プロローグ
みんなは幽霊を信じているだろうか。
因みに俺は信じていない。
しかし、実際その幽霊とやらが目の前に現れた時、俺はきっとどう思うのか、気になるもんだ。
「あの〜…話聞いてます?」
俺は今、テレビゲームをしている。種類としては、モンスターを倒したりコインを稼いだりするあの王道なドラゴン何とかって奴だ。
「あのあの〜あなたゲーム好きなんですよね〜…?」
俺は現在17歳の学生で一人暮らしをしている。故に、さっきから話しをかけられているようなんだが、そんなわけはないのだ。だってこの家には俺しかいないはずなんだから。
「それ、楽しいですか?」
さっきから後ろに立っていた幽霊とおぼしき人物は、いつの間にか俺の横で体育座りをしていた。
見たくなくても視界にちょくちょく入るので、意味のわからない怖さが自分の中で膨れ上がる。
「ああ、俺の日課になっている」
俺はどこから来たのかわからないえたいの知れない奴と会話をしている。
となりを振り返ればわかる事だが、怖すぎてまだその正体を確認できていない。
だが、顔を確認できていなくとも、確認できていることが二つある。
一つは声だ。もしかしなくともこれは女性の声。となると、貞子かトイレのハナコさんになってしまう。
そしてもう一つが彼女自信。恐らくだがこの世のものではないだろう。
さっきから彼女は俺の周りを徘徊しているにもかかわらず、足音が一切しない。つまり少し浮いているのではないのか?と俺は推測した。
下手をすれば連れ去られてしまう。
「ちょっと私もそのゲームやってみていい?」
それにしてもこの声のトーンを聞くと、強制的に従ってしまう。
こいつ人を魅了する力でもあるのか?
「お、おぅ…」
一瞬逡巡したが、ここで逆らったら殺されると思い、俺は彼女にコントローラを渡した。
「ん〜…なんだかよくわかんないなぁ〜…このゲームのどこが楽しいのかなぁ〜…」
「は!?ドラゴンハンターがつまらないだと!!?!?」
俺は頭に血が登り、恐怖と我を忘れて、まだ正体がよくわかっていない彼女に向かって大声でドラゴンハンターの良さについて説明した。が、自分でも何時間そのお説教が続いたかは、わからなかった。
「わ、わかりましたから!!あなた様がゲーマーでどうしようもない人間と十分わかりましたから!」
軽く侮辱も入っているが否定もできないので
僕はいやいやその彼女の発言を流した。
それにしても、今俺を軽蔑の眼差しで見ている彼女は変わった服をきていた。
体全体に布がまかれており、全てが羽衣の一種なのではないかと思わせる輝きを放っていて、とてもこの世のものとは思えない質感であった。
歳は見た目で判断してはいけないが、おそらく同じ歳だろう。
髪は真っ白で全体的にふわふわしており、主にそこからいい匂いが漂ってくる。
顔といえば、人形のようなはっきりとした顔立ちで誰が見ても美少女と言える美しさだ。
俺は今でも同様を隠せなかったので、初歩的な質問を彼女に投げかけてみた。
「ど、どうやって家の中に入ってきた」
「あ、それはですね」
そう言って彼女は、自分の髪留めをはずし、
床になげた。すると目の前にとんでもないことが起きた。
「なんだこれわ。せ、説明はよ」
「冷静過ぎませんか…」
その髪留めは丸い円を作り、人間が入れるくらいまで直径がのびていた。しかし驚くのはそこではなく、髪留めの円の中だ。
円の中には、俺の知り得る、ファンタジー溢れる大草原が写っていた。この絵図らだけ見ていると通り抜けフープみたいだ。
「因みにこの円をくぐればあなたの星で言う異世界にだって行けるんですよ?」
そんな夢物語な話があるか。とも思ったが、彼女の服ややることを観察するに、何処か物理法則を無視している。以上の事から本当に異世界があるのでは?という気にもなってしまう。
けどまて。落ち着くんだ俺。
わざわざ異世界に行けると説明を付け足すぐらいだ。こいつ、俺を異世界へと連れ去ろうとしてないか?
いいや、だがまだこいつを異世界の住民と決めつけるのは早い。
まぁ、この円をくぐって異世界にいってしまえば彼女を疑うまでもないが…
「んで、どうするんだよお前は。この展開だと俺を異世界に連れ込むって話になりそうだけど」
彼女は少し驚きながらも「はい、そうゆう事になります!よくわかりましたね!?」と言った。
いやけどどうするかなぁ。確かに俺は異世界を夢みるゲーマーにしてアニオタだが、異世界に行ったらもうこの世界に戻ってこれなくなりそうだしな。
けどまだそんな段階の話ではないだろう。それに、俺が思っている異世界とは似て非なるものかもしれんしな。
引き続きおれは彼女に二つ目の質問をした。
「なんで俺を異世界に推薦したんだ?」
「言おっかなーどうしよっかな〜。あ!あなた様はこの世界で言うゲーマーなんですよね?なら私達の住む異世界に行っても適用できますし〜理由を言わなくても異世界では生きていけますよ?」
どうやらこの美少女は感情が豊かな方らしい。ていうか何でじらすんだよ。
一々体の動作がうるさい。
けれど彼女のするジト目もまた、嫌いではない。
「…異世界ってのは、本当に今俺がやっているゲームそのものの世界なのか?」
さっきあいつ、俺のドラゴンハンターをプレイしてつまらないと言ったよな?それは俺がこの社会をみて、つまらないと言うのと同じ意味合いなのだろうか。
「はい!魔物をしとめ、レベルや経験値を獲得し、武器や魔法で戦う、ゲームのような世界です!まさに!今あなたが画面越しでやっていることじゃないですか!」
歓喜余ったのか、彼女は思いっきりテレビを指差しそう叫んだ。
貴方が今しているこのゲームの世界となんら変わりないんです!と主張したい事はわかった。
美少女Aはそう言って、俺がプレイしていた画面を指差した。
と、そこで俺はある重大な任務をわすれていた
「キークエやってんの忘れてた」
「いやいやなんでだよ!さっき言ったセリフに魅力を感じてよ!さも当たり前のように持ち場に戻らないでよ!」
「お前は異世界でツッコミのスキルでもあげてんじゃねえのか?」
「な、何故それを…」
「あてずっぽで言った事が偶然当たった時って、なんだか場の空気がしけるよね」みたいな顔で私をみないでくださいよ」
「そんな難しい顔できねぇよ。俺表情のレパートリー少ないし」
「うわ悲しい…」
なんだかよくわからんが、こいつとは学校の友達より会話が弾んだ。
そして彼女は俺に、本題の話を持ち出した。
「実はですね……私が住んでいる異世界にはある問題を抱えていてですね…」
「ある問題?」
異世界である問題だと?一体どんなケースなんだろうか。やはり異世界でも現実ではすんなりうまくいかない問題も発生するのだろうか。
ある意味幻滅しそうで怖い。
「実はですね……」
「ちょっとたんまぁあ!!」
「……はい?」
「行ってやる。異世界に行ってやるから、今ここでその問題を言うな…なんかこう…自分の目で確認したい」
それと、俺はまだ彼女のことを疑っている。
今もなおずっと発動されている異世界の入口に入り、本当に未知なる世界に行くまでは、俺は彼女を100%信用することもできない。
なので俺は、先に異世界に行くことを優先する。そうあくまで『手助け』としてだ。
「ふ、ふぁ〜…?」
どうやら彼女は俺があまり乗るきではないと思っていたらしく、少し不思議そうな顔をして固まっている。
「よし。じゃあ早速だが、行こうか。持っていく物は何もないよな?」
「面白いですね……地球人は……」
怪しい笑みを浮かべながら彼女はそう囁いた。
「私は、いえ、私達は地球にヘルプを求めたのは宇宙史上初めてなんですよ」
「ほう、理由は?」
彼女は言うのをためらう表情を見せたが、訥々と話し始めた。
「第一の理由は寿命です。地球人は約80歳しか生きられませんが、私達の星では300歳まで生きます。それ故に地球人は知性がたりないとされています。」
驚いた。他の星の住民ってそんなに長くいきるのか。
「そして第二の理由は魔法が使えないことです。そのため自分を守る手段は素手か武器という事なので、武力もないとされています」
「以上の事から、地球人は知性、力は異世界人に劣ると皆し、もう何億年も敬遠されています」
だからUFOは地球にやってくるだけで着陸しないのか…
「けど実際、こうして俺の所に姿を見せたって事は相当異世界も生きず待ってるみたいだな」
「はい。それと地球には私達と似ている世界、ゲームがあります!」
「そのゲームに人生をかけている人間なら、何かヒントを得られるかもしれない。そうゆう事だな?」
「そうです!今こそクズが生かされる日がくるんですよ!?良かったですねこのこの〜」
彼女のテンションはつかめないが、意味なく俺の顔に杖のようなものを押し付けてくる。
「痛い!地味に痛い!主に心が」
「えへへ〜」
ちくしょう。よくよく考えたら俺はこいつの純粋な笑みに引き込まれただけかもしれないな。
「じゃあ早速私の世界、アヴェルトリアへ旅立ちましょう!!」
「良〜し!いっちょやりますか!って、まだお前の名前聞いて無いんだけど…」
「あっその事なんですがねぇ…私の名前はアヴェルトリアへ行かないと伝えられないですよ」
「え」
事情の方はよくわからないが、そこは追求せづ、俺は素直に受け止めた。
「俺の名前は加賀美紬だ。この先色んな意味でお世話になるかもしれないがよろしくな」
顔を見るに、色んなをどうやらこの美人さんは意味深と捉えたらしい。
「MP900最大の魔法使いますよ?」
先ほど俺を突つくために使っていた杖を攻撃的に俺の頭上に向けてきた。
威嚇しているようではあるが、何をしてもこいつは怖くないとわかった。
「わかった落ち着け。冷静になれ。今俺達がワープした場所でモンスターと出くわしたとき、お前の魔力が切れてたらどうするんだ」
「はいはい。ワープする場所くらい特定できますよーだ。ってちょっと!私より早くワープに入らないでくださいよ!!加賀美さんってば!」
こうして俺、加賀美紬は異世界に駆け出す事となった。