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序
―――――紅い。
ふと気づいたとき、見回すとすべては紅く染まっていた。
空も大地も海も山も自分も。何もかもが紅くて。
紅くないものを探し、視線を彷徨わせた。
そして見つけた、あるモノ。
それが何か分かった瞬間、上手く息が出来なくなった。どくどくと鼓動が早くなっていく。
何故。何故何故、どうして、なんで?
ふと自分の手が視界に写った。紅い液体で染まり、肌の色も見えない手。
自分自身の手をべったりと紅く染めるそれが何か気付いた瞬間、この場で何が起きたのか理解した。
「うああ゛ああ゛ああああああぁぁあ!!!!!」
悲嘆にくれた絶叫が響き渡る。
そして、紅い異能の獣は、全てを失った。