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狂った国の魔女  作者:
辺境の村編
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覚醒

 雨が降る日、私は生まれた。いや、目覚めたのかもしれない。

 まばらに雫を落とす曇天に包まれた空を見上げて、胸が重苦しいと感じたあの感情が今でも何なのかわからない。


 ただ、自分が何なのかはわからなかった。

 耳を澄ませて周りの音を拾えば、生き物が集まっていることを知った。私が背中をあずけてもたれかかっていた白い壁と同じような壁は向かいにもあって、その向こうは木に隠されて見えなかった。生き物の姿はなく、静寂が広がっていた。生き物が集まる場所は、少し遠くにあるのだということに思い至る。


 生き物が集まる方へと、向かった。私の周りには生き物がいなかったから。少し歩いた場所に人間と呼ばれる生き物が賑わい、行き交っていた。繁華街というらしい、橙色や赤色などの暖かい光で彩られたその場所はとても輝いて見えた。


 自分が彼らと似たような外見はしていても、根本的な何かが違うのだろうということは何となく知っていた。私は生まれた時から人間の五歳児くらいの外見をしていた。生きて行ける本能が備わっていた。ある程度の人間に関する知識も。


 影からずるりと炭の塊のような色で、様々な姿形をして現れた奴らがわめきちらしても、通りの人間は誰も振り向かない。見向きもしない。当然。

――誰も彼らを認識することなどできないのだから。


 見えない、聞こえない、触れられない。人間と断絶された何かと意思疎通を図ることが私は出来た。奴らは自分自身を“影”と名乗り、どこにでも生息していた。

 何より私が自分を異質であると確信したのは、食事をしなくても生きていたということ。


 餓死したという人間の死体を見た時、“餓死”が理解できなかった。なぜ空腹で死ぬのか。自分に飢えや痛覚が乏しいのだということをまたそのとき知る。


 私は、何なのだろう。


 なぜか、知識はあった。なぜなら私は“生まれる”までの私を知らない。どうやってそれらを身に着けたのかが、過程が何もなく結果だけ残るようにわからなかった。

 それがなければ、自分が何かと問う考えさえ持たず生きていたのだろうか。

 この場所の言語、人間たちの生き方、知識としての常識、魔獣、魔女。それらについて、分野で言えば偏っているが、私は知っていた。



 それは、魔女を、魔獣を、殺さねばという本能にも似た何かだった。









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