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狂った国の魔女  作者:
辺境の村編
6/21

安全とは一体……

❄❄❄


 珍しく今日はフォイの好物の怪鳥が獲れた。滋養強壮にいいとか、フォイが目を輝かせていたのを思い出した。道中スタコラ走り回る変なものを見つけたので、それも捕まえた。


「……それは!」


 怪鳥より人の頭くらいはある大きさの変なものにフォイは目を丸くした。


「バリドログチャ草です!!体にはいいらしいですが……ちょっと。毒はないらしいです。調理法が茹でるくらいしかないので、試しにやってみます?」


 語源でもうわかった。確実に地球人だ。特に日本人。多分適当にオノマトペをつけただけだ。日本人率が高いのは周期の問題ではなかろうか。

 そんなことを思っていると、フォイが濁った灰色の蠢く触手を持ち合わせた植物らしい物体の足を逆さに掴み、吊るし持っていた。足と言っているが、カブトムシやゴキブリの足みたいな二本脚だ。どうやって走っていたのだろう。触手で見えなかった。


 手早く調理なべに放りこむと、何やらきぃきぃ喚きだして、ぷしゅー、と空気の抜ける高い音がした。乳白色に灰色を混ぜ込んだような見事な雑巾色の茹で汁を見て、静寂が訪れたのは気のせいではない。遺骸はぐちゃぐちゃになっていた。

 とりあえずこれで完成らしいので、試しに一つ触手を毟り取って食べた。


「口の中に表面の固いのが粉々になったやつが刺さって痛い。半透明の茶色いドロドロの液体が中から出てきて……死臭がする。食べるか?」


「いやいやいやいや、どう思ったらそんなもの食べようと思うの。いくらマリス様が味に頓着しないからってそれはないでしょ」


 ひょいっと廊下から顔を出したのは自称執事のディア。いつの間にか帰っていたようだ。

 初対面の人からしたら、自称執事なのに口調を改めたくていいのかと思うかもしれないが、特に私自身が貴族でもあるわけでもなし、さらに言えばディアは道端で拾った精霊だ。どういう訳か執事にあこがれていて、身の回りの世話をしてくれるというから二つ返事で了承した。というわけだ。


「体にはいいらしい、珍奇な草だって聞いたことはあるけどな……」


 彼はスッと歩いてくると渋い顔で私の手に持っていたバリドログチャ草を取って口に放りこむと、苦虫を噛み潰したような顔をした。


「…………」


 そして倒れた。


「ディア!? おいどうした!?」


「……はっ、そういえば、あまりにもこの世の物とは思えないまずさに三日三晩寝込むとか……ほんとうだったのですね……」


 フォイはわざとらしく心配そうにディアを見やる。


「むしろそれ毒だろ」


 “ちょっと”と言っていたし、わざと気づかないフリをしたんだろう。布を買うのを自制しろとディアにお小遣い制にされたあげく減額されたと随分不服そうだったのを思い出す。

 ……報復か。

 感心してバリドログチャ草とディアを見比べるフォイを尻目に、ディアを寝室まで運んでやった。


「やはりマリスさんはお強いお方なのですね……」


 ほうっ、と感嘆のため息をこぼすフォイの声は届いていなかった。



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