忘れられた夜の国
むかしむかし、夢の世界にはネルカトルと言う夜の国がありました。
ネルカトルの主はヒトが大好きでした。
ヒトが寝静まった夜、
夢の中を彷徨わないようネルカトルの主は
彼らをネルカトルへと導いていたのです。
ネルカトルはヒトを踊らせ遊ばせ、
疲れ切った心に安らぎと自由を与えていました。
但し、ネルカトルとヒトの世界の間には一つだけ掟がありました。
『夜が明けた時、ヒトは目を覚ませなくてはならない』
これはネルカトルの主がヒトを怠け者にさせないために決めたものです。
長い間、この掟は守られ続けていました。
しかしある時、一人のヒトがネルカトルから出ることを嫌がりました。
掟はついに破られてしまったのです。
悲しみの末ネルカトルの主は一つの決断を人々に下しました。
『ヒトを二度とネルカトルに辿り着かせない』
その後ヒトは夢を見てもネルカトルに行くことができず、
夜が明け目を覚ますまで夢の中を彷徨うのでした。
時が経つにつれて彼らはネルカトルの事を徐々に忘れていきました。
今ではネルカトルの事を覚えている人は誰一人として居ません。
しかし心のどこかではネルカトルと言う存在を微かに覚えており、
ネルカトルを求め夢の中を彷徨い続けているそうです。