すると、喜んで店の機材の使用を承諾してくれた。

 店内の灯りをつけ、アンプのスイッチを入れる。

 弥太朗はすっかり手馴れた様子で、自分のギターを取り出すと、シールドでアンプに繋いでチューニングを始める。

「で、どんな感じだ?」

 今はケルベロスのヘル・ドライブを教材としてコピーさせている。弥太朗の上達はなかなか早く、この曲の厄介なギターソロも半分くらいは弾けるようになっていた。

「一応、一通り弾けるようになったけど、オリジナルの速さはまだ無理だー」

 複雑なフレーズに加えてBPM230という、かなりの速さを要求される曲だ。そう簡単には手なずけられない。

「じゃ、とりあえずアタマから」

「はーい」

 素直な返事は小学生の頃のままだ。

 彼は原曲に近い速さで弾き始めるが、ギターソロに入るとスピードが落ちる。が、大きなミスはない。細かいところでコピーしきれていない部分はあるが、そこそこ及第点だろう。

 一通り弾き終わると、颯太の顔を見て首を傾げる。

「そこまで弾けたら、あとは慣れだな。はい、もう一回」

「うぃっす!」

 弥太朗のギターは、颯太と色違いでグレード違いの赤いシェクターだ。どれを買えば良いのかと相談されたので、自分の使っているものと同じものを勧めた。

 もう一度弾き終わり、弥太朗は椅子に座る。

「疲れた! マジで疲れるこれ!」

「ヤワだな、ヤタ。雄貴さんはこんなん20曲くらい弾くんだぜ?」

「わーってる! わーってるけど! 俺と雄貴さん比べないでよー!」

 空を仰いで掌で顔をパタパタ仰ぐ。仕方がないので立って行って、浄水器の水をグラスに注いで出してやる。弥太朗はそれを一息に飲んだ。

「そんでも、今週頑張ったじゃねぇか? 思ったより弾けてる」

「頑張っただろ!? 俺。この曲好きだもん!」

 そもそもヘル・ドライブを弾きたいと言ったのは弥太朗の方だ。頑張るのも当然のこと。

「俺もこれ好きだからな」

 プレイするのは勿論のこと、オーディエンスとしてライブに行った際には、颯太もモッシュ&ダイブを全力で楽しむ一曲だ。

「ま、速さは練習して慣れてもらうとして、後はイントロ終わりのスイッチ奏法のとこと…エフェクターも入れていくか」

「うっす!」

 颯太は再び立ち上がり、足回りのエフェクターのチェックを始める。

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