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6 次期

弓月様視点。

 朱雀院家分家所有の屋敷が“はぐれ能力者”に襲撃された事件から、一月が経過した。

 その後も、朱雀院家に関係する屋敷や人間たちが襲われ続け、犠牲者は数十人に及んだ。

 全ての朱雀院家関係者に警告を促し、能力を持つ者で弱い者は強い者のいる屋敷に移動させたり、隠密部隊に情報を集めさせたりと忙しなく動き続けているものの、殆ど成果がでていなかった。

 現状を打破するため、襲撃者を探し出し捕えることが決定した。その全体指揮をとるのは、日本に戻ってきた弓月であった。

「このような事件など起きなければ、今頃は当主就任の準備をしていたのだろうが……」

 痛ましげに表情を歪め、龍源は呟いた。

 そもそも、弓月がアメリカから戻ってきたのは当主の座を継ぐためだ。こんなことは想定していない。

「起こったものは仕方ありません。早急に対処し、これ以上犠牲を増やさないようにしなければ」

 龍源の正面に座っている弓月は淡々と答える。自分が指揮をとるからには、犠牲者を増やさずに襲撃者を仕留めるつもりだった。

 弓月を見る龍源の視線に鋭さが宿る。

「今回、儂が表だって動くことは無い。事件解決のため、朱雀院に関するすべてをお前に預ける」

 つまりは、もし弓月がうまく襲撃者を捕えられなくても、龍源が口出しすることは無いということだ。朱雀院家が全滅しそうになっても、手を出さないのだろう。

「わかりました」

 失敗しなければいいのだ。既にいくつかの案は出来上がっている。あとは実行し、襲撃者を待つのみ。

「解決した後、お前の当主就任を正式に発表する」

 つまりは、失敗することなく、速やかに事件を解決しなければならない。

 さて、どのように襲撃者を追い詰めようか。

「ところで、弓月」

 龍源が弓月をじっと見てくる。何かを、見透かすように。

「燐はどうしている」

 問いかけではなく確認。

 きっと、弓月が強引に契約を結んだにも関わらず、燐を傍に置かず、また命令もしていないことを知っているのだ。

「今日も襲撃者の痕跡を調べまわっているんでしょう。そんなことに意味はないのに」

「弓月」

「無駄なことばかりをしようとする。愚かとしか言いようがない」

「弓月!」

 非難がましいその視線に、弓月は嘆息した。

「痕跡を調べたところで襲撃者の居場所の特定も、次に狙うだろう場所もわからないんですよ、当主。だったら本家で大人しくしていればいい」

「だったら何故、燐に何の役割も与えてやらぬ。真面目で聡明、それに腕のたつ子だ。期待通りの役割をするだろう」

 龍源の言う通り、燐は女でありながら、如月家でも相当の実力を持つ。それは腕っ節だけでなく、頭も良い。如月家の信念を体現していると言うべきか、契約するにはもってこいの人物であった。如月家の当主兼龍源の契約者でもある燐の父親もそのような人物であるためだろうか。

 あの事件の後、厳しく躾けられたのだろう。

(あの事件の、後…………)


 思い浮かぶのは燃え上がる屋敷と、悲鳴。

 ある決意を秘めた瞳。

 目を真っ赤にして泣く少女。


 何より、自らの力不足を痛感した瞬間を思い出し、弓月は唇を噛みしめた。

「どうした?」

 思った以上に、事件に気を取られてしまい、龍源に怪訝な顔で見られてしまった。

「………いえ、なんでもありません」

 ただ、思い出してしまえば、あの事件が脳内を占拠し始めた。襲撃者のことを考えるにしても、集中しきれない。

「今回の事件について動き始めるので、これで失礼します」

「待ちなさい、弓月!」

 燐について問われたことを有耶無耶にしたまま、龍源の静止の声にも止まらず、部屋を出た。

 あの事件を悔やむ時はとうに過ぎた。今は、これ以上の犠牲を出さないために、襲撃者を捕えることが最優先だ。

 蒼目に強い光が宿る。弓月の決意の強さを示すかのように。

「誰かいるか」

「はい、ご用でしょうか」

 声をかければ、常に控えている影――隠密・情報収集を主として行う――が現れた。 

「今後の指示を与える。今回の事件について僕が全権を預かったことを含め、朱雀院家分家当主と如月家分家当主に速やかに伝えろ」

「承知致しました」

 いくつかの指示を与えたのち、行け、と手振りで示す。

「弓月様、恐れながら………」

「何だ」

「燐様にお伝えしなくとも宜しいのですか?」

「かまわん。あれには知らせるな」

「しかし……」

「いいと言っている。行け」

「はい」

 不服そうではあるが、影は姿を消した。

 恐らくは、如月家との繋がりのある影なのだろう。

 如月家の人間が契約者に選ばれているのに、弓月や朱雀院家のために動いていないことに疑念を抱いているのか。

「燐をこのようなことに使うために、契約したわけじゃない」

 ひっそりと呟いたその言葉を聞いた者はいない。


久々過ぎて思ったように書けなかったorz

手直しするかもです。

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