私とユグ 3
全ての試合が終わってユグを迎えに行った。
迷子センターの係りの人にお礼をしてユグを引き取る。
ユグは長い時間待たされてご機嫌斜めだ。
他にいた子供達はみんな先に帰って行ったみたいで、最後に残ったのが私達だった。
「ごめんユグ。お金の計算してもらってたの、許して」
ツンとそっぽ向いていたけど、手を差し出すと素直に握ってくれる。
もう、たまらない。
今日は賞金がたくさん貰えたからなんでも一つわがままを聞いてあげよう。
実は金銭面にはあまり困っていない。
なんせ野宿が多いから、お金を使う事が全然ない。
節約しているわけじゃないんだけど。
ローブで身を包み、外へ出た。
闘技場周辺の飲食店は、闘技会の流れ出た人々の溜まり場になっていた。
宿の方まで戻って考えよう。
「ユグ今日入りたい所あったら教えてね」
伝わったのか、大きく頷いた。
昨日とは反対側の通りに足を運ぶ。
外に置かれたメニューの絵を見て、店に入る。
店内は賑やかだ。
店内に限らずこの町は寝るまで賑やかだ。
闘技会の話に盛り上がっているテーブルが多い。嫌でも耳に入る。
良くも悪くも言われるがどうでもいい。
私は他者と関わりを持つのが嫌いだ。
いちいち気を使うのも、使われるのも大嫌い。
誰にも心を乱されたくない。
私たちは、いつものサラダとスープとパンという組み合わせで夕食を摂った。
「そーいや、山の方で天災種のランクB以上が出て、あの辺りの農民が仕事にならねぇって嘆いてたよ。」
「そりゃかわいそうにな!」
人が集まる場所はこういった情報が入るから良い。
ギルドに行けば討伐のクエストが登録されているだろう。
「隣町の山で、とんでもねぇ化物が発見されたらしいぜ?」
「隣町の商人がこの町に来た時、聞いたんだよ。いずれこっちにも注意か警告が来るくらいだってよ」
注意や警告とは町に対して被害を被る場合にのみ発令される。
被害規模という抽象的な表現の為、それは直接的な攻撃だけではない。
例えば蜂の大群とか、他には作物を食い荒らす鳥の群れとか。
しかし今の話だときっと物理的な損害を及ぼす個体のようなものだ。
単体で町を襲うような規模の天災種は、A級以上の怪物だ。
退治しなくてはならない。
とりあえず宿に戻って早めに休むとしよう。
「ユグ宿に戻ろう?」
支払いを済ませて宿に戻り、もう1度布団を集めてユグとベッドに入った。
この日は疲れていた為、眠るのに苦労しなかった。
ーーーーーー
朝は大体ユグが先に目を覚まし、ガサゴソと騒がしくする音で私は起きる。
朝食を摂り、ベッドの形を元に戻す。
宿の人にお礼をして早速ギルドに向かった。
昨日行われた闘技場の裏側にギルドの受付があるらしい。
どんな案件が出ているか先に確認する。
闘技会と比較してギルドの冒険家はそこまで人数は集まらない。
闘技会との大きな違いは、命懸けと言う事だ。
ギルドに着くと案件を1件ずつ確認する。
昨日耳にした噂の化け物とやらは大物リストの方だろう。
ここギルドでのクエストはランク付けされている。
☆1~10
1が優しく、10は国で動いても手がつけられないレベルだ。
町が望まぬとも町を襲う案件がある場合、町に対して「注意」か「警告」を促す。
注意は☆5以下の規模。
警告は☆6以上の規模になる。
☆7難易度だと、強さで言えばAランクの天災種というところだ。
今ギルドに来ている案件で1番高ランクのクエストは…これだ。
☆7ランク
ブルーマウンテンに住む怪物
センイヤー討伐
賞金 50000ドージ
これだけの報酬だと3ヶ月は遊んで暮らせる金額だ。
山のふもとにある村を幾度となく襲撃、被害は甚大…か。
他のものは人々に危害を加えるような物は無い。
倒さなければいけないクエストはこの☆7だけだ。
これをオーダーにかけよう。
オーダーすると成功した時に報酬が貰える。かけておかないと貰えない。
失敗しても放置で良い。
要はオーダーした中で椅子取りゲームをするって話だ。
窓口に向かう途中、視界の端にいた何者かから視線を感じた。
「何もいない。何もいない。ねーユグ」
ユグに自己暗示を振ったが状況が飲み込めていない笑顔だった。
「何もいない」
「昨日はやってくれたね」
ヤバイ。昨日決勝戦で戦った魔族だ。
面倒事は避けたい。
「何もいない、何もいない。窓口窓口」
聞こえなかった事にして窓口を目指す。
「まさか昨日の決勝戦であんな事しておいて、ここでは逃げるのかい?昨日の決勝戦、どんな小細工を使ったかは知らないけ」
「うっさいわね、何?私に文句言いに来たの?」
遮るように噛み付いて言ってやった。
「ふふふ。ここで会ったのも何かの縁、昨日の戦いぶりを見て、君とクエストの同行を希望する」
素っ頓狂な事を言い出した。
「はぁ!?何考えてんの?私この☆7向かうけど?あんたには荷が重いんじゃない?」
「うん。私に相応しいクエストだ。同行しよう。」
更に開いた口は自信過剰だ。
「ブルーマウンテンまで一日以上かかるから、野宿挟むのよ?無理!私達女なのわかってる??…あっ!あんたまさか…」
「ん?」
「ユグは渡さない!」
ユグを私の後ろに隠す。
「え、そっち!?普通狙うなら貴女の方だろう!」
こいの目当てはやっぱりそーいうことだ!
男って生き物は本当に!
「ふざけんな!この変態野郎!」
私の鉄拳が油断して無防備なこいつの顔面にめり込んだ。
ユグの手を引き、倒れたこいつを放置して窓口に向かった。
ユグは情けなく大の字で寝転がった魔族を心配そうに見ている。
気にかけるユグに言い聞かせる。
「見ちゃダメよ、ユグ。あーいうのを変態って言うの。変態にだけは近づいちゃダメ。わかった?」
ユグの困った表情が返ってきた。
窓口で討伐申請手続きを済ませると、許可証と袋が渡された。
袋は標的を倒した証拠に、身体の一部を持ち帰る為の物。
例えば牙とかツノが多い。
さぁ。受注手続きが完了。
旅に出る前に、買い物リストを確認しなくちゃ。
「あの、ギルドに来るの初めてなんですけど、クエスト完遂の催促ってできますか?」
そんな相談を窓口に持ちかけていたのは10歳程の、年端もいかない少年少女だった。




