アルゴル
きっといつか誰かの拠り所になりたいと
貴方は私にとって唯一の大切な存在なのだろうと
笑ってくれるあの子の側で
僕はただ、星を観ている。
「星が綺麗だね」
君は僕に柔らかな横顔を見せながら、笑ってくれた。
僕はただ、星を観ている。
「今度一緒に観ようね」
彼女は物足りなさ気に、耳元で呟く。
僕はだだ、星を観ている。
「物好きだよね」
彼女は星に興味がないから、呆れた顔のスタンプを添えた。
僕はただ、星を観ている。
向き合えたはずの笑顔は、火球よりも眩しくて、そして瞬く間に見失ってしまった。
手を伸ばす頃には、泡沫の痕だけが朧げに浮かんでいる。
初めから届くはずもないとわかっていたのに、届かないことは途方もなく悲しくて、涙が止めどなく溢れ出てくる。
僕はいつの間にか瞼を落としてしまっていたらしい。
黎明の水平線は、波が押し寄せるほどに白んでいく。
大三角は西の空へ溶けていくけれど、夜がくればきっとまた逢うことができる。
夜を待ち焦がれては心が望むままに、性懲りもなく短いこの腕を伸ばしてしまう。
8月の風は妙に生暖かい。
僕はただ、星を観ている。
『星が綺麗だね』
僕の傍で、君が笑った気がした。
僕は扉を解錠する
白い鍵はあの頃と変わらない形を維持していたようだ
「星が綺麗だね」
僕はただあの子に、そう笑っていて欲しい