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ノアークβ  作者: ニセモノノシキ
第一章
7/21

スキル発表会

ステータス名が出てきます。一応ルビを振っていますが、わかりにくければ読み飛ばしても大丈夫です。

「ほう、たいしたもんだな」

 タタタンッと軽い音がしてダーツの矢が遠くの木に刺さる。

「でっしょー! へへへ」

 得意げにダーツを抜いて戻ってくるクレスの頭を撫でてやる。

 レンジャーという職業はトラップ専門だと思っていたが、そうでもないらしい。

 事実クレスのダーツの腕はたいしたものだった。

 急所をはずせばたいしたダメージを与えられないので主に状態異常を与える為の武器、というのがダーツのイメージだったが、なんのことはない。急所に当てればいいんだもんな。

「毒、麻痺にするだけが能じゃないんだよーっだ」

 タタタンッ

 これで15連続ロビンフッドショット。

「すげぇ命中率だな」

「クレスはDEX(器用さ)極振り型ですもん」

 庭に出した木のテーブルに肘を付きながらニケがこちらを見ている。

「ニケも弓使いならDEX(器用さ)じゃないの?」

「おねーちゃんはLUK(幸運)多めのクリティカル型だからねー。ミス多いもんね」

「当たれば強力なのよ」

「二人とも遠距離なんだな」

 

 今日はお互いの能力値の把握と称して庭でスキル発表会なるものが開かれている。

 会、といっても参加者は3人だけど。

「うわあ! 銃剣って初めて見た!」

「あんまりいじると暴発してボン! だからな」

 俺の使う銃剣という武器は少し特殊で、扱いがとても難しい。

 職業難易度を参考にすると上級者向け、となる。

「でもこれってただのでかい銃じゃないの?」

「スイッチっていう専用スキルを使うんだ」

 クレスから銃を受け取り指先に意識を集中する。

 ログアウト不可になってからスキルを使うのは初めてだけど、今までと同じで大丈夫だろう。

 スキルの発動と共に銃の先端が光り、形状変化を始める。

「うわ…うわあ! 伸びた! 剣だ!」

「な?」

「すげー」

 これが銃剣と呼ばれる理由。スキルを発動すれば銃が剣に変化する。もう一度スキル発動で銃に。さらに剣の状態でグリップにあるトリガーを引けば爆発振動で剣以上の威力を出すことが出来る代物だ。

 ちなみに俺は二刀流にも出来るよう同じタイプの武器をもう一本所持しているので時によっては双銃剣士となる。正式なジョブではなく派生職の一つで絶対数が極めて少ない為にどこに行っても珍しがられる。

「でもずるくない? 遠くでも近くでも攻撃できるし、二つもかっこいい武器が使えるなんて」

 確かにそういうメリットがあるが、デメリットだってもちろんある。

 というよりも、この職業の場合デメリットのほうが大きい。だから上級者向けとされ、職の人口も他職に比べ極端に少ない。

「あのなぁ、二つ武器を使うという事は、二つの武器に対応したステータスにしないといけないんだぞ。DEX(器用さ)だけで威力があがる遠距離と、STR()で威力が上がる近接。どっちかを極振りってわけにはいかないから、一人前になるのがものすごく遅い。序盤は全く使い物にならんのだ」

「ふーん。よくわかんないけど難しそう! すげーんだ兄ちゃん! でもやっぱずるいよなー」

 まぁ、その分他ジョブより成長速度は速いんだけど、尊敬されているのも気持ちがいいので内緒にしておく。

「ずるいったってジョブの変更は出来ない仕様だしなぁ」

 じたばたと手足を振って一心に抗議するクレスの姿は子供そのもので、ふとゲームの中の世界だという事を忘れそうになる。

 こんな小さな子供が一人でオンラインゲームなんて世も末だなぁ、なんて事を考えるが、そいうえば俺の時代も公園に集まってポータブルゲーム機で遊んでたな、なんて事を思い出すと擬似的にでも駆け回って遊んでいるこっちの方が健康的な気もしてくるから不思議だ。

 

「そういやクレスにいっつも付きまとってるその毛糸みたいな毛玉みたいなもんはなんだ?」

 足元に転がる白くて丸いもの。大きさにしてサッカーボールくらいのふわふわとしたもの。クレスが歩くと同じ速度で付いていく。

「ああ、コイツはライラっていうトットだよ」

 もふっと掴んで持ち上げて見せる。よく見ると小さな目鼻口がある。

「トット?」

「ああ、そうそう! ナンナ。ナンナの核!」

「あ、そういえばそんなもの」

 インベントリからナンナの核を取り出す。

「ログアウト不可者だけの機能みたいです。一人に一つ、トットをくれるの」

「召還獣みたいなもんか?」

 クレスに持たれ綿アメのようになっているライラを見ると獣という感じはしないが。

「そうですね、召還獣とか使い魔とかペットとか。その類だと思います。アイテム名によって種族は決まってるみたいですけど、後は使用者の好みに合わせて実体化してくれるみたいです」

「僕のは犬!」

 犬、だったのかそれ。

「私は鳥ですね」

 いつの間にかニケの肩に虹色の、尾がとても長い小さな鳥が止まって囀っている。

「ふうん」

 ペットという感覚が一番しっくり来そうだ。戦闘で使うものではなく生活に潤いを与える愛玩用みたいだな。

 メニュー画面を開き使用を選択すると、ナンナの核が浮き上がる。よく見ると心臓のように定期的に鼓動している。

 こんな状況になっても新しいイベントにはやっぱりワクワクしてしまう。

 しばらく鼓動を繰り返し、突如ポンッという破裂音と共に白い煙が上がる。そして中から現れたのは

「初めましてマスター!ナンナと申します」

 体長20cm程の、全裸の、少女だった。

 全裸の。

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