第5話 約束
遅くなり申し訳ございません。
煌が3人組にボコられ、未来から精神的ダメージを与えられてから二週間が経過したある日の食事中、騎士団長がある報告をした。
「明日から実戦訓練として迷宮攻略を始める!この2週間の訓練で身につけた力を発揮して欲しいと思う!出発は朝にする!しっかり休んで疲れをとり万全の状態にしておくように!」
突然のことに驚いている者もいたが取り乱すことなく聞いていた。
そんな中、煌はーー
迷宮攻略かー。まぁ、俺はボッチで弱いから(まだ未来に言われたことを気にしている)後ろでついていってれば良いか。それより今日の飯何かなー。
などと呑気なことを考えていた。
その後、夕飯を食べ皆は各自の部屋に戻っていった。
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「……迷宮ねぇ」
煌はこの2週間ずっと図書室に閉じ籠っていたため迷宮についての知識はあった。
迷宮には自然に出来るものと魔族によって作られるものがある。
自然に出来る迷宮はその場に元々あった魔力が集まりそこに魔物が生まれ出来るもので、奥には魔結晶という迷宮の核があり、それを破壊または回収すると迷宮は消滅する。ちなみに魔結晶は高く売れるそうだ。
もう一つの魔族が作りだす迷宮は故意的に自分の魔力を使い元々の土地を改変させるというものだ。それの1番の代表例は四属魔神の大迷宮である。基本的に普通の魔族が作ることはほとんどない。と言うか魔力がもたないらしい。そして四属魔神の作った大迷宮の中には城があると言われている。ちなみに俺達が明日いく迷宮は『オルス迷宮』という名前だ。結構大きい迷宮らしく魔物もそこまで強くなく実戦訓練にはうってつけらしい。
閑話休題
「俺行っても役立たないよな。つーか、まともに訓練してないのに実戦訓練とか」
少し鬱に成り掛けていたときノックをした後聞き覚えのある声がした。
「煌君、ちょっと良いかな。話があるんだけど」
未来か。あの訓練以来話してなかったな。
「あぁ、いいぞ」
そう言って煌はドアを開け、未来を部屋に入れた。そして、ベッドの上に座った。少しの沈黙の後、先に口を開いたのは未来だった。
「なんかこういう風にゆっくり話すのって久振りだね」
「あぁ、そうだな。それで話ってなんだ?」
「あのね、明日実戦訓練で迷宮に行くでしょ。それに参加しないで欲しいの」
「なんでだ?」
理由は分かっているがなんとなく聞いてしまった。
「それは、煌君に死んで欲しく無いからに決まってるじゃん……」
「俺は死なないよ」
「そんなの分からないよ……」
未来は目を伏せながら言った。
「大丈夫だから」
煌はそう言うと未来を抱き寄せた。
そして煌はあるお願いをした。
「そんなに心配なら、未来が俺を守ってくれよ」
そのお願いはとても身勝手で我儘な願いだった。しかし、未来はそのお願いを聞き先程まで悲しそうにしていた顔は満面の笑みになった。
「うん!約束ね」
それから数分経過した。
「あの、もうそろそろ離れて欲しいんだけど…」
「ん……、いや」
「いや、じゃなくてもう遅いし」
「今日はここで寝る」
ちょ、なんでこんな事になってんだ!?こんな事がバレたら……。いやいや、疚しいことなんか全くしてないし、する気も無いから……ってそうじゃない!
「で、でも年頃の男女が同じ部屋でそれも同じベッドで寝るなんて…。間違いが起こってからじゃ…」
「煌君だから大丈夫だよ」
「そんなこと言い切れないだろ」
「もし襲われても煌君なら……いいよ?」
は?え、ちょ、何いってんの!?未来ってこんな積極的だったっけ?ええい!そんなことはどうでもいい!!今は未来を襲うか襲わないかってなに考えてるんだ俺は……。
煌は内心頭を抱えていた。
よし、未来を追い出そう。
「あのー、未来さん?」
「Zzz………」
寝ていらっしゃる!?ちょっ!無防備過ぎるだろ。
未来は完全に安心した顔で眠っていた。
不意に悪戯を思いつき煌は未来の頬を突っついた。
ぷにぷに
あ、これはまりそう。
そして続ける
ぷにぷにぷにぷに
「ん、うぅん……」
「っ!?」
な、なんつう声を出すんだよ……。これはやばい。未来が平気でも俺がやばい。さてと、どうしたもんかね。
少し考えた後、三つの選択肢が出てきた。
1、部屋からの脱出
2、未来を部屋まで運ぶ
3、一緒に寝る。もういっそ襲っちゃう
もちろん3は却下だな。あとは1と2か。ここは安全策で2だな。
そう考えをまとめ行動に移そうとしたとき問題が起きた。
未来の部屋ってどこだ?やべぇ、これはリアルにやばい社会的に死ぬ。もういっそやけくそで寝ちまうか。いやいや、ダメだろ。はぁ、どうしよう……。
頭をフルに使いどうするか考えていると未来がある寝言を言った。
「ぜったいしんじゃだめ……。やくそく、だよ」
それを聞いた煌は諦めたようで床に寝っ転がった。そして深い眠りについた。
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煌達が部屋に戻った後、食堂に残り話をしている者がいた。その正体はこの国の王のネルク・グリファジア、そして騎士団長のグロウスだった。
「グロウスよ。勇者達はしっかり力を付けているか?」
「はい、この2週間鍛えましたので。しかし、一人……」
「あぁ、コウ・ササクラか」
「はい。コウ・ササクラだけレベルが上がっても全くと言っていいほどステータスが上がらないのです」
「ふむ。そのことなんだが何度か『真実の目』を試したことがあるのだが一度だけおかしなものを見てな」
「それはどう言ったものだったのですか?」
「職業欄の場所に『魔神の後継者』とでたのだ」
「!?」
「だが、あの魔力量ならありえるかもしれんぞ」
「魔力量、ですか?」
「コウ・ササクラの魔力量は7000じゃ」
そこでグロウスはまた驚いた。
「それを見たわしが出した結論はコウ・ササクラは封印されておる。それも途轍もなく強い封印だ」
「なら、明日の実戦訓練には連れて行かないのですか?」
「誰がそんなことを言った。逆に連れて行くのじゃ。そして、奴を追い詰めて力を解放させよ」
「はっ!」
「もう下がって良いぞ」
グロウスがいなくなり一人になったネルクは煌を使い他の国を攻め落とすことを考えていた。
「魔神の後継者が我が国のものになれば魔族だけでなく帝国も落とせるぞ。ふふふ、フハハハハ!」
食堂にはネルクの笑い声だけが響いた。