数秒間の恋
「俺、お前の事が好きだ」
「ずっと好きだった。ずっと一緒に居たいと思った。だから・・・」
だから死ぬな。
そんな稚拙な言葉を投げかけるつもりだったのだろうか。俺は。
顔を上げると目の前に居る由那は見た事もないほど取り乱していた。
「なんで」
「なんでそんな事言うの」
由那の手は、着ている制服をくしゃくしゃにしていた。
「私は、君の事・・・他の皆んなの事を大切な仲間だと思ってて、
急にそんな事言われても、迷惑だし、それに・・・・・・あと1分しかないのに。
なんで今さら」
あまりに強く激しい由那の拒絶を食らい、しばらく頭が働かなかった。
何か取り返しのつかない事をしてしまった。
それだけがかろうじて分かった。
「由那」
「さよなら」
そう言って由那は走り出して言った。
「待ってくれ」
俺は必死に由那を追いかけた。
そして追いつき由那の手を掴んだ。
「離して。私は貴方の事が嫌いなの。これ以上関わらないで」
「さっきは、悪かった」
言葉は帰ってこない。
「俺はお前の気持ちも考えずに・・・酷い奴だよな」
「・・・・・・」
「だからもう一度言う。俺はお前の事が好きだ!」
「好きで、好きで、たまらない。だから」
それでも言葉は帰って来なかった。
「悪い。勝手な事言って。もう忘れてくれ。俺の事なんか」
これ以上由那を傷つけない為に、帰ろうとした時だった。
「蓮君の事嫌いになって忘れよう思ってたのに・・・
私やっぱり、蓮君の事が好き。嫌いになんてなれない。
だから、残りはあと数秒、私の側に居て!」
「勿論だよ。俺はずっと、ずっと君の側に居るよ」
「約束だよ」
「ああ、二人だけの約束だ」
初めての短編です。楽しんでくれたら幸いです。




