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ピチャン…ピチャン…
上の方から一定のリズムを刻む音。
ドクン、ン、ドク、ドクン…
そして深く中心から聞こえる不規則な音。
…ここは、一体どこなのか。
ふいに、上から聞こえていた音が消えた。より一層不規則になる、もう一つの音。真っ暗だった視界に色が生まれる。初めに目に入ったのは、ただただ澄み渡った世界。
ボコッ、ボゴゴゴッ…
突然、濁った音が上の方から降ってきた。
『…………っ』
透き通った世界が、徐々に濁っていく。
ワタシの世界が、真っ赤に染められていく。
熱い、熱い、アツイ、アツイ……ヤメテ!!!!!
「………っぶふ!!!!」
ゴツン!!!
「…ッチ、いってー」
目を見開くと、そこは見慣れた白いバスタブの中で。後頭部の鈍痛も、覚えのある感覚。
どうやら飛び起きた時に、バスタブの後ろに頭を打ち付けたらしい。
痛みの次に感じたのは不愉快な冷えだった。
要するに、風呂に入ったまま一夜を過ごしてしまったようだ。
「ぁーあ、やっちまった」
ヌルい風呂で寝るのは嫌いじゃない。…が、冷水となると話は別だ。これは普通に考えて最悪の目覚めと言えるだろう。
一つ大きな溜め息をついて、勢いよくその場で立ち上がった。
「おぉ、さっぶ…」
瑞々しい身体から水滴がはねた。
アリシア・ナタリーの一日が始まる。